【キスの意味なんて、知らない】

悠里

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第3章 キャンプ

「自覚」*樹

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 ……意識する。

 ――――…… 意識するって。蓮は、言ったけど。
 どういう意味なんだろ。


 ――――……オレが、意識、しないようにって言ったのは。
 ……なんか、蓮を見てると、ドキドキしちゃうから。

 他の皆の裸には一切ときめいたりしないのに。

 ――――……ドキドキしちゃいけない、と思って、
 意識しない事を必死で自分に言い聞かせてたのに。


 男の裸見て、ときめくなんて、そんな事、人生で起きるなんて、思ったこともなかった……。

 オレ、もう、これって……蓮の事……好きすぎなんだよね、オレ。

 ……好きなのは、自分でも、分かってたけど。

 蓮を好きな坂井の事、どうして心から応援してあげようって、思えなかったか。ずっとモヤモヤ憂鬱だった理由も……思い知ってしまった。



 入浴施設を出て、皆でログハウスに戻る。
 先を歩く、蓮の隣には、女子3人が並んでる。
 ……というか、たぶん坂井を並ばせるために、2人がついていってあげてる感じ、なのかなあ。


 ――――……やっぱり、胸のあたりが、モヤモヤする。


 あーなんか……。
 まさか、蓮の事を好きな女子に、やきもち妬くような事になるとは……。

 ……うーん……。
 オレほんとにこれでいいのかなあ……。


 はー、とため息をつきながら、何気なく空を見上げたら。
 星が、すごく綺麗で、一瞬見惚れた。


 星、すごいな――――……。

 足を止めて、空を見上げてると、後ろから歩いてきてた森田が、オレの隣で止まった。


「どした?」
「星が超キレイ」
「……ほんとだ」


 なんか、モヤモヤした心が、キレイに、洗われる気がする。

 森田は少しの間、同じように空を見上げていたけれど、ふっと視線を樹に向けて、笑った。


「超キラキラした顔して……ガキんちょか」

 クスクス笑われてムッとして森田を睨む。


「――――……森田ってさ」
「ん?」

「彼女、どんな子?」
「はは、何それ、急に」

「なんか聞きたくなっただけ。言いたくないならいいよ」

 森田からまた星空へ、視線を戻しながら、ゆっくり歩きだす。
 隣に並んで歩きながら、森田はそうだなー、と少し考えてる。

「んー……優しい子」
「……へえ」

「いつも横で笑ってくれる子」
「……意外……」

「……んだと」

 む、と目を座らせた森田に可笑しくなって、嘘だよ、と笑う。

「いいね。仲良さそう」
「んー。今はなー」
「ん?」
「大学が離れてまだそんな経ってねえからまだうまくいってるけど……」
「……ん」
「このままずっといけるのかなー……とは思うかも」
「……そうなんだ」

 難しいんだなー。
 ……恋愛って。

「まあ。いまんとこは全然平気だけどな」

 笑う森田に、うん、と頷く。


「樹は?」
「ん?」

「好きな子、居る?」
「――――……」

 ……何か森田に下手に答えるのは避けた方が良い気がして。
 一瞬、答えられず止まる。

「……考え中……かな」
「――――……何を? 好きかどうかを?」
「……かなあ。色々……」

「ふーん……まあ――――……そんなの、考えなくても、分かるって」
「……?」

「好きかどうかなんて、一緒にいる時、すぐ分かるだろ」
「――――……」

 思わず、じー、と森田を見つめてしまう。

「……なに?」
「――――……森田と話してると、なんか不思議……」
「不思議?」

「……なんか、悟り開いてる?」
「開いてねーし」

 ぷっと笑いながら、森田は、あほか、と突っ込んでくる。


「さとりは開いてねーけど――――……オレ思うんだけど」
「……?」

「一緒に居て好きだって思っちまうなら、どうしようもないよな」
「――……」


 森田って――――……。
 それ、誰のことだと思って、いってるんだろ。


 なんか、バレてそうな気もしてしまう。
 ――――……バレても、森田なら平気かなあと、思わなくもない。


「あれ? 加瀬?」

 森田の声に、視線を前に向けると。
 そこに、先に歩いてた蓮が、立ち止まって待ってた。


「星、見てる?」

 蓮がそう言って空を指さした。


「すっげえキレイじゃねえ?」

 星を見上げて笑ってる蓮に、オレがうん、と笑うと。
 森田がまた可笑しそうに笑った。


「――――……さっきの樹に負けず、がきんちょみてえ……」


 ぼそ、と呟く。
 オレにしか聞こえないような声で。

 森田をふっと見上げると、「な?」とクスクス笑うので、ん、と頷いてみせる。


 ……確かに、蓮、可愛い顔して空見上げてるかも。
 そんなことを思いながら、蓮に向かって歩いていくと。


「あ。そうだ。 なあ、寝る部屋なんだけどさ」

 急に森田が話題を変える。

「お前らほんとに一緒じゃなくていいの?」

 その問いに、何て答えたら良いか、一瞬考えていたら、また森田が続ける。

「……樹って、慣れてる奴と寝た方がよさそうなタイプな気がすんだけど」
「――――……」

 森田って、一緒にしたいって言ってもおかしくないように、そう言ってくれてる?のかな。と思うと、ますます答えにくい。


「そんな事ないなら、いいんだけどさ?」

 そう言った森田に、蓮が、一言。

「――――……やっぱ一緒にしてもらう?」

 蓮がそう言って、オレをまっすぐ見つめてくる。


「樹、どーする?」

 森田に聞かれ、視線を森田に移して。
 

「……皆がいいなら、その方がいいかな……」

 何だかドキドキしながらそう言ったら、すぐに、森田が頷いてくれた。

「いいよ。別に寝るだけだし、佐藤達も大丈夫だろ」
「……ありがと」

 そう森田に言うと、全然いーよ、と笑う。

 どこまで分かってんだか、分からないけど。
 ――――……なんか全部バレても平気そう、なんて、また思ってしまう。


 3人で星を見ながら、色々ゆっくり話しながら、のんびり歩いてログハウスに戻ると。


「お前らおそーい!」

 先に行った皆が、ログハウスの前のテーブルで笑ってる。
 蓮が、買ってきてたお菓子やつまみを出してくると、皆大喜び。
 
「もう22時だから声のトーン落とせ―」

 なんて、森田に注意されて。
 結局、ログハウスの中に入り、皆でテーブルを囲んで、あれやこれやと歓談タイムが始まった。



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