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第42話 親友たち
しおりを挟む土曜引っ越し。
日曜は、朝、パン屋さんに行った。オレが体がだるいって言ってたので人込みとかに出かけるのはやめてくれて、午後はのんびり颯のマンションの近くを散歩した。近くにあるお店とか、病院とか公園とか、案内してもらった。
夕方、そのまま近くのイタリアンのお店で食べて、夜はキスだけされて、早く眠った。
で、月曜。大学まで一緒に歩いて来て、正門のところで別れて、授業の教室に来た。教室を覗くと、広い部屋の真ん中辺、三人がこっちを向いた。
「慧ー」
「やっと来たー」
待ち構えている親友たち=αばかりのところに向かう。……ちょっと嫌だけど。
βにもΩにも、友達は居る。デートした女の子たちもわりと話したりもする。
でもやっぱり、普段一緒に過ごす仲間は、αがダントツ多かった。その中でもこの三人。
二条 健人、大倉 誠、高城 昴。
中高の時からつるんでる。皆、そこそこいいとこのお坊ちゃん。
健人は黒髪短髪、雰囲気は少しだけ颯に似てクールな感じ。見た目だとちょっと不愛想で怖いけど、話すとめちゃ良い奴。健人にアプローチできる奴って少ないけど、憧れてる奴は多いと思う。今付き合ってる奴がいるかは謎。たまにいたのは知ってるけど。
誠は茶髪でピアスとかアクセサリーとかたくさんついてる、おしゃれで明るくて人気者。わりと手あたり次第な付き合い方をしてるのに、それでもモテる。年上とかと付き合ったりしててなんかすごい。
昴は黒髪、爽やかイケメンだ。クラスが一緒になることが多くて、昴が一番一緒にいる時間が長かったかも。気も合うし。落ち着いてて、優しい感じ。一回付き合うとながい。一番真面目? な気がする。
まあ皆、とにかくモテる。女子にもΩにも。αって高校には集まってたけど、高校を出れば希少だし、それだけでもモテるけど、その中でもかなりモテる方だと思う。
オレ、結構友達は多い方だけど、ここ三人が一番仲良い。モテるαのグループに居たのだよね、オレ。……まあオレのモテるは、中身があんまりともなってなかったけど。あ、いやでも、モテてはいた。申し込まれることは多かったし。でも中身が……ていうのは、おいといて。
とにかく仲良かったけど、でも、オレの変性や、颯と番になったことを、全然信じてくれなかったのはこいつらだった。……仲良しなのに信じてくれなかったというよりは、仲良くてずっと颯とのことを見てたから嘘だとしか思えなかったみたいで。
「おはよー」
言いながら、空いていた昴の隣の席に座る。
「どうだった、引っ越して。新婚生活」
前に座ってた健人にずばり聞かれて苦笑い。どうだったって言われても……えーと。なんか颯が甘すぎて、優しくて、心臓がヤバかった。とでも言えと……?
「えっと……まあまあ……?」
言うと、誠が「何だよそれ」と笑う。
「颯は二人になったらどうだった? 慧、喧嘩売ってない?」
「売ってないよ」
「んー、そこがまず分からないんだよねー」
誠が笑う。
……まあそうだろな。その気持ちは分かる。
「本当に、引っ越したのか?」
昴がオレを見ながらそんな風に聞いてくる。
「引っ越したよ。番になってるし結婚届出したし……引っ越すって言ったじゃん」
「マジで、引っ越したの?」
「うん」
もう。どんな確認の仕方だよ。引っ越したってば。
「初夜は? どーだった?」
昴がウキウキしながら、そんなセリフ。
「しょ……」
繰り返しかけたらあの時の颯を思い出して、止めることもできず、かぁっと顔が熱くなる。
オレの顔を見ていた皆が、おっと、という顔で、見つめてくるのが分かって、ああなんか、消えたい。と思った。
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