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第2章 王様ゲーム

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 可愛いって…。


 そう思っていると。

 不意にさっき気になった別の会話が、よみがえった。



「ね、蓮。 さっきの贅沢って、なに?」
「ん?」

「さっき、贅沢って、言わなかった?」
「ああ――――……言った」

「あれ、なに? どういう意味?」

 隣の蓮を見上げると。 ちら、と視線を投げて。


「いや――――……なんとなく……」
「?」


「樹とそーいう事してんのに、もっと求めて、とか。贅沢だなーと」
「――――……は?」


 ん?……んんん?
 オレが、贅沢なんじゃなくて。

 絵美が、贅沢って意味だったの?


 ん……?
 なんだかよくわからない。

 彼女が居て、「流されて」してるなんて贅沢な悩み、て意味なのかと思ったのに。

 ……オレとしてるのに、贅沢って。


 ――――……オレとしてるのが、贅沢って事??


「あー……ごめん、なんか、咄嗟に出た言葉だったから」

 蓮は、自分でもよく分からないと言って、口元を押さえて、首を傾げている。

「――――……ん、なんか咄嗟にな、そう思っちゃったんだけど……悪い。意味わかんないよな」
「……うん」


 なんか、すごく困ってるっぽい蓮を見ていたら。
 ぷ、と笑ってしまった。

 なんかいつも、余裕で。
 いつも、斜め上くらいに居て。

 からかわれるのはいつもオレばかりというか。そんな感じなのに。

 なんか、ちょっと、今、可愛い。


「つか、笑うな」
「――――……ぷ」

 仏頂面になった蓮がさらに可笑しい。
 笑っていると頬をつままれ、ぶに、とこねられた。

「だーもう、笑わないから、離して」
「ん」

「痛いから、人のほっぺこねないで」

 つままれた頬を手でさすっていると、蓮は、クスクス笑ってる。


「――――……なんかそういえば、絵美にもよく触られたっけ……」
「――――……」

「なんか懐かし。絵美、元気かなあ。最後クラス一緒だったなら、蓮はつながってる?」
「……クラスのグループでつながってるけど…最近あんまりそのグループやりとりないからわかんないな」
「ふうん。そっか。元気だといいな……」

 別れる時はそれなりに、色々あったけど。
 でも、一年半、可愛いと思って過ごした子。

 思い出すと、一生懸命で可愛かった事ばかり浮かんでくる。

 ふ、と笑ってると。
 急に、くい、と腕を引かれた。 


「――――……早く、帰ろ、樹」


 急に、真顔で言う蓮に、一瞬戸惑うけれど。

 「早く帰る」には賛成。


「うん。早く帰ってケーキたべよ」

 蓮を見上げてそう言うと。じ、と見つめられて。
 

「コーヒー淹れるね」
「あ、うん」


「……カフェオレがいい?」
「うん」

「さっきのカフェオレ、美味しいって言ってたよな。砂糖とか入ってた?」
「うーん……甘かった、かなあ……」

「一口もらえばよかった。味見で」
「え、でも、蓮が入れてくれる方が、好きだよ?」

「……え。そうなの?」

 蓮が、眉をあげて、少し首を傾げてくる。オレは、うんうん、と頷いた。

「さっきのはさっきので美味しかったけど。蓮がいつも入れてくれる方が好き」
「――――……そっか」


 あ。
 機嫌、急に良くなった。

 ふふ。
 こういうとこ、可愛いなあ、蓮。


 ふたりで話しながら帰る道のりは。
 やっぱりいつもどおり、穏やかで――――……。


 ほんとに心から、楽しいなあ……と、思ってしまった。







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