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第2章 王様ゲーム
「10秒のディープキス」*樹
しおりを挟む「10秒だぜ、10秒。加瀬、手ぇ抜くなよ」
そんな風に呼びかける橋本と、更に一層盛り上がる周囲に。
蓮は呆れたように、はあ、とため息をついた。
「……お前らタチ悪いな」
蓮が諦めたように言って、オレの近くに立って。
ふ、と息を付きながら、オレを見下ろした。
「――――……オレとキスすんの嫌だと思うけど。数でも数えてて」
「――――……」
別にキス自体は、嫌じゃない。
蓮のこと、嫌な訳がない。
………でも何で人前で、しかもディープキスなんて。
まだまだ気持ちのまとまらないオレの頬に、蓮が触れた。
一気に場が盛り上がる。女の子達の悲鳴が響く。
「ちゃんと数えとけよ」
ちら、と橋本に視線を投げて。
蓮は、顔を傾けて、一気に近付いてきた。
「……っ……」
皆の歓声の中。
蓮がオレの唇に、自分の唇を重ねて。
そして、すぐに、舌を挿し入れてきた。
「……っ……!!」
蓮、しゃれになんない――――……っ。
言いたい言葉もキスにかき消され、
息も出来ずに、ただ蓮のキスに翻弄される。
「……9! 10!!!」
真っ白だった世界に音が戻って。それとともに解放された呼吸。
そして、異様に盛り上がっている周囲。
思わず唇を手の甲で拭って。オレは真っ赤なカオで蓮を睨んだ。
「……蓮もう…っ! っ……っざけんな…!!」
思わず言ったオレに、蓮はべ、と舌を出した。
「しょうがないだろ、10秒。 ――――……これでいいよな」
騒々しい周囲を見回して蓮が言うと、意味不明な拍手が起こった。
「オレも2度と参加しないから」
蓮が苦笑いしながら言ってるのが聞こえる。
オレはまた、ぐい、と唇を拭った。
もー、ほんと、ふざけんな、
蓮のボケ、蓮の馬鹿、蓮の阿呆、蓮のピーマン……ッ!!!
もう普段あんまり使わないせいか、けなそうと思っても、幼稚な言葉しか、頭に浮かんでこない。
「――――……ッ」
拍手してくる皆を無視しながら、オレは、誰も座っていない端のテーブルに腰かけた。
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