上 下
70 / 77
第3章 キャンプ

「居ようね」*樹

しおりを挟む

 皆が後から出てきて、服を着て、髪を乾かしてるのを、蓮と二人でマッサージチェアに座って、なんとなく眺める。
 百円で二十分。安いねって言って、蓮と始めた。

「二人して何してんの」
 皆、着替え終わると面白そうに近づいてきて、気持ちいい?と笑う。

「うん。あと五分位かなぁ。やる?」

 聞くと皆が頷くので、オレが椅子から動くと、一緒に蓮も、椅子からどいた。

「強弱とか、場所選べるよ」
 隣のリモコンで教えてあげると、めっちゃ楽しそうに弄り始める。

「んー。でもあれだね。元々そんなに凝ってないから」
「あぁ。よく分かんねえかも」

 オレが言うと、連も頷いて、二人で顔を見合わせて笑ってしまう。

「いつかあれが気持ちいいとか、なるのかなぁ?」

 オレがそう言うと、なるのかもな、と蓮が笑う。


「オレら、先に外行って、飲み物飲んでる」

 蓮が皆にそう言うので、オレも荷物を持って、蓮と大浴場を出た。


 まだ女子も出てきてないし、知らない家族連れが居るだけ。
 飲み物を買って、窓際の椅子に腰かける。

 庭がライトアップされてるのを見て、綺麗だね、と言うと。


「さっきのさぁ」
「ん?」

「マッサージチェアとかが気持ちいいなあとかさ」
「うん」

「そう思うような時も、樹と居たいなーと……言ってて思った」
「……」

 パチパチと、瞬きが増えて。
 それから、どう我慢しても、微笑んでしまう。

「うん。居れたら、いいね――――……ていうか……居ようね」


 一旦言った言葉を、言い換えると。
 蓮はクスクス笑って、頷く。

「居れたらじゃなくて、居るからって言おうと思ってた」

 そんな風に言う連。


 ……大好きなんだけど。
 ほんとに。なんて思っていたら。

 マッサージが終わった皆が出てきた。
 一気に騒がしくなる。

「どうだった?」
「もともと凝ってねーからよくわかんないけど、なんとなく気持ちよかった」

「あ、おんなじこと、樹と言ってた。凝ってからやりたいよな」

 蓮が山田の言葉に笑いながらそう返してる。
 皆が飲み物を買ってから、蓮とオレの椅子のそばに適当にばらける。


「女子まだ?」
 森田が聞いてくるので、うん、たぶん、と答えた時。
 タイミングよく、女子三人が、大浴場の暖簾の下から戻ってきた。


「あー、ごめんね、遅かった?」
「オレらも今さっき座ったとこ」

 そんなやり取りをして、しばらく皆で休憩所でまったり。
 そのうち、そろそろ戻るか、と蓮が言って、その声に、皆が立ち上がり始めた。

 ゆっくりばらばらと歩き始めた時だった。


「加瀬くん」
 
 坂井が、オレの隣に居た蓮を、呼んだ。
 少し緊張してる、みたいな声に。なんとなく悟る。

 オレは、蓮と視線を合わせてから少しだけ頷いて見せてから。
 先に歩き始めて、前にいる皆のところに追いつく。

 蓮はきっとオレに対して、少し気まずそうな顔をしていたけれど。
 ……なんか不思議と――――……そこまで嫌じゃなくて。


 坂井は蓮に告白するって決めたのかな……と、ぼんやり思う。


 多分、これから先も蓮のことを好きな人は、いっぱい居ると思うから、こんなことで、揺らいでもしょうがないと思うんだよね……。

 素敵だもんなー、蓮。
 
 蓮が、告白してくる人より、オレと一緒にいたいなーって、思ってくれるような人で居られたらいいけど。


 ……努力がいりそう?


「樹、少し離れたところでさ、花火やっていいって聞いた?」

 森田がオレを振り返ってそう聞いてくる。


「え、そうなの? 花火あるの?」
「すぐ近くのコンビニに売ってるって。買いに行こうぜ」
「うん、行こう~」
「佐藤、運転頼む」
「えっ。加瀬は?」

 佐藤が焦って蓮を探すと、森田がちょっとだけ振り返って。

「なんか今はあれかなって感じ。とりあえず買い出しだけ。樹、佐藤の隣乗ってやって」
「あ、うん。佐藤、いこ?」

 振り返って、蓮と坂井の様子を見た佐藤も、ん、と頷いてる。


 森田は、さっき、坂井が蓮のとこに来た時居なかったのに。
 鋭いなあ……。

 感心してしまう。


 ……これは。もう。
 既にほぼ、バレてるのかなあ、と思ったりする。









 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

その部屋に残るのは、甘い香りだけ。

ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。 同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。 仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。 一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。

「今日でやめます」

悠里
ライト文芸
ウエブデザイン会社勤務。二十七才。 ある日突然届いた、祖母からのメッセージは。 「もうすぐ死ぬみたい」 ――――幼い頃に過ごした田舎に、戻ることを決めた。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

処理中です...