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第3章 キャンプ

「さみしい」*樹

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 ……なんかオレ。
 蓮の事、怒らせたのかな。

 一緒の部屋じゃなくていいって言っちゃったし。
 野菜途中で、やめたし。押し付けて、外で楽しんでた……みたいな?

 そこらへん、かな。
 ……怒ってるて程じゃない、とは思うけど……。

 きっと、蓮も、少し、気にしてる。


 でも。
 ログハウス出たのも、南に言われたからだし。
 戻ろうとしたけど、山田に、今2人きりならちょっとこのままにしてあげよう、て言われたからだし。

 ……オレ、本当は、戻りたかったけど。

 皆と話してるのは、楽しくない訳じゃないけど、
 蓮と、少し、モヤモヤしてるのが、ずっと気になってて、

 全然、心から、楽しめない。


 ていうか――――……。
 オレは、蓮が楽しそうにしてるのを、見たいから、ここに来たのに。


 何、してるんだろう。



「樹、野菜あげる」

 言いながら森田がぽいぽいとオレの皿にのせていく。

「……は? 嘘でしょ、信じられない。 森田、ちゃんと食べろって……」

 やまもりになった野菜を、森田の皿に戻そうとすると、森田は、無理と言いながら、皿を遠ざけてる。

「加瀬と一緒に野菜やまもりにした責任とれよー」

 クスクス笑ってオレにそう言ってる森田の皿に、その脇で、南と松本が野菜を山盛りにしている。

「あっ何してんだ、お前ら、ふざけんな」
「食べなよ、こどもじゃないんだからー」

 戦いだした森田と女子達に笑いながら、オレは、蓮の背中に目を移す。
 2メートルくらい離れた所にあるコンロの所で、さっきから、蓮と坂井が色々焼いてくれてる。

 坂井は自分からは行かないけど、女子や山田が、蓮の近くに行くように促してる。蓮の方は特別気にする事もなくて、ただ隣に居るから、普通に話してる、だけ、な気もするけど……。

 まあ、話せば楽しそうだし。蓮は優しく笑うし。坂井は、すごく嬉しそうだし。――――……なんか、すごく似合ってるようにも、思う。

 坂井と、付き合ったり、することも、あるのかな。
 ……絶対無い訳じゃないだろうし。

 ……うん。

 別にオレが協力なんかしなくても。
 ――――……そうなる時はなるんだろうし。

 相手が、坂井じゃなくたって、蓮の事を好きな子は、いっぱい居るだろうし。まあ。――――……モテるのも、すごく分かるし。


「樹、これ食べて」
「森田、少し位野菜、食べろよー」
「パプリカとかありえない。いらねー」
「じゃ玉ねぎとエリンギ食べて」
「何で」

「オレが頑張って切ったから」

 そう言うと、隣で佐藤が笑った。

「じゃー食べなきゃなー、森田」
「……まあ、エリンギならいーよ、あ、箸向こうだ。食わせて」

「……オレの箸でいいの?」
「全然いい」

 ぱく。森田の口に、エリンギを突っ込む。

「おお、野菜、一口め?」

 佐藤と南が面白そうに森田を見てる。

「ていうか、森田の食生活、どーなってんの」
「んー? 彼女が作ってくれんなら、野菜も食うから。一応食ってるよ」
「なんだそれ。急にのろけ?」

 オレは思わず苦笑い。

「食べれるんだったら今も食べろよ」
「今日はいいや。明日食う」

 なんだそれ。
 笑いながら、森田を見てると。

 急にコンロの方で、ぱん、と音がして、キャーと、悲鳴。
 ……に続いて、笑い声。

「加瀬、どーしたー?」
「ウインナーが弾けた」

 佐藤の声に、おかしそうに笑いながら、蓮が答える。

「ウインナー食う、ちょーだい」

 山田が蓮にくっついて、そんな風に言ってる。

「そんなくっつくなよ」

 言いながらも、楽しそうで。
 ――――……その笑顔に、嬉しくもなるのだけれど。


 ……さっきから、全然、話せていないし。
 ……気になってしまう。


 高校時代、蓮のまわりは派手な子が多かった。廊下で見かけてた時もそうだった。一緒に暮らしてから、高校の卒業式で蓮が仲の良い子達と撮った写真を見たけど、ぱっと見から目立つ子達ばかり。男子も女子も、そんな感じだった。

 多分、蓮て、オレみたいな奴と居るの、初めてなんじゃないかな。
 と。密かにずっと、思ってた。

 オレと居て、楽しいのかなあって思う時もあるけど。

 オレと居る、蓮が、いっつもまっすぐにオレだけ見るから……。
 なんか……楽しいと、思ってくれて、るのかなとも思ったけど。


 ……知り合ってすぐ同居しちゃって。
 ……オレは、居心地がよすぎて――――……。


 ――――……でも、よく考えたら、入試が2月だから……。
 
 蓮とオレって。 
 知り合って――――……まだ、半年も経ってないんだ。


 なんか、ずっと前から、蓮が隣に居たような気がしてたけど。
 ――――……半年、か。


 少し離れると――――……。
 蓮が、知らない人みたいで、 寂しいなんて。
 やっぱり、おかしい、のかな……。



 楽しそうな周りに、適当に合わせながら。
 なんとなく――――……そんな風に、思った。



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