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第23話 病院で。
しおりを挟む片思いがとか両想いがとか、そんな風な認識をする期間はなかった。
颯は、意識してたって言うけど、やっぱりα同士だから動こうとはしてなかったみたいだし。オレも、颯を意識しまくって張り合ってたけど、あれは対抗意識がメインだった気がするし。
やっぱり、α同士って、そういうもの、な気がする。
ただ、なんか。お互いへの意識の仕方は、もともとすごく強かったなぁとは思うけど。
オレは、運命の番に憧れてはいたけど、ほぼ出会えないって聞いてたし、すごく信じてた訳じゃない。しかも、可愛いΩと、とか思ってたし。オレが、うなじを噛まれて、αのものになる運命なんて、まったく考えたこともなかった。
なのに。はっきりした好きとかそういう甘いのはすっ飛ばした急展開で、「運命」とやらを肌で実感して、番ってしまった。
全然Ωとしての感覚の予備知識みたいなの無かったのに。あの瞬間、今噛んでくれたらイケる、と思って。……噛んでもらったら、多分、イケた、という感覚。
こんなのは理屈じゃないんだな、と思った。
番になる前後、オレを抱いてくれてる間の颯に感じた色々は、今までの全部をひっくり返して、好きって想うには十分すぎるほどで。
後悔しないしさせない、って言ってくれた颯のこと、信じようと思えた。
翌日、朝早くから病院。
第二の性の諸々に関しては一番有名で、規模も大きい。颯とうちの家族も代々お世話になってる病院だった。
本当は仕事だったらしい父たちにも、予定のあったらしい母たちにも、オレ達の人生の最重要事項だから病院に来て、と伝えた。両家とも、行く、との返事。
検査を終えて簡単に話を聞いたオレ達は、家族のことを聞かれたので、病院のどこかで待ってると思うと伝えた。オレ達は先に、診察室とは別の、応接室みたいな部屋に通された。めちゃくちゃ部屋が豪華なのは、多分、オレらの実家に気づいたから。
これまた豪華な大きなテーブルが置いてあって、椅子が並んでいるので、とりあえず腰かけた。
「……なー、颯?」
「ん?」
「……番、なっちゃってたね」
「そーだな」
さっき先生に聞いたばかりの話。ぽそ、と一言告げたら、ふ、と颯が笑う。
「ていうか、分かってたけど。――――な? 運命だったろ?」
不適な感じで、ニヤッと笑う颯。
遺伝子検査でも、運命の番だと認定されて、それも聞いたばかり。
なんか。……颯はやっぱり、カッコいいよな。
運命だと思うって、当たってた。
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