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第3章 キャンプ
「タイプ」*樹
しおりを挟む「――――……ごめん、さっき、オレ」
蓮が、そう言った。
「え?」
「……態度、悪かった。ごめんな」
急に謝られて、驚いて、思わず首を振る。
「……てか、蓮、悪くないし。 オレこそ、ごめん、野菜途中で抜けたし…… 戻らなかったのも、ごめんね」
「戻らなかったのは、南もだし。……つか、オレ、ほんとはその事に文句言ってる訳じゃないんだ、別に大したことじゃないし。……違くて。ただ、樹に居てほしかったから、居なくなって、嫌だっただけ」
「――――……」
「……ただの我儘だから、オレが悪い。 ごめんな」
蓮の言葉に少し驚く。
――――……蓮て、そんなに、オレと、居たいの、かな。
「――――……蓮てさ」
「ん?」
「――――……オレと居て、ほんとに、楽しい?」
「え?」
「――――……なんか……蓮が高校まで仲良かったのってさ、オレとは、全然タイプ違うでしょ? なんか……オレと居て、楽しい、のかなって……」
そう言うと、蓮は、じー、とオレを見て、はー、と息をついた。
「――――……オレ、何回も、樹と居たいって、言ってるよな?」
「うん……でも」
「でもじゃないし。――――……んなコトいったら、樹だって、オレみたいなタイプ、好きなのかって話になるけど」
「……高校で見てた時は……縁のないタイプだと思ってたよ」
蓮が、眉を寄せて、黙る。
「……今は?」
「――――……今は…… 蓮居ないと、寂しい……かな……」
「……かなじゃなくて、寂しいって言えよ」
そう言って、ふ、と蓮が笑う。
――――……あ、なんか。いつも通りの、笑顔。
途端に、嬉しくなって、うん、と頷くと。
蓮は、じ、とオレを見つめて。
ふ、と優しく笑んだ。
「……ていうか……いままで居ないから 余計、こんなに大事なんだと思うし……」
そんな風に言われて。
なんだか、すごく嬉しくなって、蓮を見つめ返す。
「あ……佐藤が戻ってくるからまた後でな」
「……うん」
ふと見ると、ログハウスから佐藤が出てきた所だった。
「樹、そこの人参と肉、焼いてくれる? こっちでキャベツ焼く」
「あ、うん」
鉄板に材料を落として、菜箸で焼いてると、佐藤が近くに戻ってきた。
「佐藤ありがとな」
「うん。なー、加瀬、全部そのまま冷蔵庫つっこんじゃったけど、いい?」
「どーせ明日使うし。良いよ」
「んー分かった。あ、2人とも何か飲む? オレ飲み物取ってくる」
「お茶がいい」
「オレも」
オレと蓮に頷いて、佐藤がまたテーブルの方に歩いていく。
「そういえば、樹、トウモロコシ、甘かった?」
「うん。美味しかった。蓮、食べてないの?」
「明日食べる」
「明日はオレも焼くから、ゆっくり食べていいから」
「別にいいよ、一緒に焼こうぜ」
蓮はそう言って、もういつも通り、優しく笑う。
「――――……うん」
なんか、オレ、やっぱり蓮のことが好き、だなあ……。
蓮が、こんな顔で、笑っててくれるなら。
オレ、ほんとに。ずっと蓮と居たい、なあ……。
そんな風に思ってしまって。
顔がほころんでしまうのを止められなかった。
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