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第34話 元αの男だけど。
しおりを挟む何か色々質問されて、しかもちょこちょこキスされたり、恥ずかしいセリフを挟まれながら、夕飯を食べ進めていると、颯がふと、オレを見つめた。
「なんかオレからしか聞いてない気がする」
「ん?」
「慧は? オレに何か聞きたいこと無い?」
「……なんでもいいの?」
「いいよ」
と言われても、とっさには浮かばない。
何だろう。颯に聞きたいことか。
ちょっと待って、考える、と言って、しばらく食べながら考える。
グラスの飲み物を飲み干したのを見て、颯がオレにまだ飲むかを聞いてくる。
「ううん、もういいや」
「つか、ちょっと赤いもんな」
すり、と頬に触れられて、流し目攻撃を受ける。
……ほんと、もはやこれは攻撃だ、なんて思いながら。
そこで、ふと気付いた、聞きたいこと。
「聞きたいこと、思いついた」
「ん。何?」
クスッと笑って、オレを見つめてくる。
「……颯、男と付き合ったこと、ある?」
颯の周り、Ωの男も女もいっぱい居たけど。
でも、颯はいつも、「元カノ」って言うから、女の子だけなのかなって。
そこが、なんとなく気になっていたのを、思い出したから、聞いたのだけれど。
「男と付き合ったことはない」
即答でそう言われた。
あ、うん。なんかそんな気はしていた。
……でもちょっと待って、そうなるとさ、オレ、男だけど、いいのかな。
しかも、線が細くて可愛らしいΩとかならまだしも。
普通の……ていうか、オレ、元αだし、ちゃんと男っぽいと思うのだけど。
颯の答えに、一瞬でそこまで考えて、何て話を続けようか困っていると。
「男のΩと付き合わなかった理由聞きたい?」
何だかとても楽しそうに微笑んで、颯がオレを見つめてくる。
「ん? ……理由なんてあるのか?」
「あるよ」
ふ、と颯が笑う。
「男と付き合うなら、お前が良いって思ってたから」
「――――……」
「って言っても、αのお前とどうこうなる気はなかったけどな。お前にその気はないと思ってたし」
……ん??? 何今の。
「男なら、オレが良かった、から? なの?」
「ん? ああ。……お前以外の男と付き合う気はなかったな」
「………………」
えーと。
……颯が男と付き合わなかった理由って。
オレなの?
「颯って、前から、オレのこと……?」
そう言うと、颯はオレを見つめて、ちょっと苦笑いを浮かべた。
「……つか、オレ、結構何度も、お前のこと好きだったって言ってるよな? αじゃ無かったら迫ってた」
そんな風に言われて。ぽわわ、と心の中に、ほんわかしたものが浮かぶ。
わー、オレ……。
αでも、颯に迫られてたら、どうしてたかな。
なんて、今、とっさに思ってしまった。
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