40 / 77
第3章 キャンプ
「オレ、やばくないか?」*蓮
しおりを挟む樹に謝って、仲直りが出来て。
……まあ別に喧嘩してた訳じゃないんだけど。
やっと、樹が、ほわほわした顔で笑ってくれて。
一安心。
焼きそばの後、皆で片付けをして、入浴施設まで、歩いた。
歩いているその間に突然、ふっと、気づいてしまった。
――――……樹と、風呂に入るって、初めてかも。
高校の時、プールあったけど、一緒になった記憶もないし。
……裸。
見るのって、初めてじゃねーか……?
突然意識してしまったら、なんだか動揺。
大浴場の前で、男子と女子に別れる。
「出たらそっちの休憩所で待ち合せなー」
「はーい、じゃーねー」
山田の声に女子が答えてるのを聞きながら、「男湯」と書かれた暖簾をくぐって、中に入る。
やばい。
……緊張してきた。
少し、樹と離れた所のかごに、持っていた袋を置いた。
意識しない。意識しない。
あんまり見ないで済まそう。
「樹、腰、細すぎ」
「――――……うるさいなあ」
山田の声に、樹が嫌そうに言ってるのが後ろで聞こえる。
――――……見ない、見ない。
「いいの、お前、そんな細くて。 彼女より細かったんじゃねえ?」
「……森田、もー見るな、近寄んな」
樹が森田から離れて、荷物を持って、オレの近くに来た。
……ごめん、樹。
いまだけ、来ないで。
もう、さっさと中に入ってしまおうと、上を脱ぎ捨てた。
「加瀬、もっと樹に飯食わせろよ」
「……つか、樹、ちゃん食ってるし」
そう答える。
「オレ、太らないだけだから」
樹が嫌そうに、そう言ってる。
「ていうか、甘いものとかも好きだし、太らないのが不思議な位」
「ふーん」
ベルトに手を掛けながら、そう言って振り返ると、森田はそんな返事。
「食ってんのに、そんな細いのか」
「先行くぞー」
佐藤と山田はさっさと脱いで、行ってしまった。
「加瀬って、良い体。嫌味だな」
「……それはどーも」
「筋肉ついてんなー」
「高校、陸上だからな」
「蓮は筋トレ、続けてるもんね。えらすぎる」
横で樹がそんな風に言ってる。
全部脱ぎ終えて、先に行こうかと思ったけれど、なんとなく森田と2人で残したくなくて、用意してるふりで樹を待つ。
「蓮、サウナあるって書いてある。行く?」
ふっと止まって、壁の張り紙を見てた樹が、嬉しそうな声。
「サウナ、好き?」
「うん。好きだけど、なかなか行かないから、嬉しい」
「確かになかなか行かないな……」
「大学の近くにスーパー銭湯あるじゃん。そこにサウナあるよ」
森田の声。
「そうなんだ。 スーパー銭湯あるのは知ってたけど…… なかなか大学のそばって、行かないよね? 授業終わったら帰るし」
「え、オレ結構行くけど。一人でも行っちゃう」
「そうなんだ」
ふ、と樹が笑う。
「今度行こうぜ」
「うん。いいよ」
森田の誘いに、樹がすぐ答えてる。
――――……ほんと。
今日1日で、ずいぶん仲良くなったな……と純粋に思いつつ。
……2人で風呂とか、あり得ない。
絶対行かせないし。
などと思っていると、横から樹がオレを覗いてくる。
「蓮も行く?」
すっかり脱ぎ終えた樹に、下からのぞき込まれて。
「そう……だな」
何とか答える。
「早く入ろうぜ」
言って、オレは大浴場への扉を開けた。
中は結構広くて、露天やサウナや水風呂、打たせ湯もあった。
佐藤達が洗い場で流してるのが見える。
「おっせーな、お前ら」
「露天いってるねー」
2人がさっさと消えていく。
樹と森田が歩いてくるのを横目に、椅子に腰を下ろした。
つか。
……樹の方を、ちゃんと見れない。
――――……つか。オレ。
……樹のことが、大好きだけど……。
頭撫でたいとか。頬に触れたいとか。抱きしめたいとか。
……キス、したいとか。
――――……もっと、思うまま、キス、したいとか。
確かに思ってるけど。
――――……体、見れないって。
やばくないか。
なんで見れないかも、分かってる。
――――……完全に、ヤバい意味で、意識、してしまいそう、だから。
一緒に同じベッドで寝ても、キスだけで、止めていられるのは、
それ以上は、考えちゃいけないと思って、タブーにしてて。
それが、なんとかうまくいってるから。
――――……裸を見て、男って事で、ちゃんと認識して、
逆に意識しなくなれば、それはそれで、いいと思うんだけど。
……どう考えても、今見たら、意識しない方にはいけない気がする。
なのに、樹が隣にきて、さらにその隣に森田が並ぶ。
……今だけは隣とか、ほんと来ないでほしい。
「おまえって、男だよなー?」
「……は?」
「なんか白いしキレイだよな――――てか、エロイ?」
「……ぶんなぐっていい?」
樹の口から、樹にしてはびっくりな発言が飛んで、森田が大笑いしているが、その前の森田の発言。
……ほんと、許されるなら、オレがぶん殴ってやろうかな。
物騒な考えが浮かんでしまう、
「蓮、森田どーにかして……」
「無視しな、樹……」
「そっか、わかった」
オレの言葉に、樹がうんうん頷いて、頭からシャワーを浴びてる。
「山田たちは露天?」
森田に聞かれて頷くと、オレも外行ってくるなーと、早々に消えていった。
樹と二人。洗い場に残される。
正確には、周りに他の客がいるので二人きりではないのだけれど。
「蓮、サウナ、行く?」
「すぐそっち?」
「うん、行きたい。蓮行かないなら一人で行ってくるからいーよ」
そんなことを言いながら、樹が立ち上がる。
「行くよ」
あんな個室に、樹一人で行かせられないし。
樹の方を見ないようにしながら、一緒にサウナに向かった。
55
お気に入りに追加
605
あなたにおすすめの小説
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
無愛想な彼に可愛い婚約者ができたようなので潔く身を引いたら逆に執着されるようになりました
かるぼん
BL
もうまさにタイトル通りな内容です。
↓↓↓
無愛想な彼。
でもそれは、ほんとは主人公のことが好きすぎるあまり手も出せない顔も見れないという不器用なやつ、というよくあるやつです。
それで誤解されてしまい、別れを告げられたら本性現し執着まっしぐら。
「私から離れるなんて許さないよ」
見切り発車で書いたものなので、いろいろ細かい設定すっ飛ばしてます。
需要あるのかこれ、と思いつつ、とりあえず書いたところまでは投稿供養しておきます。
嫌われ者の僕が学園を去る話
おこげ茶
BL
嫌われ者の男の子が学園を去って生活していく話です。
一旦ものすごく不幸にしたかったのですがあんまなってないかもです…。
最終的にはハピエンの予定です。
Rは書けるかわからなくて入れるか迷っているので今のところなしにしておきます。
↓↓↓
微妙なやつのタイトルに※つけておくので苦手な方は自衛お願いします。
設定ガバガバです。なんでも許せる方向け。
不定期更新です。(目標週1)
勝手もわかっていない超初心者が書いた拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。
誤字などがありましたらふわふわ言葉で教えて欲しいです。爆速で修正します。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる