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第45話 即決
しおりを挟む二限が終わって、皆で食堂にやってきて、メニューの前で立ち止まる。
「何食べよっかなぁ」
誠の、独り言にしてはでっかい声に「オレ、天ぷら定食ー」と勝手に答えながら財布を出してると。
「慧って、ほんといっつも即決だよな」
誠がけらけら笑う。
「ん? あーまあ、そう、かな?」
そう言われてみるとそうかも。
「そうかな、じゃないだろ」
健人も笑いながらそう言う。
「お前、迷うことないよな?」
昴も同じく言って、何やら三人に笑われてるような。
「まあ、そっかな?」
確かに、そんなにどうしようーとか言ってることはないかもしれない。
「お前、まさか、番になるってのも、即決?」
健人がオレを見て、そう聞いてきた。
「えっと?……あー。即決っていうのかな」
颯に、Ωに変性かもって言われて、もうなんかそれに違いないって思って? それからどうしたっけ?
……ああ、そうだ。
「颯んちに誘われて、行くってのは即決だったかも」
そう言うと、三人は、それぞれに驚いた顔をしてる。
「何その顔」
「だって、そん時はまだ、Ωとか分かってなかったんじゃねーの? αだと思ってたろ?」
昴の呆れた顔に苦笑しつつ、「颯が、変性ってやつだって言ったの、オレに」そう言いながら、食券の自販機にお金を入れる。
「んで?」
券を取り出しながら、先を促す健人を振り返る。
「なんかもう、体の状態っていうか……もうそれしかないなって思って」
「……ほんとすごい、お前」
誠は笑いながら、オレの肩を抱いて、ぽんぽん、と叩く。
「何が」
「ずっとαだった奴がさ、変性でΩになったんじゃないかって言われて、すぐ信じられるかなぁ?」
「だってなんか実感したっつーか……なってみれば分かると思うよ」
そう言うと、三人とも苦笑い。
健人の「遠慮したい」の言葉に、誠と昴はうんうん頷いてる。
「まあそうだよね」
ふ、と笑ってしまう。
オレだって、颯が居なかったら、今こんな感じで居られてるか、ちょっと分かんないもんな。
トレイに定食をのせて、食堂の窓際の方に座る。
オレ達の仲間がここの食堂で陣取ってる場所。いくつも食堂があるから、色んなとこに行くんだけど、ここは学校の敷地の真ん中にあって一番大きい食堂なので、ここに来ればなんとなく誰かが居るって感じ。
今日はまだ誰も来てないみたい。
ちなみに、颯と学校の食事が一緒になったことは、中学から一回もない。クラスもずっと違ったから、給食すらない。だって。張り合ってたし。仲のいい友達はほとんどかぶってない。学校のツートップを競ってたから、颯派とオレ派で別れてたような感じもあったせいかも? まあ別にオレは、トップってよりは皆で仲良くしてただけで、颯は、なんか一段高いところに居たような。
そんなことを思い出すとちょっと、むむむっと思うのは、昔の気持ちの名残かな。なんて、少し可笑しい。
テーブルに向かい合わせで二対二で座ると同時に、目の前の昴が、眉を寄せた。
「慧さぁ」
「ん?」
「これから毎日、あいつと向かい合って飯食うの? 二人で?」
「えっ。てか、結婚してるんだから当たり前じゃん。何その質問」
「つか、オレには、お前があいつと二人で話してる映像がまったく浮かばない」
「あはは、オレもー!」
「それはオレも」
「んー。だよね、分かる」
そこ、否定する気には全くならなくて、逆におかしくて笑ってしまう。
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