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第3章 キャンプ
「いつ会っても」*樹
しおりを挟む「じゃあ、おやすみ」
花火を終えて片付けてきてから、皆と別れた。
ドアを閉めて、蓮が鍵をかけてから、隣に居るオレを見つめる。
「……やっと二人きりだな」
そっと肩に回ってきた手に、蓮を見上げようとしたら、すぐにぎゅ、と抱き締められた。
「――――……蓮……」
なんか……。
……すごく、幸せかも……。
男同士とか……普通なら気にしなきゃいけないのかもしれないけど。
蓮と居るのが自然すぎて、穏やかで。
触れるのも、キスするのも、なんだか、自然なことみたいに思えてしまう。
なんか、引き寄せられるみたいに、蓮に目が行く。
声が聞きたくなるし、話したいし。
「ベッド行く?」
「うん」
腕を引かれて、二人でベッドに入って、座ったまま、顔を見合わせた。
「早かったね、二泊」
「そうだな……楽しかったな」
「うん」
笑顔で返しながら頷く。
「蓮は、友達と旅行とか、いっぱい行ったこと、あるの?」
「無いよ。あー……部活の、合宿とかはあるけど」
「そっか」
「高校ん時、友達とは泊りには行かなかったな。キャンプとかは子供の頃とかに家族で行ったけど」
「友達と泊まったりは蓮でもないんだね」
「蓮でもって」
クスクス笑って、蓮がオレの腕を引く。
ぎゅ、と抱き締められて、なんだか嬉しい気持ちがくすぐったくて、ふ、と顔が綻ぶ。
「……ん、なんとなく、蓮は色んなこと、してそうな気がしただけ」
「普通の高校生だったけど」
笑いを含んだ声に、普通かなあ?と、顔を見上げる。
「樹から見て、普通じゃなかった?」
「んー……すごく目立ってたから、蓮」
「そう?」
「うん。大人っぽかったし」
「オレ、結構騒いでたから、ガキっぽくなかった?」
「そんなこと無いよ? 何回も言ってるかもだけど……華やかで人気があって、目立つって感じかなあ……」
あの頃、人にいっぱい囲まれてた蓮を思い出して、ふふ、と微笑んでしまう。
まあでも、今もそうなんだけど。そこにオレが混ぜてもらってる感じ、かなあ? あ、でも、ふたりで 居てくれることが、すごく多いけど。
「あの入試の日にさ、あのバスに乗ってなかったら、蓮とオレって話さないで終わったのかなあって思うと……なんか不思議だね」
こんな風に、好きになることも、無かったんだろうな、なんて思いながらそう言うと。
「んー……どうだろ」
と、蓮が言って、オレを見つめる。
「……どうだろって?」
「大学に入ってから、話しかけたかも、オレ」
「……そう??」
「多分。……高校ん時はまったく接点、無かったから無理だったけど」
「……んん? 蓮って」
「ん?」
「オレと、話してみたいなーとか、思ってた??」
「……思ってた、かも」
そうなの? それは初耳かもしれない。
「綺麗な男がいるって、友達に言われて、樹を見てって言われたんだよ、オレ。そん時は、男が綺麗とか関係ないしとか、言ってたんだけど、実際、見てみたら……」
「――――……」
「確かに綺麗、て思って……それまで見たこと無かったのが不思議だなーと思ったのを覚えてる」
そんな言葉に、ぷ、と笑ってしまう。
「知らない男の顔なんて見ないよね」
クスクス笑ってオレがそう言うと、蓮は、苦笑い。
「でも、それからは覚えてて知ってたから……入試の日も、名前、呼んだ」
「そうなんだ」
見つめ合うと、蓮はふ、と微笑む。
「だからあの日会わなくても、大学で話しかけたんじゃないかなって思う」
「……じゃあ、あの日、あそこで会わなくても、オレ達、話してた?」
「きっとそうだと思う」
「……そしたら、一緒に暮らしたかなあ??」
「どうだろな? そん時もう一人暮らし始めてたら、すぐには一緒にってならなかったかもしれないけど……」
そっか、なるほど、と頷いていると。
蓮は、クスクス笑い出して、オレの頬に触れた。
「いつ話し始めたとしても、一緒になったと思わないか?」
「……あの日じゃなくても、てこと?」
「そ。いつから話してても、オレは樹のこと、好きになったと思うし」
「そう、だね。オレも、蓮と話してたら、好きになると思う……」
「だろ?」
蓮が嬉しそうに言って、笑いながら、オレの頬にキスしてくる。
そっか……あの日、偶然会ったから、じゃなくて。
……いつ会っても、蓮とこうなってたのか。
「なんかそれ……すごく、嬉しいかも」
顔が勝手に、綻んで。
そう言ったオレに、蓮が、優しく笑って。
そのまま、ゆっくり、唇が、触れた。
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