【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-

悠里

文字の大きさ
上 下
8 / 24
◇出逢い編

◇空気をよむ本*浩人

しおりを挟む




「桜木、プリント。前に回して」

 後ろから、類の背中をとんとんとつつき、プリントを回す。
 声は発さずに、頷いて、類が浩人からプリントを受け取る。

 席前後。もう、1週間も経つのに。何度も声をかけてるのに。
 ほとんど、類の声を聞いていない。

 むしろ、ミラクルだ。


 なんで、こんなに、喋らないんだろう。


 先生に当てられれば普通に回答してるし、自己紹介の時の様子を見ても、内気すぎて話せないという訳じゃなさそうなのに。


 今日、たまたまイイ事を聞いた。


 類が放課後、図書室に寄ってるらしいってこと。
 本を読んで帰って行くらしい。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇


 放課後の図書室。

 図書委員がカウンターに居る以外、数人がまばらに座っているだけ。

 小学中学、高校1週間通して、初めて、自ら図書室来た。
 そんな事を思って、ちょっと笑いそうになってしまう。


 ――――……類、発見。
 そっと、近づく。

「……桜木」
「――――……」

 静かに呼びかけると、ふと顔を上げた類は、オレを見て、ちょっと目を大きくした。

 反応があるのが嬉しい。

 なんて、ちょっと、「嬉しい」の最低ラインが低くなりすぎてる気がする。

 目が大きくなっただけで嬉しいって何だろ……。
 自分に対してそんな風に思いながら。

 1つ席を空けて、隣に座ってみた。
 黙ったまま、類がオレを見る。


「――――……」

 ふ、と視線を逸らされた。


「な、いっこお願いがあるんだけど」
「――――……」


「桜木が 一番好きな本、教えてくれない?」
「――――……やだ」

「何で?」
「……なんでも」


「じゃあ。オレに読ませたい本、ない?」
「――――……」

 無言で類が立ち上がって。
 どこかに行ってしまった。


 えーと。
 ……無視、なのかな? 

 ここに居ていいのか、帰った方がいいのか……。
 とりあえず、戻ってくるまで待つか。

 2分位して。
 類が戻ってきた。


「これ」

 1冊の本を押し付けられた。


 何の本だろうと思ったら。「空気を読む本」だって。
 数秒、何も言えず固まって。

 ぷ、と笑ってしまう。


「ありがと。……借りてって、家で読んでくる」
「――――……っ」


 借りてくと言った時、類の顔が一瞬焦った。

 ……冗談だったのか。ちょっとした嫌味だったのか。

 まさか借りていくとか言うとは思わなかったんだろうな。


「桜木」
「――――……」

「また明日な」


 借り方も分からないので、カウンターに居た図書委員に聞いて、本を持って帰った。


 はは、おもしろ。
 空気読めって?
 近寄るなオーラ出してんだから、放課後まで寄ってくんなって事かなぁ。


 ――――……でも、借りてくって言った時、
 すこし狼狽えてた。


 少しイヤミな事やっといて、後悔した感じかな。

 冷めたフリしてるけど。
 何も感じないわけじゃなさそう。




 家に帰るまでの電車と、ベッドに転がってしばらく、「空気を読むための本」全部読んだけど。
 ちょっと面白かったけど。


 これやってたら、類には絡めないから、心の中で、却下した。











しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

エンシェントリリー

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

シロツメクサの指輪

川崎葵
BL
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしてくれる?」 男も女も意識したことないぐらいの幼い頃の約束。 大きくなるにつれその約束を忘れ、俺たちは疎遠になった。 しかし、大人になり、ある時偶然再会を果たす。 止まっていた俺たちの時間が動き出した。

処理中です...