【キスの意味なんて、知らない】

悠里

文字の大きさ
上 下
62 / 77
第3章 キャンプ

「ぽかぽか」*樹

しおりを挟む



「もう肉とか野菜、食べないなら、お好み焼きにするけど」

 蓮が言うと、皆がお願いしまーすと、口々に言う。
 ふ、と笑って。蓮が余った野菜を手に取った。

「樹、これ、切り刻みに行こ」
「うん」

 一緒に、ログハウスに戻って、キッチンに立つ。
 手を洗って、包丁とまな板を出した蓮が、ふ、とオレを見た。

「みじん切り、やる?」

 言われて、うん、と頷いた。
 手を洗ってから、まな板に置かれる野菜のみじん切りを始めてみる。

 みじん切りって言っても。
 切り方これでいいのかな?

 蓮を見上げると。

「ん?」
 くす、と笑む蓮。

「これでいいの?」
「いいよ、それで。大丈夫」

「切り方も?」
「んー 包丁貸して」
「ん」

「……こう、の方が切りやすいかな」

 蓮がやって見せてくれる。

「分かった」

 包丁を返してもらって、今蓮がやったように、切ってみると。
 確かに切りやすい。

「なんか料理が出来そうに見えない?」
「ん、見える」

 クスクス笑う蓮に、嬉しくなって、とんとん切っていると。

「樹」

 蓮の手が、オレの頬に触れた。
 蓮の方にそっと引き寄せられて、そっとキスされる。


「――――……れん?」
「……ごめん、可愛いから」

「…………」

 一度キスして離れた蓮に、包丁をまな板におしつけたまま。
 背伸びして、ちゅ、とキスすると。


 蓮が、ふ、と笑った。

「包丁一回置いて?」

 言われて、包丁から手を離すと、蓮の方をまっすぐ向かされた。
 真正面で、蓮を見上げる。


「樹、なんでこんな、可愛いんだろ」
「――――……蓮も。可愛いよ?」


「え。オレ可愛い?」
「うん。いつもカッコいいけど。……たまに、死ぬほど、可愛い」


 言いながら、クス、と笑うと。

「オレ、可愛いとか言われるのは樹が初めてだな……」
「カッコいいは死ぬほど言われてきた?」

 きっとそうだろうなーなんて思って、クスクス笑いながら聞いたら。

「カッコいいは良く言われた。女子に」
「だろうね。 カッコイイもんね」

 分かる分かる、とうんうん頷いていると、蓮はふ、と微笑んだ。


「可愛いは、樹だけだな……」

 言った蓮の腕がオレの肩にかかって。
 引き寄せられて、じっと見つめあう。


「樹にとって、オレ、可愛いの?」
「――――……うん。たまに、すごく可愛い」

 可愛い、というか。
 いや、いつもカッコいいんだけど……。


「カッコいいけど…… 可愛いし――――…… あ、愛しい?て感じ?」
「――――……」


 蓮は、きょとん、として。
 それから。
 瞬間、ちょっと赤くなって。


 ふい、とそっぽを向いた。


 わー……。
 ……思わず、出てきた言葉を言っちゃったけど。


 オレより先に、蓮が照れるとか。


 ……可愛すぎる。

 ていうか。
 蓮が照れるとこっちまで、もっと照れちゃうし。


「……調子、狂う」
「――――……ん?」

「樹と居ると、なんか――――……オレの調子が狂う」
「……ん?……それって――――……嫌、なの?」

 すり、と頬に触れられて。


「――――……な訳ないじゃん」

 ゆっくり、キスされる。
 そのまま頬にキスされ、また唇にキスされる。


 ……蓮は。
 …………分かってたけど。

 …………ほんとに、キス魔だな…………。


「蓮……切って、戻らないと」
「ん、分かってる」

 一度、きゅ、と腕の中に抱き締められてから。
 また最後にキスされて、離された。 




 もう。なんか。
 ……自分が全部、ぽかぽかあったかい。





しおりを挟む
気に入って下さったら、感想など聞かせてくださると嬉しいです♡
お気に入り登録もお願いします(^^) by悠里
感想 34

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-

悠里
BL
雨の日の静かな幸せ♡がRainのテーマです。ほっこりしたい時にぜひ♡ 本編は完結済み。 この2人のなれそめを書いた番外編を、不定期で続けています(^^) こちらは、ツンツンした素直じゃない、人間不信な類に、どうやって浩人が近づいていったか。出逢い編です♡ 書き始めたら楽しくなってしまい、本編より長くなりそうです(^-^; こんな高校時代を過ぎたら、Rainみたいになるのね♡と、楽しんで頂けたら。

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-

悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。 「たまに会う」から「気になる」 「気になる」から「好き?」から……。  成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。  楽しんで頂けますように♡

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

処理中です...