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第41話 巣作り?
しおりを挟むシャワーを浴びてから着替えて、一緒にパン屋さんに行ってきた。おいしそうなパン屋さんで良かった。隣のおむすび屋さんも少し覗いてきたけど、気になる具のもたくさんで、楽しみ。
帰ってきて、テーブルで食事中。
――――なんか颯は。カッコイイなあ。
見た瞬間から、αだって思う。ひとつひとつの動きも洗練された感じで、品が良くて綺麗に見える。座っているだけで、人目引きそう。
昔は、この感じも、気にくわなかったけど。
……だって、なんか、かっこつけてるって思ってたんだもんな。
そういえば、オレもずっと、見た目からαだって言われてたけど。今はもう、αっぽくはないのかな。でも別に見た目は変わってないけど。
あ。途中から背が伸びなくなって、百七十くらいで止まってたのは、変性のせいだったのかなあ。いつから、そんな風に、体の中で変化が起きてたのか……。でも、変性については分かってないことの方が多いらしくて、もう、そうなった、という事実を受け入れるしかないらしいけど。
αのままだったらもうちょっとオレも背が伸びてたかなぁ。
颯はいつのまにか、すごく大きくなってたし。
「何?」
「……え?」
「なんか見てるから」
ふ、と目を細める。その笑い方を、やめてほしい。ドキドキするから。
「……あ、そうだ、颯。良く分かんないんだけど」
「ん?」
「オレの匂いって、他のαも感じるの?」
聞くと、颯が一瞬黙ってから、まっすぐ見つめてきた。
「匂いは分かるかも。ただ、番になってるから慧のフェロモンはオレにしか効かない。他のαを無理無理誘ったりはしないって、知ってるか?」
「うん。一応普通に基本的なことは知ってる。知ってるけど……オレ、αの時もあんまり匂い、感じなかったからさ。どうなのかなーて」
「まあ、匂いが分かっても影響はされないから、そこまで弊害はないと思うけど……」
「そっか」
じゃあ、別に普通にそこらへん歩いてて大丈夫か。
「ヒートは個人差があるから、慧は調子悪い時はオレに言っといて」
「うん」
「はじめは、どれがヒートの前兆か分からないかもしれないから気をつけろよ」
「うん、分かった」
「いつでも電話分かるようにしとくし。大学の中ならすぐ行くから」
「うん」
なんだか、じーんとする。……優しい、颯。
うう。なんか好き度がどんどん上がっていく。
「家の中で始まるなら良いけどな。やっぱ外だと、いくら他に効かないって言ったって、お前が大変だろうし」
「大変なのかな、やっぱり」
「慧が大変かどうかは、なってみないと分かんないよな。こないだは抱いたら早めに収まったけど、あれがずっとそうなのかは、まだ分かんないし」
「そっか……」
ふむふむ。
ちょっと今度、Ωの色々について、勉強しておこう。
頷いていると、颯は、クスクス笑い出した。
「なあ、巣作りって、知ってる?」
「あ、うん。言葉は知ってる」
ヒートなのに番のαが居ない時、αの匂いのする物で囲まれたくて作る、巣、みたいなものでしょ? αの洋服とか私物、匂いのするもの、集めて、その匂いでヒートを耐えるってやつ。
「慧、もしこの先さ」
「うん?」
「いつか、巣作りしたいって、思う時があったら」
「うん」
「オレの持ち物、なんでも使っていいからな?」
「……なんでも?」
「ん。何でも。全部、好きにしていいよ」
「……わかった」
何だか良く分かんないけど。
でもなんでも使っていいのか、ていう。なんとなく嬉しいような気持ちだけは、残った。
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