71 / 77
第3章 キャンプ
「ずっと」*樹
しおりを挟む森田と佐藤と一緒に近くの店までやってきた。
言ってた通り、花火が置いてある。ここらへんのキャンプ場で花火をやりたい人が買いに来れるようにしてくれているらしくて、結構たくさん置いてあった。
「あんまり音がしないほうがいいよな」
森田の声に佐藤も頷いてる。
「もう結構遅いから、そういうのにした方がいいのかな。ここらへんもそういうのだね」
色々見ながら言うと、森田が覗き込んできた。
「音も煙も少なめだって。こんなのあるんだな。いいんじゃねえ?」
「じゃ決まりね」
佐藤も頷いて、その種類をいくつか選ぶ。花火用のろうそくも一緒に買って、車で戻ると、残ったメンバーが外で待っていた。
少し離れた、花火をやって良い場所まで歩いて、用意してあるバケツに水を入れた。
火をつけて、花火が始まる。
皆で写真を撮りあったりしばらく楽しんでから、オレが少し離れて皆の花火を見ていると、蓮が隣にやって来た。
「綺麗だね」
そう言うと、ん、と蓮が笑う。
「樹、ごめんな。一緒に行けなくて」
「ううん。全然」
「佐藤、運転、大丈夫だった?」
「ん。近かったし、車もほとんど通ってなくて。あと、オレ、隣に座ったよ」
クスクス笑うと、そっか、と蓮も笑う。
「……坂井とはさ」
「……うん?」
「ちょっと話しただけ」
「――――……話しただけ??」
「そう」
……話しただけってなんだろう。
……告白とかじゃなかったのかな……。
そう思ったら、蓮がオレを見つめた。
「加瀬くんは好きな人がいるよね、って言われてさ。居るって答えた」
「……そうなんだ」
「それであとは……普通に話してただけ」
「……そっか」
「呼ばれた時は、どう断ったら傷つけないかなとか思ったけど、要らない心配だった」
苦笑いの蓮。
「……ほんとは、告白したかったんだと思うけど」
少し離れたところで、明るく笑ってる坂井が見える。
気まずくならない方を、選んだんだろうな、と思うと。
強いなあ、と、思う。
……告白、したかったと思うのに。
好きな気持ちを出さないって。大変、だよなあ……。
「――――……樹」
「ん?」
「……この先さあ。色んなこと、あると思うけど」
「うん……?」
「ずっと、樹と居たいから……ちゃんと色々話そうな?」
「――――……うん」
まっすぐな蓮の瞳が、すごく綺麗だなぁと思って。
嬉しいけど、なんでだか、きゅんとしすぎて、胸が痛いような気もする。
「……蓮」
「ん?」
「花火、しよっか?」
「ん、そうだな」
ふ、と笑いあって、皆の方に近づく。
皆で、笑いながら、色とりどりの花火を見つめる。
ホントに綺麗で。
「――――……」
蓮と居ると、なんだか色んな事がキラキラして、楽しいなと思う。
蓮と、ずっと。
居れたらいいなって。今更だけどすごく思う。
皆で居て、遊ぶのも話すのも、楽しかったけど。
明日帰ったら、また二人なんだな、と思うと……。
……今度は、恋人として、あの家に、二人きりなんだなと思うと。
なんだか、すごく、ドキドキする。かも。
80
気に入って下さったら、感想など聞かせてくださると嬉しいです♡
お気に入り登録もお願いします(^^) by悠里
お気に入り登録もお願いします(^^) by悠里
お気に入りに追加
640
あなたにおすすめの小説
キスより甘いスパイス
凪玖海くみ
BL
料理教室を営む28歳の独身男性・天宮遥は、穏やかで平凡な日々を過ごしていた。
ある日、大学生の篠原奏多が新しい生徒として教室にやってくる。
彼は遥の高校時代の同級生の弟で、ある程度面識はあるとはいえ、前触れもなく早々に――。
「先生、俺と結婚してください!」
と大胆な告白をする。
奏多の真っ直ぐで無邪気なアプローチに次第に遥は心を揺さぶられて……?
シロツメクサの指輪
川崎葵
BL
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしてくれる?」
男も女も意識したことないぐらいの幼い頃の約束。
大きくなるにつれその約束を忘れ、俺たちは疎遠になった。
しかし、大人になり、ある時偶然再会を果たす。
止まっていた俺たちの時間が動き出した。
【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-
悠里
BL
雨の日の静かな幸せ♡がRainのテーマです。ほっこりしたい時にぜひ♡
本編は完結済み。
この2人のなれそめを書いた番外編を、不定期で続けています(^^)
こちらは、ツンツンした素直じゃない、人間不信な類に、どうやって浩人が近づいていったか。出逢い編です♡
書き始めたら楽しくなってしまい、本編より長くなりそうです(^-^;
こんな高校時代を過ぎたら、Rainみたいになるのね♡と、楽しんで頂けたら。
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-
悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。
「たまに会う」から「気になる」
「気になる」から「好き?」から……。
成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。
楽しんで頂けますように♡
男だけど幼馴染の男と結婚する事になった
小熊井つん
BL
2×××年、同性の友人同士で結婚する『親友婚』が大ブームになった世界の話。 主人公(受け)の“瞬介”は家族の罠に嵌められ、幼馴染のハイスペイケメン“彗”と半ば強制的に結婚させられてしまう。
受けは攻めのことをずっとただの幼馴染だと思っていたが、結婚を機に少しずつ特別な感情を抱くようになっていく。
美形気だるげ系攻め×平凡真面目世話焼き受けのほのぼのBL。
漫画作品もございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる