【キスの意味なんて、知らない】

悠里

文字の大きさ
上 下
17 / 77
第2章 王様ゲーム

「キス」*樹

しおりを挟む


 電車は混んでて、人に押しやられて、蓮とは少し離れてしまった。
 とりあえずつぶされないようケーキを守りつつ。


「――――…」

 はー……。
 なんだかな。

 1人になったら、さっきのクラス会の事を思い出してしまった。


 ――――……ほんと、あのゲーム。……ほんと最悪。
 学校行ったら、絶対その話になるんだろうなあ……。


 蓮とのキス。 …しかも、あんな、キス。
 人前でなんて、ほんと、したくなかった。


「樹、こっち」

 駅に着いた人の乗降りの隙に、腕を掴まれて電車の一番奥に引き込まれた。

「……ここのがマシ。結構混んでたな」
「うん。 ……ケーキだけは守ってたよ」

 クスクス笑って言うと、蓮も苦笑い。

「ケーキ、ほんとはもっと色々買いたかっただろ?」
「うん。レアチーズケーキとモンブランとタルトも欲しかった」
「はは」
「また行こうね」
「OK」

 言いながら、蓮はクスクス笑う。

「ほんと甘いの好きだな」
「たまーにすごく食べたくなる。あ。今度なにか作って?」
「ん?……ケーキ?」
「うん」
「そんな簡単に作れるか?」
「蓮なら出来る」
「またそういう……」

 苦笑いの蓮。

「……あー、母さんがガトーショコラ作ってた気がする。あれならいけるかも」
「ガトーショコラ好き」
「今度作り方聞いとく」
「うん」

「……オレ、何でも作れる訳じゃないぞ?」
「そうかなあ? 出来ると思うけど」

 ふふ、と笑って蓮を見上げると、蓮もふ、と笑った。



◇ ◇ ◇ ◇



 家について、順番に、シャワーを浴びて。
 ケーキとカフェオレで、デザートタイム。


「んー、おいしいー」
「今どれ食べた?」

「チョコ。 食べてみて」
「ん」

 一口食べて。

「甘…」

 と呟く蓮。笑ってしまう。

「甘って… 美味しくない?」
「…オレチーズケーキのが好きだな」 

「全部美味しいよ」

「あと食べていーよ」
「んー」

 結局蓮は、一口ずつ味見みたいに食べただけ。
 もぐもぐケーキをほおばってると、蓮は呆れたように笑う。

「……気持ち悪くなんねえ?」
「なんない。 美味しい」

「あ、そ」

 クスクス笑いながら、蓮はコーヒーを飲んで。

 それから。
 ふ、と息を吐いて。「なあ樹?」と呼び掛けてきた。


「……ん?」
「――――……今日のキス、どう思った?」
「――――……どうって?」

「んー。……感想?」
「感想って……」


 なんて答えていいか、分からない。
 これを話しながらだと、ケーキが味わえない気がして。


「……ケーキ食べてからでいい?」
「ん」

 頷いてくれたので、食べ続けてはいたのだけれど……。
 蓮が、あんまりにじーっとオレを見てくるので。


「……食べにくい」
「ん?」

「見てないで、どっか違うとこ見てて」
「……ん」


 蓮が、頬杖をついて、ちょっとそっぽを向く。





しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

目標、それは

mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。 今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

男だけど幼馴染の男と結婚する事になった

小熊井つん
BL
2×××年、同性の友人同士で結婚する『親友婚』が大ブームになった世界の話。 主人公(受け)の“瞬介”は家族の罠に嵌められ、幼馴染のハイスペイケメン“彗”と半ば強制的に結婚させられてしまう。 受けは攻めのことをずっとただの幼馴染だと思っていたが、結婚を機に少しずつ特別な感情を抱くようになっていく。 美形気だるげ系攻め×平凡真面目世話焼き受けのほのぼのBL。 漫画作品もございます。

物語なんかじゃない

mahiro
BL
あの日、俺は知った。 俺は彼等に良いように使われ、用が済んだら捨てられる存在であると。 それから数百年後。 俺は転生し、ひとり旅に出ていた。 あてもなくただ、村を点々とする毎日であったのだが、とある人物に遭遇しその日々が変わることとなり………?

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

処理中です...