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◇出逢い編
◇どうしたら*浩人
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やっと、放課後になった。
類が立ち上がって、多分、図書室に向かって消えていった。
オレも行こ、と思った時。
隣のクラスの新太に呼ばれた。中学のバスケ部で一緒だった仲の良い奴。
「浩人、今日もバスケ行かないの?」
「ん、パス」
「何で? バスケしにいこうぜ?」
「オレ来週からでいいから」
「バスケ行かないで何してんの?」
「ちょっと楽しいこと」
「ふーん? 女?」
「なんでだよ。違うわ。来週行くから、じゃあな」
「はいはい」
新太と別れて、図書室に向かう。
図書室の引き戸を開けて、ゆっくりと閉める。
相変わらず、人はまばら。図書委員と、あと数人。
「――――……桜木、いつも同じとこに座るんだな」
窓際の、隅っこ。入口から見えない席。
類の隣、一つ席を空けて座り、そう言うと。
類は、ふ、と上を向いた。
「――――……あのさ」
珍しい。
類から、話しかけてきた。
「うん。なに?」
……そんなのが、こんなに嬉しいって。
「……バスケ部、入るんだろ?」
「うん。入るよ」
……ちゃんと自己紹介聞いてくれてたんだな。
またそれも、嬉しい。
「……じゃあ毎日、ここで、何してんの」
「桜木と話したいから。バスケ部行ったら、多分、ここ来れなくなるからさ。体験は来週末までだから。いいよ」
「――――……」
「……それよりさ」
「――――……」
「何でそういうのも、ここでないと話さないの? 教室、席前後なんだし、いつでも話してくれていいのに……」
「――――……」
「……オレと話してるとこ。見られたくないの? ここは人が居ないから、話してくれてる?」
「――――……」
答えないけど。否定しないから、そうなんだろうな……。
「……それって、誰の為?」
「――――……あのさ。オレ」
「うん?」
「……お前ともう、話さない」
「――――……は?」
突然言われた言葉に、少し焦る。
「え、何で? 何か怒った?」
「怒ってない。でも――――……もう、ほんとに良いから」
「何で?」
類は、何も言わずに、首を振った。
もうそこから。
全然。反応してくれなくなって。
あんまりしつこいと嫌われそうだなーと、思って。
「……桜木、本は、選んでくれる?」
類は、もう、聞こえてないみたいな態度。
今日はダメそうだな……。
「……今日は帰るね。あ。そういや、オレら、100メートルとリレーに出るって。さっき体育のセンセに聞いた。放課後の練習もあるって聞いた。よろしくな」
反応、全くなし。
……まあ、しょうがないか。
昨日借りてた本を、カウンターで返した。
帰途につきながら、ため息。
昨日は一緒に帰ったのに。
――――……少し懐いた動物が、また警戒心むき出しになった感じ。
――――……どうしても、話したくない事があるんだろうなぁ……。
でもその内分かるっつーことは……知ってる奴が居るって事か。
でも噂話聞きまわるのも――――……嫌だし。それが真実とは限んねえし。
類から聞きたいけど。
――――……あの様子じゃ、まだ無理だな。
つか、まだ無理、って。このままだと、永遠に無理なんじゃ……。
あの様子の奴と、どーやれば、そういうのを話してくれる位信じてもらえるようになるんだろう。
それを聞いて、そんなの、どうでもいいって言えない限り、類とはもうこれ以上仲良くはなれない気がするし。
もう、帰り道、ため息しか出てこない。
綺麗な顔が。完全に無表情で覆われている。
素直に笑ったら、この上なく、可愛いだろうに。
――――……絡まない方が良いって。
多分オレに迷惑なのか何なのか、何かしらあるって意味で、あいつは言ってる。オレの為の言葉、な気がする。
――――……でもそんなの、要らないのに。
何でも話してくれたら、全部、受け止められる気がするのに。
誰だよ。
あいつをあんな無表情にした奴。
……人なのか、出来事なのか、何なのか分かんねえけど。
どうしたら、類、オレを信じて、笑うんだろう。
そんな事ばっかり考えながら、ずっと過ごした。
類が立ち上がって、多分、図書室に向かって消えていった。
オレも行こ、と思った時。
隣のクラスの新太に呼ばれた。中学のバスケ部で一緒だった仲の良い奴。
「浩人、今日もバスケ行かないの?」
「ん、パス」
「何で? バスケしにいこうぜ?」
「オレ来週からでいいから」
「バスケ行かないで何してんの?」
「ちょっと楽しいこと」
「ふーん? 女?」
「なんでだよ。違うわ。来週行くから、じゃあな」
「はいはい」
新太と別れて、図書室に向かう。
図書室の引き戸を開けて、ゆっくりと閉める。
相変わらず、人はまばら。図書委員と、あと数人。
「――――……桜木、いつも同じとこに座るんだな」
窓際の、隅っこ。入口から見えない席。
類の隣、一つ席を空けて座り、そう言うと。
類は、ふ、と上を向いた。
「――――……あのさ」
珍しい。
類から、話しかけてきた。
「うん。なに?」
……そんなのが、こんなに嬉しいって。
「……バスケ部、入るんだろ?」
「うん。入るよ」
……ちゃんと自己紹介聞いてくれてたんだな。
またそれも、嬉しい。
「……じゃあ毎日、ここで、何してんの」
「桜木と話したいから。バスケ部行ったら、多分、ここ来れなくなるからさ。体験は来週末までだから。いいよ」
「――――……」
「……それよりさ」
「――――……」
「何でそういうのも、ここでないと話さないの? 教室、席前後なんだし、いつでも話してくれていいのに……」
「――――……」
「……オレと話してるとこ。見られたくないの? ここは人が居ないから、話してくれてる?」
「――――……」
答えないけど。否定しないから、そうなんだろうな……。
「……それって、誰の為?」
「――――……あのさ。オレ」
「うん?」
「……お前ともう、話さない」
「――――……は?」
突然言われた言葉に、少し焦る。
「え、何で? 何か怒った?」
「怒ってない。でも――――……もう、ほんとに良いから」
「何で?」
類は、何も言わずに、首を振った。
もうそこから。
全然。反応してくれなくなって。
あんまりしつこいと嫌われそうだなーと、思って。
「……桜木、本は、選んでくれる?」
類は、もう、聞こえてないみたいな態度。
今日はダメそうだな……。
「……今日は帰るね。あ。そういや、オレら、100メートルとリレーに出るって。さっき体育のセンセに聞いた。放課後の練習もあるって聞いた。よろしくな」
反応、全くなし。
……まあ、しょうがないか。
昨日借りてた本を、カウンターで返した。
帰途につきながら、ため息。
昨日は一緒に帰ったのに。
――――……少し懐いた動物が、また警戒心むき出しになった感じ。
――――……どうしても、話したくない事があるんだろうなぁ……。
でもその内分かるっつーことは……知ってる奴が居るって事か。
でも噂話聞きまわるのも――――……嫌だし。それが真実とは限んねえし。
類から聞きたいけど。
――――……あの様子じゃ、まだ無理だな。
つか、まだ無理、って。このままだと、永遠に無理なんじゃ……。
あの様子の奴と、どーやれば、そういうのを話してくれる位信じてもらえるようになるんだろう。
それを聞いて、そんなの、どうでもいいって言えない限り、類とはもうこれ以上仲良くはなれない気がするし。
もう、帰り道、ため息しか出てこない。
綺麗な顔が。完全に無表情で覆われている。
素直に笑ったら、この上なく、可愛いだろうに。
――――……絡まない方が良いって。
多分オレに迷惑なのか何なのか、何かしらあるって意味で、あいつは言ってる。オレの為の言葉、な気がする。
――――……でもそんなの、要らないのに。
何でも話してくれたら、全部、受け止められる気がするのに。
誰だよ。
あいつをあんな無表情にした奴。
……人なのか、出来事なのか、何なのか分かんねえけど。
どうしたら、類、オレを信じて、笑うんだろう。
そんな事ばっかり考えながら、ずっと過ごした。
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