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第3章 キャンプ
「あまいもの」*樹
しおりを挟む全員が出てくるまで、結局2時間弱かかって。
最後に女子3人がそろって出てきた時には、謎の拍手が起こった。
皆疲れてて、駐車場の脇に何軒も並んでいる店で、ソフトクリームを食べようという事になった。
バニラ、チョコ、いちご、抹茶、から始まり、レアチーズ、ぶどう、紫いも、わさび、ラムネ、など色んな味がある。
超迷う。どうしようかなと、密かに超考えてたら、
「樹、どれにするの?」
隣に居た蓮が、ぷ、と笑った。
「超迷ってるだろ」
「うん、チョコが良いんだけど、他のも気になって」
「つか、どれが気になんの、この中で。オレあんま気になんないんだけど」
蓮の言葉に、らしくてクスクス笑ってしまう。
「気になるのはレアチーズとか紫いもかなー。でも抹茶も捨てがたいし。うーん……」
「……あ、そ」
クスクス笑いながら、蓮もメニューを見てる。
「……でも、やっぱりチョコとバニラのmixにしようかな……」
「そういや、夜用にアイス買おうって言ってたな」
「……このソフトクリームと、夜のアイスは別がいいなー」
「あ、夜のも食べんのな。まーいいけど」
蓮は、可笑しそうに笑った。
「蓮はソフトクリーム食べないの?」
「樹の一口頂戴。それでいいや」
「うん。買ってくる」
「ん」
悩んでたら最後になってしまった。誰も並んでないのですぐ買い終えて、皆の所に戻ると。
「樹ー、はじっこ入って」
蓮がスマホを向けてたので、急いで列に入ると、ソフトクリームを持った皆の写真を撮ってくれた。「蓮も入る?」と聞いたら、大丈夫、と笑いながら、撮った写真を皆宛に送信してくれる。
色とりどりのソフトクリームを持った皆の写真。
「はは。楽しそ」
笑ってる蓮に、佐藤が「後で加瀬も一緒に撮ろ」と言ってる。
「ん、蓮、はい」
スプーンにチョコアイスをのせて、蓮に向けると。
ぱく、と蓮が食べる。
「美味しい?」
「……ん。 ……甘い」
「蓮、あまいもの食べる時の最初の感想、いつも美味しいじゃなくて、甘い、だよね……?」
クスクス笑うと、蓮もまた笑う。
「一番に出てくんのが、甘い、なんだよな」
「おいしいとは思ってるの?」
「んー、まあ…… まずい訳じゃないけど…… 甘いな」
「そうなんだ。でもいつも一口食べる気がするけど…… 何でわざわざ?」
「何で?…… んー……」
「うん?」
蓮が少し考えて。
待ってるオレを見て、くす、と笑う。
すぐ近くに誰もいないのを確認してから、蓮は、笑いながら、囁いた。
「……樹がどんなのを美味しいと思うか知りたいから、かも?」
「え」
マジマジ、見つめてしまう。
「そうなの???」
「……あんまり考えてなかったけど、何でって聞かれたら、そうだと思う」
「――――……」
「だってオレ、他の奴の食べてる甘いもん、食った事ないよ」
「――――……」
じっと見つめてた蓮から、ふ、と視線を外す。
何それ。それでいつも、一口だけ食べてるんだ。
……蓮って。
…………なんかほんとに……。
……………言ってくれる事、はずかしいな。
んー、と、返答に困りすぎて何も返せないまま、もう、照れ隠しでぱくぱく食べてると。横で蓮が、クスクス笑ってる。
少し離れた所から、森田がやってきて、オレを見下ろしてくる。
「……? なに、森田??」
「――――……なんか、離れて見てっと、お前らって、イチャついてるようにしか見えねーな」
「……え。なんで?」
「当然みたいに、あーん、もぐもぐ、みたいな?」
「……いつも蓮が一口だけ食べるから……」
しかも理由が超恥ずかしかったけど……。
「だからいつもそんな感じなんだろ? 食べた後も、なんかイチャついてるし」
クスクス笑われ、オレが黙ると。
「つーか、妬くなよ」
蓮がちら、と森田に視線を流して、笑う。
「……お前、なんか、ほんとに、開き直ったろ」
「さあ。何の事かよく分かんねえな……」
良く分からない会話をしてる2人を見上げていると。
蓮はなんか澄ました顔してて、森田はニヤニヤ笑ってる。
「なあ、そもそもなんでお前ら、中で会えた訳? オレら誰とも会えなかったぞ。女子は最終的にやぐらで集合したって言ってたけど」
「たまたまだよ。オレが樹を見つけた。な?」
蓮に問われて頷くと、森田は「お前って、樹見つける探知機でもついてんの?」と言いながら、やだやだ、と笑う。
「なーなー、皆」
アイスを食べ終わって、景色を眺めたり写真撮ったり、好きにしていた皆に、森田が声をかける。皆が丸く集まってきた。
「こっから昼飯いくけど、何がいい? 夜はまたバーベキューで肉だから…… 寿司とか行く?」
「お寿司いいね」
「お寿司賛成ー」
皆、即決だったみたいで。
「さっき来るとき通ったよな、寿司屋」
「通ったね」
「そこで良いか」
あっという間に行先が決まった。
駐車場に歩いてる間に、蓮に、「樹、隣乗る?」と聞かれた。
「あ、うん……と、ちょっと待って?」
「ん」
「佐藤ー、オレ、こっち乗っていい?」
「え゛っ! 樹そっち乗っちゃうの?」
佐藤が慌ててる。どうしようかなと思った瞬間。
「寿司屋まで近いから大丈夫だろ。オレの車について来いよ」
蓮が笑いながら突っ込んでいる。そのやり取りを見ていた森田が蓮の運転する車に近付いてきて。後部座席のドアに手をかけた。
「オレ、加瀬の車に乗るわ。女子と山田、佐藤の車乗ってやって」
有無を言わさない感じで森田が言って、後ろに乗り込む。
3人乗ってドアを閉めて、蓮がエンジンをかける。
「何でお前、こっち?」
「加瀬の運転がうまいのか確認しようと思って」
「何だよそれ」
蓮が苦笑いしながら、後ろの森田をちら、と見て。
それから、佐藤の準備ができたのを見計らって、車を発進させた。
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