【ひみつの巣作り】本編完結・番外編中💖🌟奨励賞

悠里

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第34話 元αの男だけど。

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 何か色々質問されて、しかもちょこちょこキスされたり、恥ずかしいセリフを挟まれながら、夕飯を食べ進めていると、颯がふと、オレを見つめた。

「なんかオレからしか聞いてない気がする」
「ん?」

「慧は? オレに何か聞きたいこと無い?」
「……なんでもいいの?」
「いいよ」

 と言われても、とっさには浮かばない。
 何だろう。颯に聞きたいことか。
 ちょっと待って、考える、と言って、しばらく食べながら考える。
 
 グラスの飲み物を飲み干したのを見て、颯がオレにまだ飲むかを聞いてくる。

「ううん、もういいや」
「つか、ちょっと赤いもんな」

 すり、と頬に触れられて、流し目攻撃を受ける。
 ……ほんと、もはやこれは攻撃だ、なんて思いながら。
 そこで、ふと気付いた、聞きたいこと。

「聞きたいこと、思いついた」
「ん。何?」
 クスッと笑って、オレを見つめてくる。

「……颯、男と付き合ったこと、ある?」 

 颯の周り、Ωの男も女もいっぱい居たけど。
 でも、颯はいつも、「元カノ」って言うから、女の子だけなのかなって。
 そこが、なんとなく気になっていたのを、思い出したから、聞いたのだけれど。

「男と付き合ったことはない」
 即答でそう言われた。

 あ、うん。なんかそんな気はしていた。
 ……でもちょっと待って、そうなるとさ、オレ、男だけど、いいのかな。
 しかも、線が細くて可愛らしいΩとかならまだしも。
 普通の……ていうか、オレ、元αだし、ちゃんと男っぽいと思うのだけど。

 颯の答えに、一瞬でそこまで考えて、何て話を続けようか困っていると。

「男のΩと付き合わなかった理由聞きたい?」

 何だかとても楽しそうに微笑んで、颯がオレを見つめてくる。

「ん? ……理由なんてあるのか?」
「あるよ」

 ふ、と颯が笑う。

「男と付き合うなら、お前が良いって思ってたから」
「――――……」

「って言っても、αのお前とどうこうなる気はなかったけどな。お前にその気はないと思ってたし」

 ……ん??? 何今の。

「男なら、オレが良かった、から? なの?」
「ん? ああ。……お前以外の男と付き合う気はなかったな」

「………………」

 えーと。
 ……颯が男と付き合わなかった理由って。
 オレなの?

「颯って、前から、オレのこと……?」

 そう言うと、颯はオレを見つめて、ちょっと苦笑いを浮かべた。
 
「……つか、オレ、結構何度も、お前のこと好きだったって言ってるよな? αじゃ無かったら迫ってた」


 そんな風に言われて。ぽわわ、と心の中に、ほんわかしたものが浮かぶ。

 わー、オレ……。
 αでも、颯に迫られてたら、どうしてたかな。
 なんて、今、とっさに思ってしまった。




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