【キスの意味なんて、知らない】

悠里

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第3章 キャンプ

「緊張?」*樹

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 食事を全部片づけてから、皆でお風呂にやってきた。
 蓮は、一応側には居るんだけど……こっちは、見ない。

 なんか、そうされると、余計、意識されてるって言われるみたいで。
 ――――……なんだか。こっちまで、緊張してしまうけど。


 とりあえずお風呂時間だけ、我慢我慢……。


「昨日も思ったけど、樹、細すぎねえ?」
「そんなこと言われても……食べても太らないし。ね、蓮、オレ食べてるよね?」

 森田に返しながら、つい蓮に助けを求めたら。

「食べてるよ。ていうか甘い物とか樹の方が好きだし。体質なんじゃない?」

 助けてはくれるけど。
 蓮はずっとまっすぐ、森田だけを見てる。

 オレはもう、さっさと体を洗い終えてしまおうと思って、手早く洗い出す。

 
 そんなに細いかな、オレ。
 ふと思って。隣に居た佐藤に視線を向ける。

「なー、オレ、そんな細い?」
「んー? ああ。うーん。まあ……ムキムキしてないって感じじゃない?」
「ふーん……」

「あと、なんか、ウエストが細いかなー。綺麗かも」
「……綺麗は、やめてよ」

「なんか女の子みたいだよね、細くて」

 佐藤はまったく悪気も無さそうだし、おかしな意味とか無さそうだし、バカにしてるとかでもないのだけど。

 なんか、逆隣で、オレから視線を背けている蓮が、ぴしっと数秒、固まったような気がする。

 ええ……と。

「――――……オレ、サウナ行ってくる」
「え、もう洗ったのか?」

「うん。いってきまーす」

 オレはすたすたと足を速めて、サウナに逃げ込んだ。
 誰も居ない。良かった。

 端っこに座って、はあ、と息を吐く。


 ――――……男風呂で。
 ……こんな緊張したり。誰かに見られるの困ったりする日が来るとは、思わなかった。

 その時扉が開いて、誰かと思ったら、蓮だった。

「――――……蓮?」
「1人で行くなよ」

「……だって、オレの事見ないって言うから……」
「だめ。 あんま見ないようにはするけど。 サウナで変なおっさんとかと2人きりとかなってないか、心配しただろ」

 むー、と言いながら、オレの少し離れた隣に座る蓮に、ぷ、と笑ってしまう。

「変な心配」
「ダメ。樹、すげー綺麗だし。そういうつもり全くない奴でも、見せたくない」

「……普通だけど、オレ」
「――――……普通じゃないし。可愛いし。綺麗だし」

 誰も居ない個室だと思って。
 蓮は、あれこれいっぱい並べてくる。


「それに、樹、オレのだから。……他の男と2人きりとか無い」
「んー……2人きりじゃなくて、ここにおじさんの大群が居たら?」

「もっとだめだろ。そんな事になったら出て来いよ」
「――――……2人きりでなくてもダメなんだね?」

「……ダメ」


 むー、と蓮がふくれてる。
 ふ、と笑ってしまうと。ちら、とオレを見て。


「――――……ラッシュガード着せたい」
「……っていうか……もう。蓮ってば」

 おかしくて、クスクス笑ってしまう。


「本気で言ってる?」
「……結構本気」

「そうなの?」

 
 聞き返しながらも、可笑しくて。
 

「オレ温泉でそれ着てる人見た事ないけどね……?」
「オレも無い」

「だよね」



 ふふ、と笑ってしまう、結局蓮も笑い出す。






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