5 / 209
第5話 生まれて初めて
しおりを挟むああ、なんか、悔しいけど。
イイ男だな、こいつ。
ずっと張り合ってきて。
多分、誰より、こいつのことを、意識してて。
……誰より、知ってる気がするのに、こんな表情は初めて見た。
「意味は、分かるけど……マジで、いいの?」
「なにが」
「……オレ、だよ?」
オレのセリフに、颯はオレの顔をマジマジ見つめてから、は、と笑った。
「むしろ誰より、お前には興味しかねーけど」
「――――……」
「誰より認めてるし。……こんなお前を誰かに任せるとか、絶対ぇ嫌だけど」
「――――……」
あ。ヤバい。
なんか今、ぶわ、と体温が上がった。
何だこれ。Ωって、こんな風に、なんの? 大変だな、ほんとに。
色々初めてすぎて、戸惑いしかないけど、もうその感覚を追っていくしか、今のオレにできることは無い気がする。
つかまっている颯の服を、ぎゅ、と握り締めた。
「……颯が、マジで、良いなら」
そう言って、見つめると。
「良くなきゃ誘わない」
はっきりそう返してくれた颯も、きつそう。
オレから漏れるフェロモンに煽られて、辛いんだと思う。初めてだけど、自分でも、分かる。強烈なんじゃないかな、これ。βの運転手を頼んでくれた意味もそれだと思う。
お姫様だっこの二回目は拒否して、なんとか支えられて正門前に移動、呼んでくれた車を待つ。
颯と居ると、どんどんひどくなってる気がする。ていうか……颯と会ったから、こうなったのかな? さっきまで体調が悪いと思っていた程度だったのに。……颯に、反応、した? 分かんないけど。
颯が、上がりそうな息を抑えてるのも、分かる。
オレに触れてる、颯の手も、体も、熱い。
お互いがお互いに、めちゃくちゃ、反応してる。なんか今日、硬い生地のジーンズはいてきててよかったとか、変なことを思ってしまう。
息が、荒い。オレは、抑えるのが無理になってきてる。
颯の瞳を見つめるだけで、襲ってくる衝動は、熱すぎて、怖いくらい。
――――……抱かれたい、なんて、生まれて初めて、思ったのに。
今までのどんな衝動よりも、強い。
943
お気に入りに追加
3,784
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
貧乏Ωの憧れの人
ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。
エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる