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第3章 キャンプ
「出発」*樹
しおりを挟む集合場所に車を止めて、一旦降りた。
全員集合して、どう分かれて車に乗るか、話していた時だった。
「樹、オレの隣に乗って!」
突然、佐藤に泣きつかれた。
「オレ免許取り立てで運転心配なんだよー」
意外な所から、妙な誘いか来てしまった。
どうしよう。
蓮がこちらを振り返った。
「先にオレの隣に乗ってもらう約束したんだけど」
蓮がそう言ってる。
「オレも長距離初だから。樹に乗ってもらえると安心するし」
「ていうか、オレも樹が一番安心だから頼んでるのにー」
「え、何でオレ?」
「だって、女子だと緊張するし、山田とかはふざけるし」
「あー……」
まあ……分からなくは、ない……。
オレは別に、佐藤の隣でも、大丈夫だけど……。
「だから、樹が一番安心できそう……」
そんな風に言われてしまうと。
……どうしよう。
蓮を見ると、ちょっとムッとしてる。
そっち行くなよ、と思ってるんだろうなあ……。
「じゃあこう分ける?」
山田が割り込んできた。
「オレが加瀬の隣、後ろに女子三人。 佐藤の隣に横澤で、後ろに森田……とかは?」
「だから樹はオレの――――……」
「まあまあ、だって佐藤可哀想じゃん。ていうか、オレじゃやなのかー」
「嫌だっつーの」
「ひどい、加瀬くん!」
ふざけてる山田に、蓮が内心すごくイライラしてるのが分かるのは、きっと、オレだけだろうなー……と、オレは苦笑い。
「樹、いい? 隣……」
佐藤の心細そうな顔に、更に苦笑い。
「……蓮、オレ、こっち乗ってもいい?」
そう言うと、蓮はどうやらこれ以上言うのもおかしいと判断したみたいで。
はー、と息をつきながら、頷いた。
「佐藤、安全運転でな。オレ先走るから、なるべくついて来いよ」
「……ん、頑張る」
ちょっと隣に乗るのをためらう位の、力の込め方で佐藤が頷いてる。
「とりあえずどっかで休憩しよう。 山田から樹に連絡させるから。樹、スマホ出しとけよ?」
「うん」
「じゃあ出ようぜ」
蓮の言葉に応じて、皆動き出す。
「……樹乗せたかったのに」
「――――……蓮……」
オレにだけ聞こえるように言って、なんか少しむくれてるのが可愛くて、少し笑うと。 ぽん、と頭に手が置かれて、撫でられた。
「休憩所でな」
「……うん」
見上げると、ふ、と笑って。
蓮が車に向かって歩いていく。
「樹―」
佐藤に呼ばれて、振り返る。
もう森田は後ろに乗り込んでいて。急いでオレも乗り込んだ。
ドアを閉めて、3人になると、森田がおかしそうに笑った。
「なーんか、加瀬って、ほんとにお前のこと、好きだよな」
ちょっとだけ振り返って、森田を見て。
「そんな事ないよ」
「んな事あるって」
言い切られて、肩を竦める。
ふと気づくと、隣で佐藤が大分固まってる。
「……佐藤?」
「高速緊張する……」
「はは。 ゆっくり走ればいいよ」
そう言うと、佐藤がオレに顔を向けた。
「やっぱり、樹が隣でよかった……なんか落ち着く」
「つーか、お前も横澤好きな訳か」
クスクス笑って、後ろから森田が言ってくる。
蓮の車がゆっくり出発していき、佐藤もそれに続いて、車を発進させた。
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