23 / 24
◇出逢い編
◇勝負
しおりを挟む着替え終えて、校庭に出ると、オレ達が最後だったらしく、すぐに練習が始まった。準備運動の後。
「タイムとるぞー、1本、思い切り真剣に走れよー!」
教師の声。
隣の類が、ふー、と息を付いたのが聞こえた。
「類、ちゃんと真剣に走って。 マジでタイム、勝負しよ」
「――――……オレ、補欠がいい」
一言で返事をして、類がふい、と顔を背けた。
「オレが勝ったら、デートしようよ」
「……勝負しない」
「……じゃあ、オレが負けたら――――…… もう話しかけないからさ」
「――――……」
類が、ふと、オレを見た。
「オレ、人生で負けた事ないんだよね。陸上部の奴にも」
「――――……」
わざと、挑発してみると。
類が、ムッとしたまま、オレを見た。
乗るかな。あ、なんか、乗りそうな顔、してきてるような。
……つか、ちょっと待て。
……って、これで負けたら、シャレになんないけど。
「あー…… 類、ごめん――――……やっぱり今の無し」
「え?」
「……話しかけないっていうのは無しで良い? それは嫌だった」
「――――……」
「オレが勝ったらデートで……類が勝ったら――――……んー……」
「……もう、話しかけないんだろ? オレ、それでいいけど」
「無理。それは、絶対嫌だ」
言い切ると。
類は――――……マジマジとオレを見て。
「……何だよそれ」
ぷっと笑った。
ほんの、少し、だったけれど。
手の甲で口元隠してはいたけれど。
確かに、笑った。
何だか嬉しくなりつつ。
あ、と思いついた事を言ってみる。
「――――……3日間、話しかけないっていうのは?」
「……短いんだけど」
「つか、オレにとっては、すげー長いから。 それで勘弁して」
「――――……お前って、ほんと言ってること分かんないって、言われない?」
「言われないよ。――――……類以外にこんなにしつこくした事ないし」
「……しつこい認識あるんだ……」
「そりゃあるよ。無かったらおかしいでしょ」
「――――……ほんと、変なの……」
はー、と類にため息をつかれる。
オレってほんと、類に何十回ため息つかれるんだろうと思うけれど。
「でもあれかー。類、ちょっとブランクあるしなあ? 負けそうで嫌なら勝負はやめとく?」
む、とする類。
――――……可愛い。乗ってきそう。
「……負けたら、1週間、話しかけんな」
「――――……1週間?」
3日間よりはのびたけど。
――――……もう二度と、じゃなくて、1週間で良いんだ、という、そっちの気持ちが浮かぶ。
「……嫌だけど――――…… 勝ったらデート、目指して頑張る」
「――――……」
で。結局、どうなったかというと。
0.3秒という、誤差みたいな超僅差ではあったけど。
オレが勝った。
執念? とにかく、気持ちでの勝利、だな、うん。
12
お気に入りに追加
324
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
悪役令息の死ぬ前に
ゆるり
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる