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第3章 キャンプ
「朝のひととき」*樹
しおりを挟む翌朝。眩しくて目が覚めた。今何時だろうと、目を開けると。
「……起きた?」
すぐそばから聞こえる優しい声。
「あ。蓮……」
すっぽり、蓮の腕の中だった。
……そうだ。昨日あのまま寝ちゃったんだった。
「蓮……おはよ」
「ん、はよ」
ぎゅう、と抱き締められる。
「……朝から、なんか幸せ……」
ふふ、と微笑んでしまう。
「……んー」
より一層むぎゅぎゅと抱き締められる。
「可愛いなー樹……」
「蓮……」
脚が絡んで、もうほんと密着。ちょっと恥ずかしい。顔、熱い。でも密着してるからそれも見られないからいいかなと思っていると。
「まだ誰も起きてないと思う。静かだから」
蓮がそう言った。
「あ、そうなんだ……何時なの?」
「まだ七時前かな」
「そっか。じゃあ……あと少しこのまま居よっか……」
「そーだな」
蓮の手がオレの後頭部に回ってきて、すりすりと撫でてくれる。
「……今日の夜はもう帰ってるんだよね」
「そうだな。……何したい? 最後」
「なんだろ……皆と考えよっか」
「樹は? 何かしたいことある?」
「んー……あ。そうだ。皆がしたいって言ったらさ」
「ん」
よしよしよし。
ずーっと頭を撫でてくれている蓮に、なんだかとっても、ほこほこと和む。
「……陶芸教室がやってるとこがあるみたいで」
「陶芸?」
「うん。作れるんだって」
「へえ……いいな」
「蓮、食器、作りたいかなーて。オレも作りたいし」
「皆に聞いてみようぜ」
「うん」
頷くと、頬に触れられて、顔を上げさせられた。
蓮と見つめ合うと、蓮の瞳が優しく細められて、ふんわり微笑む。
「ありがと。前オレが、自分で作ってみたいなーとか言ったからだろ?」
「うん、そう」
ふと笑いながら蓮を見つめ返すと、ちゅ、と頬にキスされる。
「樹、やったことある? 陶芸」
「小学生の時の修学旅行でやったよ」
「うまくできた?」
「うーん。微妙……? お父さんの灰皿を作ったんだけどね。なんか……すっごく平たくて、おかしくなってた」
思い出し笑いでクスクス笑う。
「そのすこし後にお父さんが禁煙してさ。結局使わなくなっちゃって……どっか行っちゃった」
「そうなんだ」
「今度はちゃんと長く使えるものがいいなあ}
そう言うと、蓮は二ッと笑う。
「一緒に長く使えるもの、な?」
「うんうん、そうだね」
嬉しくなって、うんうんと頷く。
「樹は、何、作りたい?」
「んー昨日見たとこだと、良く作られるのは、お茶碗とか湯呑みとか小鉢とかみたいで。あと、どんぶりも書いてあったよ」
「なんか色んなの作ってみたいな? 行ってみたらきっと見本あるよな。良さそうなのでお揃いの作ろ」
楽しそうに言う蓮に、皆に聞いてみないとだよね、と言うと、蓮はクスクスく笑う。
「もうすっかり行く気になってた」
「そうなんだ」
ふふ、と笑って、見上げると、視線が絡む。
「――――……樹」
何だか雰囲気が少し変わる。
ん、と蓮を見つめ返すと、ゆっくりゆっくり触れてくる唇。
優しいキス。
「…………」
ふ、と笑ってしまうと、蓮が、ん?と見つめてくる。
「好きとか。なにもいわずに……ずっとキスしてたでしょ?」
「ん」
「今考えても、不思議だったなあって思って。キスしてくる蓮も。何も言わないでされてたのも……」
「ん」
「おかしいよね?」
蓮を見つめたまま、笑いながら言うと。
蓮はじっとオレを見つめて、それから。
「いつ――――……」
蓮が何か、言いかけた瞬間。
「おっはよー!!!」
というでっかい声とともに、どんどんとドアを叩く音。
「まだ寝てんのー? 早く起きて朝食べて、どっかいこー、最後の日だからもったいないぞー」
びっくりして、固まったまま聞き終えた蓮とオレは、クッと笑いながら離れて、起き上がった。
蓮がドアを開けて、「森田、朝から超ハイテンションすぎ」と突っ込んで笑ってる。
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