上 下
27 / 75
第3章 キャンプ

「車中」*樹

しおりを挟む
 佐藤祐さとう ゆうは、いつもなんかすごく優しい。ほわほわしてる。今回は、来れなかった橋本といつも仲良い。

 森田大地もりた だいちは、とにかくはっきりしてるイメージ。ズバズバ物を言う。
 このキャンプの発案者も森田だし、そういう騒ぐこと好きな蓮とは結構気が合うと思うけど……蓮は大学入ってからはあんまり参加してないから、一緒にいる所はあんまり見ないけど。

 ……ていうか、蓮、オレとばっかり居るから。

「横澤ってさ~ 加瀬と高校から仲いいの?」
「入試の時に初めて喋った。 高校の時は接点なかったから」

「え。それで、一緒に暮らしてんの?」
「……うん、まあ……利害が一致して」
「利害って?」

「オレは料理できなくて、蓮は、洗濯とか掃除が苦手って」
「へーーーー。 そんなんで暮らして、うまくいくわけ?」

 そんな風に言われてなんて答えようかと迷っていると、すぐに。

「うまくはいってそうだけど」

 森田は、はは、と笑う。

「パッと見、全然タイプ違うのにな」
「まあ。そうだよね……」

「でもオレ、樹と加瀬が二人でいるのは、なんかわかるけど」

 佐藤が前を見たままで、そう言った。

「分かる?」

「うん。なんか、穏やか。喧嘩とか、しないだろ?」
「――――……うん、まあ、しないかな……」

 なんとなく、前を走っている蓮の車を、眺める。


「そーいや、山田ってなんであっち乗ったか知ってる?」
「?」

「女子3人の中に好きな子でもいんのかな」
「……全然知らないんだけど」

 苦笑いで答えると、森田も「オレも知らないんだけど」と言って笑う。


「今回、あの3人連れてきたのは山田だからさ」
「あ、そうなんだ」

「オレは別に誰でも良かったんだけど……」
「そういえば、蓮が言ってた。今日の女子の中に誰かと付き合ってる子がいるのかなって」

 まあ、一人は蓮のことが好きな子だから……それで山田経由でお誘いしたのかも、しれないけど。

「そういや、2人は彼女居るの?」
「オレは居ないよ」

 森田に聞かれてそう言ったら。森田はふ、と笑った。

「お前にできないのは加瀬が邪魔なんじゃねえ?」
「え、そんな事ないと思うけど。 オレ、好きな子、今居ないし」
「あんだけ加瀬が張り付いてたら、女子もいけないんじゃないの?」
「……オレ、そんなモテないし。 いけないとか、そういうんじゃないと思うけど」

 何言ってるんだろう、この人は。
 そんな気持ちで、森田を振り返ると。

「うっわ、にぶいのな。 なるほど……」

 クスクス笑う森田に、隣の佐藤が、「そういう言い方すんなよ」と苦笑い。

「樹はモテると思うよ。 あのゲームの後だって」
「――――……」

「……加瀬のこと好きな女子にも悲鳴が上がってたけど、 樹を好きな女子からも悲鳴が上がってたし」

 佐藤の言葉に、特に違うとの根拠もないから何も言い返さないけれど、つい、首を傾げてしまう。

 ……誰、オレのこと好きな女子って。
 心当たりがまったくないんだけど。……謎。


「オレそのクラス会、休んだんだよなー、つまんね、見たかった」
「……見なくていいって。なんで見たいの」

 苦笑い。
 すると、森田は、おかしそうに笑って。


「横ざわ……言いにくい、樹って呼ぶことにする。いい?」
「え。あ、うん」

「…樹が、加瀬にキスされて、どんな顔してたのか。見てみたかったな~」
「え、それ、マジで意味が分かんない」

 すぱ、と切ると。 またおかしそうに笑う。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-

悠里
BL
雨の日の静かな幸せ♡がRainのテーマです。ほっこりしたい時にぜひ♡ 本編は完結済み。 この2人のなれそめを書いた番外編を、不定期で続けています(^^) こちらは、ツンツンした素直じゃない、人間不信な類に、どうやって浩人が近づいていったか。出逢い編です♡ 書き始めたら楽しくなってしまい、本編より長くなりそうです(^-^; こんな高校時代を過ぎたら、Rainみたいになるのね♡と、楽しんで頂けたら。

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜

Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、…… 「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」 この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。 流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。 もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。 誤字脱字の指摘ありがとうございます

処理中です...