38 / 75
第3章 キャンプ
「少しでも話したい」*樹
しおりを挟む「なあ、樹て、部活何だった?」
佐藤が急に聞いてきて。は、と気を取り直す。
「んー……あててみる?」
「何でクイズになっちゃったんだ」
佐藤はクスクス笑って。隣に座ってる松本と南と、「なんだろ」と首を傾げてる。
「文化部?」
「はは。あたり」
「えーなんだろー……」
皆で、うーん、と考えてる。
「文化部って何があるっけ?」
「美術……パソコン……吹奏楽……囲碁将棋……あと何だろ」
「あ、その中にあるよ?」
オレが言うと、どれだろ、と悩みだす。
「なになに?」
蓮の所からウインナーを奪ってきた、森田と山田が戻ってきた。
「樹の部活。美術、パソコン、吹奏楽、囲碁将棋の中にあるっていうから、考えてるとこ」
佐藤が説明すると、森田も山田も、んー、とオレの顔を見る。
「――――……囲碁将棋、かな。 なんか似合う」
くす、と笑って森田が言った。
「はは。あたり。 オレは囲碁しかやってないけどね」
「囲碁か~ なんか頭良くないと出来なそう。オレ、やった事ない」
佐藤のセリフに、「そんな事ないし。やればできるよ」と苦笑い。
「今度教えろよ」
「いーよ。いーけど…… 森田、最初に入門書読んできて」
「そっから教えろよ」
「読んだ方が早いもん」
「そういうの読むの嫌い。教えて」
「じゃあ、今度ね。オンラインとかでやろ」
クスクス笑って承諾。
その後も、皆と話してはいたけれど。
……どうしても、蓮のことが気になって。
蓮と坂井が一緒に居るから、誰も邪魔しに行かないんだけど……。
ずっと焼いてくれてるし……。
替わってあげようかなて思うのと、なにより。
……蓮と、すこしでもいいから――――……話したい、し。
「樹、どした?」
耐えられなくなって、立ち上がると、佐藤に聞かれた。
「んー……蓮と坂井、ずっと焼いててくれてるから、替わろうかなと思って」
「あ、そうだな、じゃオレも行く」
「うん。ありがと」
佐藤と一緒に、蓮のもとに向かう。
こっち向きに立ってる蓮と、すぐに目が合う。
「焼くの替わるよ? ちょっと休んで」
オレが声をかけると、坂井がぱ、と、振り返った。
「いいの?」
「うん。座って食べてきて」
「ありがと、横澤くん。 加瀬くんも座りにいく?」
坂井の言葉に、一瞬間が空いて。
「オレ、まだいいや。坂井、休んでいいよ」
「うん、わかった」
蓮の言葉に坂井が頷いて、皆のもとへと歩いていく。
「ずっと焼かせてごめんごめん、加瀬も、休んでいいよ」
佐藤はそう言って、蓮の背中をぽんぽん、としてる。
「別に疲れてないから、良いよ」
「そう? じゃーここで座ってようかな。何かオレ今日、加瀬としゃべってないし」
言いながら、佐藤が余っていた椅子を、コンロの横に置いて、腰かけた。
「樹も椅子持ってきたら?」
「んー……今いいや」
佐藤の言葉にそう返して、オレは、蓮の隣に近寄った。
「蓮、座らなくて、いい?」
「ん、良い」
「じゃあ焼くの手伝う」
「あー……。ちょっと待って」
蓮はふと顔を上げて、皆の方を向いた。
「焼きそば食いたい奴いるかー?」
蓮の声に、皆、はーいはーい、と手をあげてる。
「肉まだ食いたい奴はー?」
「肉はもういいー 焼きそば食べたいー」
「りょーかい」
ばらばらかえってくる言葉を聞いて、蓮がふ、と笑った。
「なあ、佐藤、悪い。余った肉、冷蔵庫入れてきてくれるか?」
「うん、いーよ、どれ?」
「そこのクーラーボックスの中の肉全部。あと野菜も」
「OK」
佐藤が立ち上がると、クーラーボックスを持って、ログハウスの方に歩いていく。蓮は、手早く網をどけて、鉄板を置いた。少し油を引く。
「温まるまでちょっと待つから。――――……な、樹」
「……うん?」
声の調子が変わって。
見上げると、蓮が、すごく困ったような顔で、オレを見つめた。
37
お気に入りに追加
590
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-
悠里
BL
雨の日の静かな幸せ♡がRainのテーマです。ほっこりしたい時にぜひ♡
本編は完結済み。
この2人のなれそめを書いた番外編を、不定期で続けています(^^)
こちらは、ツンツンした素直じゃない、人間不信な類に、どうやって浩人が近づいていったか。出逢い編です♡
書き始めたら楽しくなってしまい、本編より長くなりそうです(^-^;
こんな高校時代を過ぎたら、Rainみたいになるのね♡と、楽しんで頂けたら。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる