【キスの意味なんて、知らない】

悠里

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第2章 王様ゲーム

「キス」*樹

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「――――……」


 なんだかなあ。
 ……キス……さっきの、キス。

 ………感想って何……。
 ……何が聞きたいんだ……。


「……蓮、もうケーキ、明日にする……」
「ん。片付ける?」
「うん」

 立ち上がって、ケーキのお皿をキッチンに運ぶ。
 一緒に立ち上がった蓮が来てくれて、ラップをかけて片づけてくれる。



「――――……感想って言われてもさ」
「ん」

「……だって、罰ゲーム、じゃん」
「――――……うん。てか、そうじゃなくて」
「……なくて?」


「……舌入れるキス。 嫌だった?」
「……っ」

 顔に熱が集まる。


「っそんなの……嫌に決まってるし。あんな……皆、見てる前で」」
「――――……樹」


 ぐい、と腕を掴まれて。
 蓮の真正面に、引き寄せられる。


「――――……なに……?」


「樹のその言い方だと――――……見られるのが嫌だっただけ、みたいだけど」


 顎に、蓮の右手がかかって。
 その親指が、唇を、なぞった。


「……っ」


 唇から、ぞく、とした感覚が広がる。
 

 そう、言われると――――……。 
 そういう言い方、な気がしなくも、ないけど……。




「――――……皆の前じゃなければ、良かったのか?」
「……っな事言ってない、し」




 ……ちょっと言い方、違っただけ――――……。



「――――……」

 
 ちゅ、と触れるだけのキスをされて。
 すぐ、離れる。


「――――……」


 蓮の、整った顔が、至近距離にあって。
 まっすぐ、見つめられて。


「――――……はー……」


 なんだか、もう、力が抜けて。
 ずるずる、と蓮の両腕にすがりながら、うなだれた。


「……樹?」
「……蓮……――――ちょっとこのまま……」


 ほんと。
 ――――……なんでこんな、顔キレイかな。かっこよすぎだよな。

 もう、見慣れてるのに、急に至近距離に来られると。
 ……その目で、まっすぐ見つめられると。


 ……なんか。
 蓮の 事しか、見えなくなる。
 
 蓮が良い奴なのはもう、これ以上ない位、知ってて。
 ……蓮がオレを、大事に、してくれてれるのも分かるから。


 余計。
 ――――……なんか。


「――――……」

 蓮の腕を頼りに、頭をあげて。
 少し、距離をとってから、まっすぐ、蓮を見つめる。
 

「……正直に、言う、ね」
「――――…ん」


 蓮は、何を言われるのかと、少し、身構えたみたいで。
 唇を少しだけ、引き結んで。じっと、オレを見つめ返した。



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