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第2章 王様ゲーム
「キス」*樹
しおりを挟む電車は混んでて、人に押しやられて、蓮とは少し離れてしまった。
とりあえずつぶされないようケーキを守りつつ。
「――――…」
はー……。
なんだかな。
1人になったら、さっきのクラス会の事を思い出してしまった。
――――……ほんと、あのゲーム。……ほんと最悪。
学校行ったら、絶対その話になるんだろうなあ……。
蓮とのキス。 …しかも、あんな、キス。
人前でなんて、ほんと、したくなかった。
「樹、こっち」
駅に着いた人の乗降りの隙に、腕を掴まれて電車の一番奥に引き込まれた。
「……ここのがマシ。結構混んでたな」
「うん。 ……ケーキだけは守ってたよ」
クスクス笑って言うと、蓮も苦笑い。
「ケーキ、ほんとはもっと色々買いたかっただろ?」
「うん。レアチーズケーキとモンブランとタルトも欲しかった」
「はは」
「また行こうね」
「OK」
言いながら、蓮はクスクス笑う。
「ほんと甘いの好きだな」
「たまーにすごく食べたくなる。あ。今度なにか作って?」
「ん?……ケーキ?」
「うん」
「そんな簡単に作れるか?」
「蓮なら出来る」
「またそういう……」
苦笑いの蓮。
「……あー、母さんがガトーショコラ作ってた気がする。あれならいけるかも」
「ガトーショコラ好き」
「今度作り方聞いとく」
「うん」
「……オレ、何でも作れる訳じゃないぞ?」
「そうかなあ? 出来ると思うけど」
ふふ、と笑って蓮を見上げると、蓮もふ、と笑った。
◇ ◇ ◇ ◇
家について、順番に、シャワーを浴びて。
ケーキとカフェオレで、デザートタイム。
「んー、おいしいー」
「今どれ食べた?」
「チョコ。 食べてみて」
「ん」
一口食べて。
「甘…」
と呟く蓮。笑ってしまう。
「甘って… 美味しくない?」
「…オレチーズケーキのが好きだな」
「全部美味しいよ」
「あと食べていーよ」
「んー」
結局蓮は、一口ずつ味見みたいに食べただけ。
もぐもぐケーキをほおばってると、蓮は呆れたように笑う。
「……気持ち悪くなんねえ?」
「なんない。 美味しい」
「あ、そ」
クスクス笑いながら、蓮はコーヒーを飲んで。
それから。
ふ、と息を吐いて。「なあ樹?」と呼び掛けてきた。
「……ん?」
「――――……今日のキス、どう思った?」
「――――……どうって?」
「んー。……感想?」
「感想って……」
なんて答えていいか、分からない。
これを話しながらだと、ケーキが味わえない気がして。
「……ケーキ食べてからでいい?」
「ん」
頷いてくれたので、食べ続けてはいたのだけれど……。
蓮が、あんまりにじーっとオレを見てくるので。
「……食べにくい」
「ん?」
「見てないで、どっか違うとこ見てて」
「……ん」
蓮が、頬杖をついて、ちょっとそっぽを向く。
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