36 / 216
第36話 ゆっくりとは?
しおりを挟むこないだオレ、どうやって、颯と向かい合って、してたんだっけ……。
なんか浮かされるみたいな中だったから、もう、なんかいまいち。
そういえば、この家にきて、結婚して初めての夜って、ことは。
……初夜というやつなのではないだろうか?
なんか恥ずかしいことに気づいて、カチコチと固まっていると。
キスを離した颯が、ふ、とオレを覗き込んだ。
「……なあ、慧?」
じっと見つめてくる瞳を見ると、もうほんと颯はαだよなって、心底思う。αの中でも一目置かれるα。視線だけで、捕らわれてしまいそうな。
オレ、こいつに張り合いまくってたんだよなぁ。
……思えば、頑張ってたな。オレ。うん。
「慧は、こないだのことって、ちゃんと覚えてるのか?」
「……こないだって? あの日の?」
心の中の動揺は見せないように、なんとか普通に答える。
「どうやって抱かれたかとか」
っ。どうやって抱かれたか、とか。
普通に言うなー! 恥ずかしいっつの。聞くな……!
「……なんとなく、覚えてる」
「なんとなく?」
「だって、なんか……体ヤバかったから……」
「ああ、なるほど」
颯が、オレの腰に両手を巻きつかせて、ぐいと自分の方に引いた。
うわ。筋肉が。……気持ちいい、というか。あの日散々、しがみついた体。
わー、もう……そういうのだけは、はっきり覚えてるぞ、オレ。
どくどくどくどく、心臓がうるさい。
「慧」
「……?」
なんだよ、早く言えよ、あんま見つめんな。心臓が速くなってくのが、くっつていてるとバレそうで。
「抱かれる方は初めてだとは思ったけど、セックスが初めてとは思わなくて。いくらあんな状態だったとはいっても、急いでごめんな」
「…………」
え、と、颯を見つめてしまう。
言われたことを、自分の中でリピート。
……うわー……。
なんかオレ、颯がすごく好きかもしれない。
こういうの。言ってくれるのって。
……嬉しいやつだ、絶対。
「だから今日は、ゆっくりする」
「ん??」
「キスから。ゆっくり、しような?」
キスからゆっくりってなに……?
颯を見つめていると、颯の唇が、オレの頬に触れる。
ちゅ、と優しく触れて、また、少しずれてキスされて……。
なんか、ちゅっちゅってされて、くすぐったいし、恥ずかしいし……!
「は。……真っ赤」
「っ……るさい……」
なんか、クスクス笑われるけど。
お前のせいじゃん……!
「――――ほんと、ここまで可愛いとか……」
優しいとしか取れない、笑いを含んだ声で囁かれると。
っマジで恥ずかしいし……!
ほぼ涙目のオレは。
なんだかすごく優しい瞳と視線が絡んだままで、唇にキスされた。
◇ ◇ ◇ ◇
(2023/9/27)
◇ ◇ ◇ ◇
甘すぎかなーマイッカ( ´∀` )
849
お気に入りに追加
4,036
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
※完結まで毎日更新です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる