【キスの意味なんて、知らない】

悠里

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第3章 キャンプ

◆番外編◆ クリスマス

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◇ ◇ ◇ ◇

本編とは別♡
2021/12/31……キャンプから帰ってきてすぐクリスマスだったら♡
という感じでお読みくださいヾ(*´∀`*)ノ♡

◇ ◇ ◇ ◇



 今年のクリスマスは土曜日。
 イルミネーションが綺麗な街に、二人で買い物に出てきた。

 イルミネーションスポットは、もうクリスマス前に空いてる内に見に行ったので、今日は買い物だけ。

 家で、蓮とクリスマスパーティーをすることになってる。

 料理とケーキは、蓮が作るって張り切ってて、それの買い物は蓮。
 オレは部屋を飾る担当になったので、そういう雑貨とかが売ってるお店に。

 お互いお任せってことで、別々に買い物をした。

 一緒に暮らし始めて、初めてのクリスマス。
 ……蓮と、そういう意味で、付き合い始めて、初めての。

 特に蓮、すっごく張り切ってる感じがしたから、楽しみ。

 一時間後。
 蓮と待ち合わせした場所に近づくと、蓮が見えた。

 あ、と思ったら。
 なんか女の子たちに話しかけられてる。

 ……知ってる子? 思ったけど、蓮の態度見てると、違う感じ。

 行った方がいいのか、終わるまで待ってた方がいいのか……オレが話に入っても、何もならないし……どうしよ。と思ってたら。

 ふと、視線をあたりに向けた蓮が、オレを見つけた瞬間、ふわ、と微笑んだ。
 多分、何かしら断って、女の子たちを置いて、オレの所に軽く、駆け寄ってきてくれる。

「何で止まってんの」

 クスクス笑われる。

「なんか、話しかけられてたから、どうしたらいいんだろと思って」
「何で? 来てよすぐ」

 クスクス笑って、優しくそう言われる。

「最初道聞かれて、教えてあげたんだけど全然離れないから、あー、そういうのだったのかって思ってたとこだった」
「そっか」
「彼女と待ち合わせですかって聞かれて、とっさに彼女ではないけどって言っちゃったから、良くなかったのかも」
「彼女ではないもんね……」

 クスクス笑ってしまうと、蓮はちら、とオレを見下ろす。

「彼女、ではないけど。恋人、て言えばよかった」
「――――……うん」

 頷いて、ふ、と笑んでしまう。

 優しい言葉。
 ……嬉しいなあ。
 

 そうなんだよねぇ。
 ……恋人、なんだよね、オレ達。

 嬉しい気分に浸りながらマンションに帰って、オレは飾り付け、蓮は食事作りを手分けして開始。

 卓上用の小さなクリスマスツリーを買ってきたので、それを最初に飾った。ちゃんと光るし、飾りもちゃんとしてて、すごく綺麗だなーと思ってたら、蓮が「いいな、それ」と笑う。

「だよね」

 椅子に腰かけて、真正面から見ていると、蓮がキッチンから離れて、隣に立った。

「綺麗だな」
「うん」

 しばらく見つめて、ふ、と笑う。
 背中に手が触れて、蓮を見上げると、ゆっくり重なってくる唇。

「――――……あ。ケーキ焼かないと」

 蓮が名残惜しそうにオレを離して、苦笑しながらキッチンに戻っていった。
 オレもクスクス笑ってしまいながら、飾り付けの続きに入った。




◇ ◇ ◇ ◇


 蓮の作ってくれた料理はほんとにおいしくて。

「お店開いてね」

 とまた言ってしまった。

「考えとく。店開かなくても、樹にはずっと作るから」

 クスクス笑うのも、いつも通り。

「料理って、センスなんだろうね……」
「オレの作る味が、樹はもともと好きなんじゃない? 好みもあるじゃん?」
「……うん。そうかもしれないけど。でもどんどん美味しくなるから」
「樹がおいしそうに食べるとこ、思いながら作ってるから。当たり前かも」

 ……なんかすっごい嬉しいかも。


「……ありがと」

 それだけ言うと、蓮はクスクス笑って、ん、と頷く。


「照れてる?」

 少しだけ頷くと、蓮は、ふ、と笑んでオレを撫でる。


「じゃあ、樹がめちゃくちゃ喜ぶとこを想像して作ったケーキを食べさせてあげようかな」

 そんなことを言いながら、蓮が立ち上がる。


「樹、これ、開けといて」
「うん?」

 受け取ったビニールの中の、可愛い飾りを見て、ふ、と笑ってしまう。
 サンタクロースとトナカイの可愛い砂糖菓子。

「さすがにそれは買ってきた」
「すっごい可愛い」
「あったほうが、クリスマスケーキっぽいだろ」
「うん」

 蓮が運んできてくれた、チョコケーキの真ん中に、サンタとトナカイを並べる。


「すっごい可愛い」
「だろ。これが一番もこもこしてて可愛かったんだよな」

 ……なんか、蓮みたいな人が、可愛いモコモコしたサンタとトナカイを見て、可愛いって思って買ってる姿の方が、可愛い。
 なんて思ってしまって、クスクス笑ってしまう。

「何そんな、笑ってんの」

 蓮が苦笑してる。

「似合わない?」
「んー。似合わないっていうか……蓮が、可愛い」

 クスクス笑うと、ちょっと嫌そうに眉を顰めるから、なんか、余計可愛い。


「写真撮ろう、蓮」
「ケーキの?」
「ケーキのっていうか、蓮とオレと、ケーキの」
「……いいけど」

 ぷ、と笑う蓮。
 カウンターにカメラを置いて、うまく入るように並んでから、一度離れてタイマーでシャッターを押した。

 撮れた写真を確認して、蓮に見せると。

「いいんじゃない? サンタとトナカイも可愛いし。……樹も可愛いし」


 クス、と笑う蓮。

「オレのことはいいけど……ケーキ可愛い」

 あと、蓮もカッコイイ。オレも――――……なんか、すごく幸せそうに見えるな。
 自分の写真を見て、そんな風に思ってしまうとか。そんなことって、あんまり、無い。

「切っていい?」
「う、ん……」
「ん?」
「……なんか切るのもったいない……」

 言うと、蓮は笑いながら、オレを見つめる。

「そう言ってくれるのは嬉しいけど……食べれないから、切るよ?」
「うん……」

「写真撮ったし」
「うん。いいよ、切って?」
「ん」

 クスクス笑いながら、蓮がケーキを切り分けていく。


「あ、オレコーヒー淹れるから、樹、料理の方、流しに片付けちゃってくれる?」
「うん」
「で、お皿にケーキのせて?」
「うん」

 二人で立ち上がって、片付け開始。

「コーヒー、カフェオレがいい?」
「うん。ちょっと洗えるもの洗っちゃうね」
「後で一緒でもいいけど」
「でも今やることないし」

 ケーキのお皿をテーブルに出して、流しで洗い始める。
 ちょうど片付いた頃に、コーヒーが淹れ終わって、二人でテーブルに座りなおした。


 料理がなくなったので、卓上のクリスマスツリーを、近くにひっぱってきた。


「電気消してくる」

 蓮がそう言って、部屋の電気を消してくると、なんだかすごく幻想的。


「……食べてみて、樹」
「うん」

「ん」

 フォークで口の前にケーキを運ばれて、一瞬ためらいつつも。
 ぱく、とくいついた。


「どう?」
「……美味しい」
「ほんと?」
「うん。食べてみて、すっごく美味しいから」
「ん」

 食べた蓮が、ふ、と笑う。


「良かった。いっぱい食べて」
「うん」

 自分のスプーンでパクパク食べていると、蓮がクスクス笑いながら、「樹」と差し出してくる。


「ん」

 ぱく、と食べて、もぐもぐした瞬間。
 ちゅ、と頬にキスされた。


「かーわい……」

 クリスマスツリーのキラキラの中。
 蓮が、優しく瞳を緩める。

「――――……」
 
 なんだかな、もう。
 ……何も、答えられないんだけど。

 口の中のケーキ、飲み込むのも、なんか、緊張する。

 
「樹、おいし?」
「うん。おいしい」

「……また食べたい?」
「うん」

 そっか、と笑う蓮。

「……蓮?」
「ん?」


 すぐ近くの蓮を見上げる。


「……蓮のごはんも、ケーキも、ずーっと、食べたいよ?」

「――――……」


 蓮にじっと見つめられて、見つめ返す。
 
 
「食べさせてね?」
「ん。了解」


「手伝うけどさ」
「……ん」


 クスクス笑った蓮に、引き寄せられて、ぎゅーと抱き締められる。


「樹」
「ん?」

「……大好きだよ」
「――――……ふふ」


 むぎゅ、と抱きついて。



「オレも」

 と言うと、優しい、唇が触れてくる。








 クリスマスの夜。まだ始まったばかりなのだけど。

 なんだかとっても、幸せで。



 蓮と居れて。
 ほんとによかったなあ、と、思ってしまった。








 
 -- Fin --
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