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第3章 キャンプ
「好きすぎる」*樹
しおりを挟むしばらくクスクス笑いながら。
「気持ちいいねー。汗、すごい出てく感じ……」
そう言うと、蓮がちょっとため息。
「今、汗とか言わないで」
「――――……もー、なんで……恥ずかしいからやめてー」
意識しちゃうし。
思いながら、隣の蓮を見つめると。蓮はオレをちらっと見た。
「……汗も他の奴には見せたくない」
「だから……」
恥ずかしいんだってば。もう……。
汗なんて言葉。 ごくごく普通の。何でもない言葉なのに。
…………なんか今は、良くない。
「……まあそれは冗談にしても……でも、大げさに言うと、それくらいってこと。……樹の乳首とか、見せんのは絶対、嫌」
「――――……っっ」
飛び出してきた単語に、一気にかあっと赤くなる、オレ。
「……っっ蓮ってば! いきなり恥ずかしい事言わないでよっ」
「……だって見せたくないだろ、ちく」
「わー、その単語恥ずかしいからやめて」
「……だって、体の名称じゃんか。他に何て言えば良いんだよ?」
「何て言えばって……なんて…………」
「胸??」
って言われても、もはや今となっては、何言われても全部恥ずかしい。
「もうそれ以上、何も言わないで」
「――――……可愛すぎるから、そんな真っ赤になるなよ」
「……誰のせい……っ」
顔に手を置いて、ただでさえサウナで熱いのに、もう、熱すぎて、ほんとに困るんだけど。と思っていたら。
「あーもう……樹」
「……っ」
蓮は、オレから視線は外したままで。
もう、これ以上何を言うのかと身構えていたら。
「こっから出たら、お風呂つかってね。 ちゃんと肩までつかれよ? で、終わったら、シャワー浴びて出て、速攻着替える事。分かった?」
「…………っっ」
「他の奴に、色々見せちゃダメだからな?」
「――――……っっ」
もう、蓮てば。
「蓮、ラッシュガード、7割くらい、本気……?」
恥ずかしいなあ、と思いながら、ジト目で蓮を見ると。
蓮は、ちら、とオレを見て。
「……だから本気だって」
「もー……蓮……」
苦笑いを浮かべた瞬間。
サウナの出入り口の扉が開いて、皆が入ってきた。
「うっわ、あつ。二人ともよくこんなとこ長居できるな」
山田がそんな風に言いながらオレの隣に座ると。
「もう限界だったから出るとこだったんだよ。いこ、樹」
蓮がそう言った。
本気なのか冗談なのか分からなかったけれど。見せたくない、と言っていた蓮の言葉を思い出して、皆に、じゃあねーと伝えながら、蓮に続いてサウナの外に出る。
蓮の後を歩きながら。ふと、考える。
よく考えたら、オレも蓮もさ。高校ん時は付き合ってて。そういうこと、全然初めてじゃないんだし。
なんかこんな言葉位で真っ赤になってる方が、ほんとはおかしいと思いはするんだけど。
そもそも、胸とか。乳首とか。別に。体の部分の名前だしさ。
別に。……恥ずかしがってるという事の方が、逆に恥ずかしいのかもしれないよね。 って、何でこんなに、恥ずかしいんだろう。ほんと困る。
蓮は、くる、と振り返って。オレの顔をじっと見て。
「蓮?」
「――――……外の露天、人居なそう。行く?」
言われて露天の方を見ると、確かに、ガラスの向こう、人は居ない。
「ん、いいよ」
外に出ると、ちょうど誰も居ない。
バーベキューが長くてお風呂が遅くなったせいか、今日空いてるみたい。
「いいね。すごい、星、見える……」
「――――……ん」
サウナ出たばかりで、お湯に入る気がしなくて、足だけ入れて縁に座る。
並んで上を見上げると。ほんとに空が綺麗で。
「……樹?」
「ん」
「……なんか――――……さっき言ってた事、さ」
「うん」
「……エロい事ばっか気にしてる中学生みたいだなと思って」
「――――……」
「……何言ってんだろ。ほんと」
苦笑いの蓮に、笑ってしまう。
「オレも……恥ずかしがり過ぎだなって、思ってた」
見つめ合って数秒。
「……好きすぎなんだよなー、オレ……」
「……オレもだと思う」
ぼそと呟いた蓮に、静かに呟き返すと。
同じタイミングで、ふ、と笑い合ってしまった。
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