41 / 77
第3章 キャンプ
「意識」*蓮
しおりを挟むあんな個室に、樹1人で行かせられないし。
――――……て、男風呂のサウナなのに、思考がそもそもおかしい。
それは、分かっている。
樹はそもそも男だから、こんな男だけの風呂場で、何も心配する事なんか、ないのだけれど――――……。
なるべく樹の方は見ずに一緒にサウナに入ると、中には誰も居なくて、正真正銘の2人きり。
樹が真ん中に座ったので、その隣に、座る。
「……きもちいー。……汗、すごい出てくる」
「――――……意外。なんか樹、サウナ苦手そうなのに」
「え、そう?」
「のぼせて倒れそう」
「何それ、どんなイメージ」
あはは、と樹が笑ってる。
「倒れた事ないよ。サウナ大好き」
「そっか」
汗がぽたぽた落ちてくる。
確かに、気持ちいい。
「蓮」
「……んー?」
目の前の壁にかかってる温度計を見たまま、返事をする。
「……蓮?」
「うん?」
「れーん?」
「?」
3回目、呼ばれて、何かと思って樹を見ると。
困ったような顔をしていた樹が、オレと目が合った瞬間。
「やっと顔みた」
そう言った。
「――――……え?」
ふわ、と樹が笑う。
「だってさっきから、なんかずーっと、そっぽ向いたまま話すから……」
「――――……」
「蓮っていつもさ、すごいまっすぐオレの顔見ながら話すから」
「――――……」
「全然見ないとさ、気になる」
「……気になってた?」
「うん。だって、ずっと、そっぽ向いてたから」
「――――ごめん」
言うと、樹はびっくりたみたいな顔で、え、と笑う。
「謝るようなことじゃないから……てか、ごめん、オレが勝手に気にしてただけ……」
苦笑いで、逆に謝ってくる樹に。
樹の前だと何でも話してしまいたくなる自分。
――――……変に、ごまかすのは、やめにした。
「……オレが、意識、してるから――――……見れない、みたい」
「……意識……」
きょとん、として、繰り返してる樹。
「――――……オレ、どーしても、樹が好きみたい」
「――――……」
好き、なのは、樹も絶対知ってる。
――――……このタイミングで何でそれを言うのかを考えているのだろう、すごく不思議そうな、表情。
「――――……意識しちまいそうだから、あんまり、裸、見れない」
そう言って樹を見ていると。
多分、樹は、その意味を考えて。
数秒後。かあっと、赤くなった。
「……っ何、言って……」
――――……だから、なんで、そこでそんな顔、するんだ……。
さっき森田に言ってたみたいに、怒ってもいいのに。
……怒ってくれたら、いいのに。
抱きしめてしまいたく、なってしまう。
「……樹、悪い。服着るまで、離れる」
「――――……」
「いい?」
「……うん」
樹がかろうじて頷いたのを確認してから、オレは立ち上がった。
サウナの扉を開けたところで、佐藤達三人がやってきた。
「あれ、加瀬は脱出?」
「ああ。……もう無理」
「はは。樹は? ――――……って、樹も真っ赤じゃん、大丈夫ー?」
3人、サウナに入っていき、中に入った佐藤の声を最後に、扉が閉じた。
出た所にある、冷水を、手桶で足からかけていく。
――――……オレ、何言ってんだ……。
……つか、オレ――――……やっぱり、そう、なのかな……。
……好きすぎるとは思ってたけど――――……分かってたけど。
――――……裸が見れないって……。
つか、他の奴ら見ても、何にも感じない……というか、むしろそれは見たくもないし。
……樹限定で、男も対象なのか。
はー……。
――――……裸で、汗かいて、上気してる顔。
なるべく、顔だけ、見ていたんだけれど――――……。
煩悩を振り払おうと、水をめちゃくちゃかけた。
その後、1人、露天でぼーと浸かり、空を見上げる。
――――……見れないとか言ってないで、見ちまえば、いいのか?
男って、思い切り確認できれば、冷めるか……?
「――――……」
……冷める気がしなくて、試す気がしない。
上を向いて、目を閉じる。
大浴場から露天につながる扉が開いて、皆が入ってきたのが、騒がしい声で分かる。
「加瀬、寝てんのー?」
佐藤の声がすぐ近くに近付いてきた。
目を開けて、「起きてる」と答えてると。
「あ、オレ――――……ちょっとのぼせたから、シャワー浴びて出るね」
樹の声がして、山田が、おう、と答えてる。
入ってこずに、樹が出て行ってしまった。
……あー……オレのせいだな……。
「――――……オレももう出る」
急いで上がって、露天風呂を後にした。
81
気に入って下さったら、感想など聞かせてくださると嬉しいです♡
お気に入り登録もお願いします(^^) by悠里
お気に入り登録もお願いします(^^) by悠里
お気に入りに追加
640
あなたにおすすめの小説
【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-
悠里
BL
雨の日の静かな幸せ♡がRainのテーマです。ほっこりしたい時にぜひ♡
本編は完結済み。
この2人のなれそめを書いた番外編を、不定期で続けています(^^)
こちらは、ツンツンした素直じゃない、人間不信な類に、どうやって浩人が近づいていったか。出逢い編です♡
書き始めたら楽しくなってしまい、本編より長くなりそうです(^-^;
こんな高校時代を過ぎたら、Rainみたいになるのね♡と、楽しんで頂けたら。
今日も、俺の彼氏がかっこいい。
春音優月
BL
中野良典《なかのよしのり》は、可もなく不可もない、どこにでもいる普通の男子高校生。特技もないし、部活もやってないし、夢中になれるものも特にない。
そんな自分と退屈な日常を変えたくて、良典はカースト上位で学年で一番の美人に告白することを決意する。
しかし、良典は告白する相手を間違えてしまい、これまたカースト上位でクラスの人気者のさわやかイケメンに告白してしまう。
あっさりフラれるかと思いきや、告白をOKされてしまって……。良典も今さら間違えて告白したとは言い出しづらくなり、そのまま付き合うことに。
どうやって別れようか悩んでいた良典だけど、彼氏(?)の圧倒的顔の良さとさわやかさと性格の良さにきゅんとする毎日。男同士だけど、楽しいし幸せだしあいつのこと大好きだし、まあいっか……なちょろくてゆるい感じで付き合っているうちに、どんどん相手のことが大好きになっていく。
間違いから始まった二人のほのぼの平和な胸キュンお付き合いライフ。
2021.07.15〜2021.07.16
有馬先輩
須藤慎弥
BL
『──動物界において同性愛行為ってのは珍しいことじゃないんだぜ』
《あらすじ》
ツヤサラな黒髪だけが取り柄の俺、田中琉兎(たなかると)は平凡地味な新卒サラリーマン。
医療機器メーカーに就職が決まり、やっと研修が終わって気ままな外回りが始まると喜んでいたら、なんと二年先輩の有馬結弦(ありまゆづる)とペアで行動する事に!
有馬先輩は爽やかで優しげなイメージとはかけ離れたお喋りな性格のせいで、社内で若干浮いている。
何を語るのかと言えば、大好きな生き物の知識。
一年以上、ほぼ毎日同じ時を過ごして鬱陶しいはずなのに、彼を憎めない。
そんな得な才能を持つ有馬先輩に、俺はとうとうとんでもない提案をしてしまう。
※2022年fujossy様にて行われました
「5分で感じる『初恋』BL」コンテスト出品作
【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-
悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。
「たまに会う」から「気になる」
「気になる」から「好き?」から……。
成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。
楽しんで頂けますように♡
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
BLドラマの主演同士で写真を上げたら匂わせ判定されたけど、断じて俺たちは付き合ってない!
京香
BL
ダンサー×子役上がり俳優
初めてBLドラマに出演することになり張り切っている上渡梨央。ダブル主演の初演技挑戦な三吉修斗とも仲良くなりたいけど、何やら冷たい対応。
そんな中、主演同士で撮った写真や三吉の自宅でのオフショットが匂わせだとファンの間で持ち切りに。
さらに梨央が幼い頃に会った少女だという相馬も現れて──。
しゅうりおがトレンドに上がる平和な世界のハッピー現代BLです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる