【キスの意味なんて、知らない】

悠里

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第3章 キャンプ

「告白」*樹

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「……っ……」

 ――――……めちゃくちゃしていい?とは、聞かれたけど。

 蓮のキスは、最初は、ただ触れるだけのキスだった。

 いつもより、すこし深く、重なるだけ。
 抱き締められて触れられている手が、すごく、熱くて。


「――――……っ……」

 優しいキスだけど、それでも何だか、息が熱くなる。
 蓮と、触れ合ってると――――……好きすぎて。

「……蓮……」

 少し離れて、蓮を見上げる。視線が絡んだ瞬間。
 蓮が、少しきつそうに、眉を寄せた。

「……樹」

 すぐにまた重なって――――…… 舌が、そっと、オレの唇に触れた。
 無意識に、びく、と一瞬震えたけれど。

 そっと、唇を開くと、蓮の舌が、中に入ってきた。


「……っ……」

 入ってきたその舌に、オレから触れると、ゆっくり絡め取られた。
 ぞく、とした感覚が、背筋を走る。

「……っ……ン……」

 声が、漏れる。指が震えて心許なくて、蓮の服を、ぎゅと掴む。

 いつもの触れるだけのキスじゃなくて。

 上向かされて受け止めるキスは、深くて、熱くて。
 そのキスを、ただ、受ける。

 
「……ん、う……っ」

 息が、ちゃんと、出来ない。

「……れ ん……」
 
 名を呼んだら、後頭部に回った手に、ぐいっと引き寄せられて、また深く重なる。

「……樹――――……」
「――――……ン……」

 唇の間で囁かれて、またキスされて。
 背中に回した手で、蓮にしがみつく。

「――――……ん、んん……っ」

 息もできないキスに翻弄されて、頭がぼうっとして。
 ただ、蓮のことだけ、感じていたら、不意に、離された。

「……樹」

 名を呼ばれて、頬に手が触れる。
 ゆっくり目を開けて、蓮を見つめ返した。

 知らず、滲んでた涙を、ぐい、と拭われた。

「オレと――――……恋人になって?」
「――――……」



「……オレ、樹が好きだ」
「――――……」


「……友達としてじゃない。樹――――……オレと、恋人として、付き合って。 それで、この先、ずっと、オレと居て」


 すごい勢いでキスされて、やっと離されたと思ったら、そんな風に。
 まっすぐな言葉と、まっすぐな瞳。 



 ……もう――――……なんだかな……。
 カッコいい、な。ほんとに。



「――――……ダメか?」


 答えられないでいると、急に勢いを失って、そんな風に言った蓮に。
 ――――……オレは、ふ、と笑ってしまった。


 この表情は、可愛いな……。


 ……胸が、きゅ、と締め付けられる感覚に襲われて。

 ふっと涙が滲んだ。



「……オレも……蓮のことが、大好きだから……」

 まっすぐに、蓮のことを見つめる。


「……恋人に――――……して……ほしい……」


 言った瞬間。
 抱きすくめられた。


 動けないくらい、強く。



「ほんとに?」
「……うん」


「――――……ほんとに、恋人で、いいの?」
「……蓮こそ……いいの?」


「オレは良いに決まってる。樹がいい」
「……オレも、蓮がいい」


 言った瞬間。


「……やった」


 蓮がそう呟くように言って、かと思ったら、ふわ、と抱き上げられた。



「う、わ……」

 びっくりして、少し下にある蓮の顔を見下ろした。

 嬉しそうな、笑顔。


「――――……樹……」
「……れん……」

 つられて、笑顔になってしまう。


「――――……樹、大好き」

 抱き上げたオレを見上げて、笑顔でそんな風に言う蓮が、愛しくてたまらなくなって。


 その両頬を両手で挟んで。
 そっと、唇を、重ねた。



「――――……」

 少しの間触れて、そっと離したら。
 同時にゆっくり目を開けた蓮と、間近で視線が絡んだ。


「……樹――――……」


 ふわ、と蓮が笑う。

 抱き上げられたまま、蓮が移動して。
 そのまま、ベッドに座らされた。


「――――……」

 見下ろされて、頬に触れられて。
 すこし緊張する。



「――――……樹」
「……うん」

「……緊張しないで」

 ぶに、と頬をつままれる。


「皆が居るとこでこれ以上しない」

 囁かれて、頬に、ちゅ、とキスされた。
 かあっと赤くなると。むぎゅ、と抱き締められる。


「……鍵しめてんのも怪しいしなー……」
「……うん」

 クスクス笑うと、蓮はそーっと頬に触れて、ゆっくり、キスしてきた。


「……樹、大好き」
「――――……オレも……大好き」


 んーー、と唇を押し付けてキスしてから、蓮は唇を離した。
 膝をついた姿勢で、ベッドに座ってるオレを、ぎゅ、と抱き締めた。


「……これで、我慢する」
「……ん」

 ふ、と笑ってしまう。
 今の蓮、なんか、子供、みたい。

 思わず、少し下にある、蓮の頭をナデナデしてみたら。
 蓮は、ん……と言葉に詰まってる。

 ちょっとおかしい。さっきまで、あんなキス、してきたくせに。
 今、こんなに可愛いのって。


「――――……蓮……」

 髪の毛を、するすると、撫でてみる。


「――――……樹?」
「――――……」


 蓮の、全部。 オレのに、したいなあ……。
 なんて、不意に、思ってしまって。


 ちゅ、と頬にキスしてみたら。
 撫でてた手を取られてしまった。


「……オレ、すごい我慢してるんだけど、分かって……ないだろ」
「え…… っ……っん!」

 引き寄せられて、いきなり深い、キス。
 遠慮がない、舌に、あっという間に、翻弄される。


「…… ん……っ」

 蓮がまた、めちゃくちゃ男っぽくなってしまった。


 ……すっごく可愛かったのに……。


 ちょっと焦りながら。
 蓮のキスが離れるまで、必死で、受け止める。


 ゆっくり唇が離れたので、目を開けたら、蓮が、クスクス笑ってて。


「キスされてる樹、可愛いな……」
「……っ」

「……もっと、したいけど ……今は、ほんとにおしまい」
「――――……」

「……おさまんなくなりそうだから」

 ふ、と笑った蓮に、もう一度、ぎゅ、と抱き締められた。


「……鍵、開けてくる。電気も消す?」
「うん」

 立ち上がった蓮に頷いて。
 ベッドの真ん中に座り直した。

 電気を消して戻ってきた蓮が、オレの頭に触れて、暗い中で、じー、と見つめてくる。

「――――……ずっと、オレと一緒にいてくれる?」
「……うん」

 もう。
 ――――……ドキドキがすごい。


「――――……だめだオレ」
「え?」

「触ってるとヤバい。ベッド入る」

「……蓮……」

 思わず苦笑い。
 蓮が、隣のベッドにごろん、と寝転がったので、オレも同じように、横になった。

 少し、沈黙。
 何か話そうかな――――……でも何、話そう……。
 そんな風に、思っていたら。蓮が言った。

「――――……まだ眠くないなら、話そうか、樹……」
「……うん。いいよ。何を?」

「――――……そーだなー…… 樹が好きな動物は?」

 その質問に、クスクス笑ってしまう。


「何それ。 今聞きたい?」
「うん。聞きたい」

「……犬かな」
「へえ。オレも犬、好き。いつか飼おっか」

「――――……うん。いいよ」

 いつか。
 蓮と、可愛い犬と、暮らせたりするのかなあ。
 ……ずっと、続くのかなあ。

 そうだと、いいな。


「ほかは? 動物。何がすき?」
「――――……んー…… 動物……トラ?」

「はは。トラ?」
「うん。カッコいいじゃん?」

「他は?」

「えー…… ペンギン……かなあ」
「今度は可愛いのきた」

 蓮、可笑しそうに笑ってる。

「……じゃあ動物園と水族館いこーな」
「……うん、そだね」

 ふ、と微笑んでしまう。


「好きなスポーツは?」
「んー? スポーツー? あんま得意じゃないけど……」

「じゃあさ、今度一緒にジョギングしようぜ?」
「……走れるかな」

「最初はちょっとからでいいから」
「――――……ん、いーよ。蓮、一緒なら」

「ずっと一緒にいるし。歩くとこからでもいいよ」
「ん、分かった」


 蓮と、これから、何をするかっていう話。
 ――――……一緒に。


 ――――……恋人、か。

 男同士、だから、これから色々あるのかな。
 ――――……どうなんだろ、あるのかな。


 蓮といた、今までの時間が続くなら……無い気がするけど。
 それくらい、穏やかな時間が、好きだけど。

「――――……樹……」
「……ん?」

「……ありがと」

 何が?と聞きかけて――――……。
 なんとなく、全部にかな、と思って。


「――――……こちらこそ……」

 そう返したら、蓮がクッと笑いだした。


 お互い、クスクス笑いあって。
 ――――……眠くなるまで、他愛もない話を、続けた。








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