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第3章 キャンプ
「居ようね」*樹
しおりを挟む皆が後から出てきて、服を着て、髪を乾かしてるのを、蓮と二人でマッサージチェアに座って、なんとなく眺める。
百円で二十分。安いねって言って、蓮と始めた。
「二人して何してんの」
皆、着替え終わると面白そうに近づいてきて、気持ちいい?と笑う。
「うん。あと五分位かなぁ。やる?」
聞くと皆が頷くので、オレが椅子から動くと、一緒に蓮も、椅子からどいた。
「強弱とか、場所選べるよ」
隣のリモコンで教えてあげると、めっちゃ楽しそうに弄り始める。
「んー。でもあれだね。元々そんなに凝ってないから」
「あぁ。よく分かんねえかも」
オレが言うと、連も頷いて、二人で顔を見合わせて笑ってしまう。
「いつかあれが気持ちいいとか、なるのかなぁ?」
オレがそう言うと、なるのかもな、と蓮が笑う。
「オレら、先に外行って、飲み物飲んでる」
蓮が皆にそう言うので、オレも荷物を持って、蓮と大浴場を出た。
まだ女子も出てきてないし、知らない家族連れが居るだけ。
飲み物を買って、窓際の椅子に腰かける。
庭がライトアップされてるのを見て、綺麗だね、と言うと。
「さっきのさぁ」
「ん?」
「マッサージチェアとかが気持ちいいなあとかさ」
「うん」
「そう思うような時も、樹と居たいなーと……言ってて思った」
「……」
パチパチと、瞬きが増えて。
それから、どう我慢しても、微笑んでしまう。
「うん。居れたら、いいね――――……ていうか……居ようね」
一旦言った言葉を、言い換えると。
蓮はクスクス笑って、頷く。
「居れたらじゃなくて、居るからって言おうと思ってた」
そんな風に言う連。
……大好きなんだけど。
ほんとに。なんて思っていたら。
マッサージが終わった皆が出てきた。
一気に騒がしくなる。
「どうだった?」
「もともと凝ってねーからよくわかんないけど、なんとなく気持ちよかった」
「あ、おんなじこと、樹と言ってた。凝ってからやりたいよな」
蓮が山田の言葉に笑いながらそう返してる。
皆が飲み物を買ってから、蓮とオレの椅子のそばに適当にばらける。
「女子まだ?」
森田が聞いてくるので、うん、たぶん、と答えた時。
タイミングよく、女子三人が、大浴場の暖簾の下から戻ってきた。
「あー、ごめんね、遅かった?」
「オレらも今さっき座ったとこ」
そんなやり取りをして、しばらく皆で休憩所でまったり。
そのうち、そろそろ戻るか、と蓮が言って、その声に、皆が立ち上がり始めた。
ゆっくりばらばらと歩き始めた時だった。
「加瀬くん」
坂井が、オレの隣に居た蓮を、呼んだ。
少し緊張してる、みたいな声に。なんとなく悟る。
オレは、蓮と視線を合わせてから少しだけ頷いて見せてから。
先に歩き始めて、前にいる皆のところに追いつく。
蓮はきっとオレに対して、少し気まずそうな顔をしていたけれど。
……なんか不思議と――――……そこまで嫌じゃなくて。
坂井は蓮に告白するって決めたのかな……と、ぼんやり思う。
多分、これから先も蓮のことを好きな人は、いっぱい居ると思うから、こんなことで、揺らいでもしょうがないと思うんだよね……。
素敵だもんなー、蓮。
蓮が、告白してくる人より、オレと一緒にいたいなーって、思ってくれるような人で居られたらいいけど。
……努力がいりそう?
「樹、少し離れたところでさ、花火やっていいって聞いた?」
森田がオレを振り返ってそう聞いてくる。
「え、そうなの? 花火あるの?」
「すぐ近くのコンビニに売ってるって。買いに行こうぜ」
「うん、行こう~」
「佐藤、運転頼む」
「えっ。加瀬は?」
佐藤が焦って蓮を探すと、森田がちょっとだけ振り返って。
「なんか今はあれかなって感じ。とりあえず買い出しだけ。樹、佐藤の隣乗ってやって」
「あ、うん。佐藤、いこ?」
振り返って、蓮と坂井の様子を見た佐藤も、ん、と頷いてる。
森田は、さっき、坂井が蓮のとこに来た時居なかったのに。
鋭いなあ……。
感心してしまう。
……これは。もう。
既にほぼ、バレてるのかなあ、と思ったりする。
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