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第2章 王様ゲーム
◇
しおりを挟む可愛いって…。
そう思っていると。
不意にさっき気になった別の会話が、よみがえった。
「ね、蓮。 さっきの贅沢って、なに?」
「ん?」
「さっき、贅沢って、言わなかった?」
「ああ――――……言った」
「あれ、なに? どういう意味?」
隣の蓮を見上げると。 ちら、と視線を投げて。
「いや――――……なんとなく……」
「?」
「樹とそーいう事してんのに、もっと求めて、とか。贅沢だなーと」
「――――……は?」
ん?……んんん?
オレが、贅沢なんじゃなくて。
絵美が、贅沢って意味だったの?
ん……?
なんだかよくわからない。
彼女が居て、「流されて」してるなんて贅沢な悩み、て意味なのかと思ったのに。
……オレとしてるのに、贅沢って。
――――……オレとしてるのが、贅沢って事??
「あー……ごめん、なんか、咄嗟に出た言葉だったから」
蓮は、自分でもよく分からないと言って、口元を押さえて、首を傾げている。
「――――……ん、なんか咄嗟にな、そう思っちゃったんだけど……悪い。意味わかんないよな」
「……うん」
なんか、すごく困ってるっぽい蓮を見ていたら。
ぷ、と笑ってしまった。
なんかいつも、余裕で。
いつも、斜め上くらいに居て。
からかわれるのはいつもオレばかりというか。そんな感じなのに。
なんか、ちょっと、今、可愛い。
「つか、笑うな」
「――――……ぷ」
仏頂面になった蓮がさらに可笑しい。
笑っていると頬をつままれ、ぶに、とこねられた。
「だーもう、笑わないから、離して」
「ん」
「痛いから、人のほっぺこねないで」
つままれた頬を手でさすっていると、蓮は、クスクス笑ってる。
「――――……なんかそういえば、絵美にもよく触られたっけ……」
「――――……」
「なんか懐かし。絵美、元気かなあ。最後クラス一緒だったなら、蓮はつながってる?」
「……クラスのグループでつながってるけど…最近あんまりそのグループやりとりないからわかんないな」
「ふうん。そっか。元気だといいな……」
別れる時はそれなりに、色々あったけど。
でも、一年半、可愛いと思って過ごした子。
思い出すと、一生懸命で可愛かった事ばかり浮かんでくる。
ふ、と笑ってると。
急に、くい、と腕を引かれた。
「――――……早く、帰ろ、樹」
急に、真顔で言う蓮に、一瞬戸惑うけれど。
「早く帰る」には賛成。
「うん。早く帰ってケーキたべよ」
蓮を見上げてそう言うと。じ、と見つめられて。
「コーヒー淹れるね」
「あ、うん」
「……カフェオレがいい?」
「うん」
「さっきのカフェオレ、美味しいって言ってたよな。砂糖とか入ってた?」
「うーん……甘かった、かなあ……」
「一口もらえばよかった。味見で」
「え、でも、蓮が入れてくれる方が、好きだよ?」
「……え。そうなの?」
蓮が、眉をあげて、少し首を傾げてくる。オレは、うんうん、と頷いた。
「さっきのはさっきので美味しかったけど。蓮がいつも入れてくれる方が好き」
「――――……そっか」
あ。
機嫌、急に良くなった。
ふふ。
こういうとこ、可愛いなあ、蓮。
ふたりで話しながら帰る道のりは。
やっぱりいつもどおり、穏やかで――――……。
ほんとに心から、楽しいなあ……と、思ってしまった。
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