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第3章 キャンプ
「衝動」*蓮
しおりを挟む露天から大浴場に移り、 先を歩いてく樹の隣に並んだ。
「蓮……?」
さっき離れるって言ったのに、と思ってるんだろうな。
もう、素直に、謝ることにした。
「……ごめん、樹」
「……?」
「離れよとか言って」
「……大丈夫」
樹が、ふ、と笑ってる気配。
「露天、行かなくていい?」
「うん、明日行く」
……てことは、露天風呂、行きたかったってことだよな。
「――――……ごめんな」
「こっちのお風呂は入ったし、全然いい。……ていうか……オレ……蓮に言われたからってよりも……」
「?」
「……オレも…… 意識、しないようにしてたのに――――……」
「え?」
「蓮が、あんなこと言うから……」
「――――……」
「どうしても、意識、しちゃうから……オレも、ちょっと離れたくて、離れたんだよ……蓮のせいじゃないから」
――――……そんな風に、言った樹に。
途端に鼓動が跳ね上がる。
意識しちゃうって。
――――……それって……お前も、オレを意識するって、こと?
「――――……」
――――……このまま、抱き締めて、キスして、触れたい。
……突然の、激しい衝動に、自分で、焦る。
「……あー何言ってんだろ、オレ……ごめん、分かんなくなってきた……。シャワー浴びるね」
樹がオレから離れて、シャワーを浴び始める。
平静を精一杯装って、1つ離れた席で蓮もシャワーを出した。
……オレの、好きって。
――――……友達を好きなのとは……完全に、違う、んだな。
……ヤバすぎる。
「先、行ってるね」
手早く浴び終えて、樹が脱衣所に姿を消した。
――――……水にして、頭を冷やしてから、大浴場を出た。
脱衣所を見回すと、樹の他には、ドライヤーを使ってる人が1人だけ。
もう服を着終えている樹の隣に立った。
「……樹」
「――……うん?」
オレを見上げてくる、樹を、じっと見つめる。
「あとで、話したい」
「――――……うん、話そ」
ふ、と笑う樹。
「なんか……ゆっくり話したほうが、いいよね……オレ達。ここに来てから、変に離れたり、話してるの途中になったり……」
「……どっかで二人になろ。……声かける」
「ん。分かった」
その後は、なんとなく、無言。
他の皆が出てくる前にすっかり服を着終える。
……髪――――……いつもみたいに、乾かしてやりたいけど……
何言われるかわかんねーし、やめとくか……。
仕方なく、1人、鏡の前に座って、ドライヤーの電源を入れる。
樹が歩いてきて、オレの隣の鏡の前に座る。
「――――……」
樹が、じー、と、ドライヤーを見て。
ぷ、と笑う。
「今日明日は、ちゃんとやろーと」
きっとオレにしか意味が分からないように言ったんだろうと分かって。
思わず、ふ、と笑ってしまう。
「明後日は、オレするから」
「――――……うん」
樹もまた、ふ、と、笑って頷いてる。
「――――……」
黒いTシャツを着てると、肌白いのが際立つ。
首筋、綺麗。
――――……まだ引かない、頬の赤さが、色っぽ……。
……だめだ、これ以上、考えんな。
樹が、隣でドライヤーの電源を入れて、髪をパサパサと手で散らしながら、乾かしてる。
乾くにつれてふわふわ柔らかくなっていく、いつもの感触が浮かんで。
すごく触りたいのだけれど。
――――……諦めた。
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