【キスの意味なんて、知らない】

悠里

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第3章 キャンプ

「好き」*樹

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 買い物をしてから、皆で、ログハウスに戻った。
 まだ16時前で微妙な時間だったので、疲れた人は各部屋で休む、17時を過ぎたらぼちぼち準備してバーベキューをしようという事になった。


「樹、その袋ちょうだい」
「うん」

 買ってきた食材を蓮と一緒に冷蔵庫にしまったりしている間に、とりあえず皆、部屋に戻ったみたいで、静かになっていた。

「皆、部屋で寝んのかな?」
「どーだろ。 蓮は眠い? 寝る?」
「オレ別に眠くはねえけど……」

「はい。これで荷物終わり」
「ん、ありがと。――――……樹は眠い?」

「ううん。 眠くないよ。なんかゲームしながら皆を待ってる?」

 疲れてないなら、一階でカードゲーム大会しよう、とかも言ってたもんね。

 振り返りながら、そう言うと。
 蓮が隣に立って、じ、と見下ろしてきた。

「……蓮?」
「……眠くはないけど、部屋行こ?」

「眠くはないけど?――――……あ」
「ん?」

 くす、と笑う、蓮。

「……栄養……?」

 オレがそう言うと、蓮はプ、と笑って。
 それから、ん、と頷いた。

「樹が、嫌じゃなければ」
「……やじゃないよ」

 ――――……オレが、蓮のこと……嫌な訳、ないし。


「じゃ、行こ?」

 蓮に背中をそっと押されて、歩き出した。
 階段を上がって、部屋の前。


「待ってて」
「うん?」

 蓮が、隣の男3人の部屋をこんこんとノックと共に、開けた。


「ちょっとオレら、昼寝するから。起こすなよ?」

 蓮がそんな風に言って、向こうからも、はーいと、眠そうな声。
 その部屋のドアを閉めてから、蓮が、「あいつら、もう寝そうだった」と、クスクス笑った。

 オレと蓮の部屋のドアを開けて、中に入ると。
 蓮が、かち、と鍵を掛けた。

「――――……樹……」

 そっと肩に手が置かれて。
 少し屈んだ蓮に、ゆっくり、キスされる。


「――――……れん……」


 柔らかい、触れるだけの、キス。
 一緒に暮らし出してから、何度も、交わしてきた、キス。


 ……――――……なんか……オレ……。


「……蓮……」

「――――……ん?」


 名を呼んで。
 蓮の腕に手を置いて。少しだけ、蓮を離す。


 見上げるオレを、蓮が、じっと見つめる。


「……ずっとさ」
「……うん?」


「蓮と、こういうキスしてたけど……その時はさ、ずっと、何でするんだろ、て……考えながら、だったから……」
「……ん」

「不思議っていう気分の方が強かったんだよ」
「……うん。それで?」


「――――……でも、今はさ……蓮のことが、好きって……」
「――――……」

 言葉になってない、思うままの言葉を、ゆっくり話しているのを。
 蓮は、じっと、聞いてくれていて。


「……好きって思うからするんだって、思うとさ……」
「――――……」


「……なんか、改めてすっごく、ドキドキ、する」


 言い終わったら。
 蓮は、ふ、とものすごく優しく笑って。


「――――……可愛い、樹……」

 そっと引き寄せられて。
 腕の中に閉じ込められるみたいに、抱き締められてしまった。


「……オレに、ドキドキ、するんだ……?」


 耳元で囁かれる優しい声に、余計ドキドキしてしまう。
 辛うじて、うん、と頷く。



「――――……オレも。 樹に、めちゃくちゃドキドキしてるから」


 ぎゅう、と抱き締められてたら。
 蓮の心臓の音が、伝わってきて。


「……ほんとだ」
「ん?」


「……蓮、すごいドキドキしてる」
「……あ、そこに居ると、聞こえる?」
「うん。……聞こえるっていうか…… 伝わってくる感じ」


 触れてる部分を通して、鼓動が早いのが伝わってくる。


「……なんか、ちょっと恥ずいな……ドキドキが直接伝わるって」


 クスクス笑いながら、蓮がオレを少し、胸から離した。



「なんか今までも、蓮といっぱいキスしてたのに――――……」
「――――……」


「こんな、ドキドキしてさ……」


 じっと、蓮を見つめる。


「――――……オレ、ほんとに、蓮が、好きなんだと思う……」


 もうそれしか言う事が見つからなくて。
 まっすぐ見つめてそう言ったら。

 また、蓮に、むぎゅっと抱き締められた。



「――――……オレも。 好きだよ、樹」


 そう囁かれる。
 頬に触れられて、上向かされて。


 優しいキスが、唇に重なってきた。




 




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