【ひみつの巣作り】本編完結・番外編中💖🌟奨励賞

悠里

文字の大きさ
上 下
34 / 222

第34話 元αの男だけど。

しおりを挟む

 何か色々質問されて、しかもちょこちょこキスされたり、恥ずかしいセリフを挟まれながら、夕飯を食べ進めていると、颯がふと、オレを見つめた。

「なんかオレからしか聞いてない気がする」
「ん?」

「慧は? オレに何か聞きたいこと無い?」
「……なんでもいいの?」
「いいよ」

 と言われても、とっさには浮かばない。
 何だろう。颯に聞きたいことか。
 ちょっと待って、考える、と言って、しばらく食べながら考える。
 
 グラスの飲み物を飲み干したのを見て、颯がオレにまだ飲むかを聞いてくる。

「ううん、もういいや」
「つか、ちょっと赤いもんな」

 すり、と頬に触れられて、流し目攻撃を受ける。
 ……ほんと、もはやこれは攻撃だ、なんて思いながら。
 そこで、ふと気付いた、聞きたいこと。

「聞きたいこと、思いついた」
「ん。何?」
 クスッと笑って、オレを見つめてくる。

「……颯、男と付き合ったこと、ある?」 

 颯の周り、Ωの男も女もいっぱい居たけど。
 でも、颯はいつも、「元カノ」って言うから、女の子だけなのかなって。
 そこが、なんとなく気になっていたのを、思い出したから、聞いたのだけれど。

「男と付き合ったことはない」
 即答でそう言われた。

 あ、うん。なんかそんな気はしていた。
 ……でもちょっと待って、そうなるとさ、オレ、男だけど、いいのかな。
 しかも、線が細くて可愛らしいΩとかならまだしも。
 普通の……ていうか、オレ、元αだし、ちゃんと男っぽいと思うのだけど。

 颯の答えに、一瞬でそこまで考えて、何て話を続けようか困っていると。

「男のΩと付き合わなかった理由聞きたい?」

 何だかとても楽しそうに微笑んで、颯がオレを見つめてくる。

「ん? ……理由なんてあるのか?」
「あるよ」

 ふ、と颯が笑う。

「男と付き合うなら、お前が良いって思ってたから」
「――――……」

「って言っても、αのお前とどうこうなる気はなかったけどな。お前にその気はないと思ってたし」

 ……ん??? 何今の。

「男なら、オレが良かった、から? なの?」
「ん? ああ。……お前以外の男と付き合う気はなかったな」

「………………」

 えーと。
 ……颯が男と付き合わなかった理由って。
 オレなの?

「颯って、前から、オレのこと……?」

 そう言うと、颯はオレを見つめて、ちょっと苦笑いを浮かべた。
 
「……つか、オレ、結構何度も、お前のこと好きだったって言ってるよな? αじゃ無かったら迫ってた」


 そんな風に言われて。ぽわわ、と心の中に、ほんわかしたものが浮かぶ。

 わー、オレ……。
 αでも、颯に迫られてたら、どうしてたかな。
 なんて、今、とっさに思ってしまった。




しおりを挟む
感想 421

あなたにおすすめの小説

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。 拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。 逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。  兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない

小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。 出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。 「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」 「使用人としてでいいからここに居たい……」 楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。 「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。 スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。

処理中です...