49 / 77
第3章 キャンプ
「翌朝」*樹
しおりを挟む「――――……」
鳥の鳴き声に目が覚めた。
すごい、鳥の声、する……。
――――……ぁ、そっか。
キャンプに、来たんだっけ……。
「……目ぇさめた?」
目を開けて、ふ、と息をついたら。
優しい、声が聞こえてきた。
「――――……うん、さめた」
ゆっくり起き上がると、もう着替えていた蓮が、近寄ってきた。
「……昨日のこと、覚えてる?」
「……全部、覚えてるよ」
クスクス笑う。
「――――……樹……」
オレのベッドに腰かけた蓮が、ふ、と笑って、髪の毛に触れてくる。
よしよし、と撫でられたところで、ドアが急にがばっと開いた。
「おっはよー! 起きてるかー!」
山田だった。
ぱ、と手を離して、蓮が振り返る。
「……朝からうるせーな」
蓮の苦笑いを含む一言に、山田は。
「いやいや、なんでお前は横澤のベッドの上にいるんだよー」
意味不明な事を言ってる。
「人聞きの悪い…… 樹を起こしてた所だよ」
蓮が言いながら立ち上がって、荷物からタオルを取り出した。
「樹、顔洗いにいこ」
「うん」
蓮に言われて、オレも立ちあがった。
「山田、皆もう起きてんの?」
「佐藤と森田は今起こした。 女子部屋はノックしたら起きてたけど、準備中だって」
「了解……朝食、あの入浴施設のレストランって言ってたよな」
「そうだって。8時からだって。あと30分」
「分かった。つかお前も準備してこいよ」
「へーい。つか、加瀬だけだな、ほとんど準備できてんの」
笑いながら、山田が出ていった。
「樹、着替える?」
「……うん」
昨日用意していた服をベッドの上に一度置いて、着ていたシャツを脱いで、着替える。
「――――……蓮、何時に起きたの?」
「6時位かな」
「いつも早いなー……」
「……高校ん時の朝練の癖、抜けないんだよなー……」
高校の頃は。すごく派手な感じで、遊んでそうに見えたんだけど。
――――……まじめに部活やってたんだなあって、蓮と話すようになって知った。そういう所も。やっぱり、すごい好き、だなあ、なんて思ったりして。
ぼんやり思いながら、着替え終わって、タオルを手にしたところで。
「――――……いつき」
「ん?」
くい、と引かれて。
ドアに、軽く押し付けられた。
向こうから開けようとしても、2人の体重で、とりあえず開かない。
ぎゅ、と抱き締められて。頬にキスされた。
「おはよ、樹」
「……おはよ、蓮……」
クスクス笑って、すり、と額をすり合わせてくる蓮。
くすぐったい気分で、ほんわか、幸せな気がして笑うと、もう一度、頬にキスされた。
「いこ、樹」
蓮がドアを開けてくれたので、先に廊下に出る。
「お。樹ー。おはよー」
ちょうど隣の部屋から、森田が出てきた所だった。
「山田が、お前が加瀬に襲われてたって言ってた」
「……意味わかんない」
「ほんと、意味わかんねーな……」
後ろから出てきた蓮が、樹の後ろに立って、森田に突っ込む。
突っ込みながらも蓮が笑ってたので、森田はべ、と舌を出した。
「……加瀬が樹を可愛がり過ぎだからだろ」
「しょーがねーじゃん。可愛いし。つかお前も可愛がってるよな?」
「――――……なんか、開き直った?」
クスクス笑って、森田が蓮を面白そうに見てる。
「別に。 顔洗いにいこーぜ」
「おー」
洗面台に皆で行く。ひとつしかないので、順番に。蓮に背を押されて、オレが一番先に顔を洗うことになった。その後ろで、蓮と森田が話してる。
「森田、今日何するんだっけ」
「あー、巨大迷路いかねえ?」
「巨大迷路?」
「うん。楽しそうじゃねえ?」
「女子とかにも聞いてみよ。まあでも 面白そうだな」
「うん」
蓮と森田の会話に、頷きながら、歯ブラシをくわえた。
後ろに下がると、次、森田が洗面台。
「――――……」
蓮と――――…… 恋人……か。
――――……恋人。
めちゃくちゃ、キス――――……しちゃったなあ……。
歯を磨きながら、昨日の事、ぽーーーー、と思い出していると。
「……よな、樹?」
蓮に振り返られて、驚く。
「……あ。ごめん、聞いて、なかった」
「なに、ぼーとしてンの?」
ふ、と優しく、蓮の目が緩む。
「午前中迷路行って、時間余ったらまたどっか寄って昼食って、午後は買い物いって……そんなんでいいよな?って言ってた」
「あ、うん。いいんじゃない?」
「樹は、どっかいきたい所、ある?」
「んー……あ。昨日のお風呂でたとこに、いっぱいパンフレット置いてあったから後で見てみる?」
「ん、見てみよ」
森田が同じように歯ブラシをくわえてオレの横に並んで、今度は、蓮が顔を洗い始める。
「樹は、迷路好き?」
森田に聞かれて。
「巨大迷路、テレビで見た事しかない……」
「やった事ない?」
「うん。ずっと出られなかったらやだなー」
「……トイレ用の緊急避難口とかあるから」
「え、そんなの使っては出たくない……」
「いざとなったらってことだって」
森田は、おかしそうに笑う。
88
お気に入りに追加
623
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-
悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。
「たまに会う」から「気になる」
「気になる」から「好き?」から……。
成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。
楽しんで頂けますように♡
【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-
悠里
BL
雨の日の静かな幸せ♡がRainのテーマです。ほっこりしたい時にぜひ♡
本編は完結済み。
この2人のなれそめを書いた番外編を、不定期で続けています(^^)
こちらは、ツンツンした素直じゃない、人間不信な類に、どうやって浩人が近づいていったか。出逢い編です♡
書き始めたら楽しくなってしまい、本編より長くなりそうです(^-^;
こんな高校時代を過ぎたら、Rainみたいになるのね♡と、楽しんで頂けたら。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-
悠里
BL
「LIKEとLOVEの違い、分かる?」
「オレがお前のこと、好きなのは、LOVEの方だよ」
告白されて。答えが出るまで何年でも待つと言われて。
4か月ずーっと、ふわふわ考え中…。
その快斗が、夏休みにすこしだけ帰ってくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる