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第3章 キャンプ
「少しでも話したい」*樹
しおりを挟む「なあ、樹て、部活何だった?」
佐藤が急に聞いてきて。は、と気を取り直す。
「んー……あててみる?」
「何でクイズになっちゃったんだ」
佐藤はクスクス笑って。隣に座ってる松本と南と、「なんだろ」と首を傾げてる。
「文化部?」
「はは。あたり」
「えーなんだろー……」
皆で、うーん、と考えてる。
「文化部って何があるっけ?」
「美術……パソコン……吹奏楽……囲碁将棋……あと何だろ」
「あ、その中にあるよ?」
オレが言うと、どれだろ、と悩みだす。
「なになに?」
蓮の所からウインナーを奪ってきた、森田と山田が戻ってきた。
「樹の部活。美術、パソコン、吹奏楽、囲碁将棋の中にあるっていうから、考えてるとこ」
佐藤が説明すると、森田も山田も、んー、とオレの顔を見る。
「――――……囲碁将棋、かな。 なんか似合う」
くす、と笑って森田が言った。
「はは。あたり。 オレは囲碁しかやってないけどね」
「囲碁か~ なんか頭良くないと出来なそう。オレ、やった事ない」
佐藤のセリフに、「そんな事ないし。やればできるよ」と苦笑い。
「今度教えろよ」
「いーよ。いーけど…… 森田、最初に入門書読んできて」
「そっから教えろよ」
「読んだ方が早いもん」
「そういうの読むの嫌い。教えて」
「じゃあ、今度ね。オンラインとかでやろ」
クスクス笑って承諾。
その後も、皆と話してはいたけれど。
……どうしても、蓮のことが気になって。
蓮と坂井が一緒に居るから、誰も邪魔しに行かないんだけど……。
ずっと焼いてくれてるし……。
替わってあげようかなて思うのと、なにより。
……蓮と、すこしでもいいから――――……話したい、し。
「樹、どした?」
耐えられなくなって、立ち上がると、佐藤に聞かれた。
「んー……蓮と坂井、ずっと焼いててくれてるから、替わろうかなと思って」
「あ、そうだな、じゃオレも行く」
「うん。ありがと」
佐藤と一緒に、蓮のもとに向かう。
こっち向きに立ってる蓮と、すぐに目が合う。
「焼くの替わるよ? ちょっと休んで」
オレが声をかけると、坂井がぱ、と、振り返った。
「いいの?」
「うん。座って食べてきて」
「ありがと、横澤くん。 加瀬くんも座りにいく?」
坂井の言葉に、一瞬間が空いて。
「オレ、まだいいや。坂井、休んでいいよ」
「うん、わかった」
蓮の言葉に坂井が頷いて、皆のもとへと歩いていく。
「ずっと焼かせてごめんごめん、加瀬も、休んでいいよ」
佐藤はそう言って、蓮の背中をぽんぽん、としてる。
「別に疲れてないから、良いよ」
「そう? じゃーここで座ってようかな。何かオレ今日、加瀬としゃべってないし」
言いながら、佐藤が余っていた椅子を、コンロの横に置いて、腰かけた。
「樹も椅子持ってきたら?」
「んー……今いいや」
佐藤の言葉にそう返して、オレは、蓮の隣に近寄った。
「蓮、座らなくて、いい?」
「ん、良い」
「じゃあ焼くの手伝う」
「あー……。ちょっと待って」
蓮はふと顔を上げて、皆の方を向いた。
「焼きそば食いたい奴いるかー?」
蓮の声に、皆、はーいはーい、と手をあげてる。
「肉まだ食いたい奴はー?」
「肉はもういいー 焼きそば食べたいー」
「りょーかい」
ばらばらかえってくる言葉を聞いて、蓮がふ、と笑った。
「なあ、佐藤、悪い。余った肉、冷蔵庫入れてきてくれるか?」
「うん、いーよ、どれ?」
「そこのクーラーボックスの中の肉全部。あと野菜も」
「OK」
佐藤が立ち上がると、クーラーボックスを持って、ログハウスの方に歩いていく。蓮は、手早く網をどけて、鉄板を置いた。少し油を引く。
「温まるまでちょっと待つから。――――……な、樹」
「……うん?」
声の調子が変わって。
見上げると、蓮が、すごく困ったような顔で、オレを見つめた。
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