【キスの意味なんて、知らない】

悠里

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第3章 キャンプ

「憂鬱」*樹

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「おやすみ樹」
「うん。おやすみ」

 結局あれから毎日、蓮のベッドで眠る事になってしまった。
 数日続けてしまったら今度は自分のベッドに戻るのも、また何だか理由が必要だと思ってしまう位で。


「――――……」

 電気が消されると思いきや、ギシ、とベッドが軋んで。
 目を開けると。

 蓮が、近くにいて。
 軽いキスをされる。


 不意にされるキスに、慣れてはいたけれど……。
 あのディープキスのせいで、承諾した上でのキスになってしまって。

 ……さらにさらに、ベッドの上でなんかの、キスってなると……。

 ドキドキしてしまうの、もう、どうしようもない気がしてしまう。

 キスは軽くてすぐに離されるけれど――――……。


 近くで、まっすぐ、見つめられてしまうと。


「――――……」


 心臓が、痛い。



「れ、ん……」

 蓮の腕に触れて、少し、引き離す。


「――――……あの……」
「……ん」

「………おや、すみ……」
「――――……ん」

 ふ、と少しだけ笑って、ちゅ、と頬にキスされてしまう。


 ………っ。

 もう。なんか、蓮て――――……。
 なんなの。


 ……オレなんかにキスしなくても、蓮にキスしてほしい子はいっぱいいるみたいで。 一連のキス騒ぎの途中で、女子に悲鳴が上がってた、なんて話も耳に入ってきた。


 まあでも――――…… 蓮がモテないはずないし。
 ……分かるんだけど。



 なんか本当に――――……
 なんでオレがドキドキしなきゃいけないんだか……。

 ………分からなくなってくる。




 そんな夜を何日か過ごした時だった。


 蓮と離れてトイレに行っていた時、廊下で、森田と佐藤に会った。

 週末のキャンプに何人か誘うから、お前と蓮も来ないか、との話。
 ――――……何人か、か。 

 あんまり、集団は好きじゃない。しかも、泊り。
 断ろうかなと思った瞬間。

 でもふと、蓮は行きたいのかも、と思った。
 なので蓮に聞いてから連絡すると返して、教室に戻った。


 そしたら何か――――……蓮はすごく険しい顔してて。
 聞いたら、オレが綺麗だからと言われたとか、よく分からない事で怒ってて。
 ――――……ちょっと、ストレス、たまっちゃってるかなーと、思った。


 なんかここ数日。
 キスの騒ぎで、蓮も自分も、少しイライラしてたし。

 特に蓮に、楽しい週末を過ごさせてあげたいと思って。

 オレが、行きたくない雰囲気を醸し出したら、多分、今の蓮は、行かなくていい、という気がする。

 最近いつもそれで断って、蓮は、オレと、居るから――――……。
 たまには、蓮が大勢と楽しそうにしてるとこも、見たいし。



 それで、オレも行ってみたい、という空気を出しつつ、キャンプに誘ってみた。そしたら案の定、「樹行きたいの?」と、あくまでこちらを優先させつつ。結局、行く事に決まった。

 蓮は、やっぱりちょっと楽しそうにしてて。
 ――――……ほんとはちょっと苦手で、すこし憂鬱だけど、頑張って行くって言って良かった、と思った。



 ……のは、さっき、山田に会うまでの話。


 行くメンバーが大体決まってきていて。
 その中に、山田も来ることになったという話を聞いて。そこまでは全然良かったのだけれど。

 こないだの飲み会前のカラオケに蓮と行きたがってた、蓮に片思い中の子も来る、との事。

 協力してやって、と、言われてしまった。


 ――――……蓮に彼女出来てほしいって、思えないのに。
 協力なんか、できないよ……。



 ………やっぱり、やめとけばよかったなあ。
 蓮だけ送り出してあげれば、良かった。



 山田に、「協力頼んでること、蓮には内緒ね」と言われてしまって。

 
 そりゃそんなの蓮には言わないけど。
 いったいオレ、協力って何すれば……。



 一気に、憂鬱になってしまった。






「樹、なんかあった?」
「え」


 二人で、夕食中。


「なんか、さっきから、ぼーとしてる」
「え。そ、う?……別に何も、ないよ」

「ふーん……?」

 蓮の視線から、少し逸らして、おかずを頬張る。


「美味しい」
「……ん」

 くす、と笑ってくれて、少しほっとする。


 ――――……蓮、鋭いから、バレないようにしないと。

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