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第3章 キャンプ

「ぽかぽか」*樹

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「もう肉とか野菜、食べないなら、お好み焼きにするけど」

 蓮が言うと、皆がお願いしまーすと、口々に言う。
 ふ、と笑って。蓮が余った野菜を手に取った。

「樹、これ、切り刻みに行こ」
「うん」

 一緒に、ログハウスに戻って、キッチンに立つ。
 手を洗って、包丁とまな板を出した蓮が、ふ、とオレを見た。

「みじん切り、やる?」

 言われて、うん、と頷いた。
 手を洗ってから、まな板に置かれる野菜のみじん切りを始めてみる。

 みじん切りって言っても。
 切り方これでいいのかな?

 蓮を見上げると。

「ん?」
 くす、と笑む蓮。

「これでいいの?」
「いいよ、それで。大丈夫」

「切り方も?」
「んー 包丁貸して」
「ん」

「……こう、の方が切りやすいかな」

 蓮がやって見せてくれる。

「分かった」

 包丁を返してもらって、今蓮がやったように、切ってみると。
 確かに切りやすい。

「なんか料理が出来そうに見えない?」
「ん、見える」

 クスクス笑う蓮に、嬉しくなって、とんとん切っていると。

「樹」

 蓮の手が、オレの頬に触れた。
 蓮の方にそっと引き寄せられて、そっとキスされる。


「――――……れん?」
「……ごめん、可愛いから」

「…………」

 一度キスして離れた蓮に、包丁をまな板におしつけたまま。
 背伸びして、ちゅ、とキスすると。


 蓮が、ふ、と笑った。

「包丁一回置いて?」

 言われて、包丁から手を離すと、蓮の方をまっすぐ向かされた。
 真正面で、蓮を見上げる。


「樹、なんでこんな、可愛いんだろ」
「――――……蓮も。可愛いよ?」


「え。オレ可愛い?」
「うん。いつもカッコいいけど。……たまに、死ぬほど、可愛い」


 言いながら、クス、と笑うと。

「オレ、可愛いとか言われるのは樹が初めてだな……」
「カッコいいは死ぬほど言われてきた?」

 きっとそうだろうなーなんて思って、クスクス笑いながら聞いたら。

「カッコいいは良く言われた。女子に」
「だろうね。 カッコイイもんね」

 分かる分かる、とうんうん頷いていると、蓮はふ、と微笑んだ。


「可愛いは、樹だけだな……」

 言った蓮の腕がオレの肩にかかって。
 引き寄せられて、じっと見つめあう。


「樹にとって、オレ、可愛いの?」
「――――……うん。たまに、すごく可愛い」

 可愛い、というか。
 いや、いつもカッコいいんだけど……。


「カッコいいけど…… 可愛いし――――…… あ、愛しい?て感じ?」
「――――……」


 蓮は、きょとん、として。
 それから。
 瞬間、ちょっと赤くなって。


 ふい、とそっぽを向いた。


 わー……。
 ……思わず、出てきた言葉を言っちゃったけど。


 オレより先に、蓮が照れるとか。


 ……可愛すぎる。

 ていうか。
 蓮が照れるとこっちまで、もっと照れちゃうし。


「……調子、狂う」
「――――……ん?」

「樹と居ると、なんか――――……オレの調子が狂う」
「……ん?……それって――――……嫌、なの?」

 すり、と頬に触れられて。


「――――……な訳ないじゃん」

 ゆっくり、キスされる。
 そのまま頬にキスされ、また唇にキスされる。


 ……蓮は。
 …………分かってたけど。

 …………ほんとに、キス魔だな…………。


「蓮……切って、戻らないと」
「ん、分かってる」

 一度、きゅ、と腕の中に抱き締められてから。
 また最後にキスされて、離された。 




 もう。なんか。
 ……自分が全部、ぽかぽかあったかい。





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