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第2章 王様ゲーム

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「なんで、男同士でディープキスなんてしないといけないんだよ! 男と女でなかった時点で無効にしろよ!」

「んだ、樹ー? 王様に逆らうのかー?」
「うるさい、絶対無効!」

「残念でした、無効なんかしねえよー♪ んな事してたらつまんねえじゃん。オレらだって、キスした事あるよなっ?」

 現在の「王様」の橋本は、隣りに居た佐藤に、呼びかける。すると佐藤もまた、思い出したように嫌そうな顔を浮かべる。

「あるある! 樹もゲームなんだから、ちゃんとやれよな?」

「そーだよ、1回だけはゲーム参加するって言ったんだからさ」
「いやだからって拒否ってたら、ゲーム、つまんねえじゃん!」

 逆に猛抗議を受けて、ぐっと言葉に詰まる。

 ていうか、こんな命令、出す奴がいけないんだ!
 言おうとした瞬間、隣で黙ってた蓮が、ため息を付いた。

「……樹、しよっか。こいつら変えないだろうし」


 今までずっと黙っていた蓮。
 苦笑いとともに、オレに呼びかける。

 その言葉に、目が点になった。


「お前、オレに、そんなこと出来るの?」

 うそでしょ?
 蓮をガン見していると、蓮はまたため息。


「――――……出来るよ、別に。 こいつら相手でも出来るし」

 嫌そうに、橋本と佐藤を親指で指す蓮に、言葉が出ない。


「……なあ、おーさま。 樹、こんな嫌がってるし、相手変えちゃだめか?」

 蓮がそんなことを言う。
 オレは、隣の蓮をマジマジと見てしまう。


 ……ちょっと待って。
 ……相手、変えるって。

 ――――……相手かえるって……。


 蓮、オレの目の前で、他の奴とキスすんの…?


 咄嗟に浮かんだ、その気持ち。
 ――――……整理しきれなくて、ただ、蓮を見つめていると。


「オレとキスしたい奴、いるー?」

 蓮がそう言った。周りがわっと湧く。
 女子はキャーキャー言ってるし、男子は要らん要らんと騒いでる。

 盛り上げるの、ほんと、上手……。

 ――――……こういうのが、蓮なんだと、思ってた。
 直接話すまで、人に囲まれて、中心で騒いで、とにかく楽しそうな。
 

「女子選ぶのばどーかと思うから、男子選んでいいだろ?」

 蓮に吟味され始めた男達は、「いやいやオレらは良いから」「樹にやってくれ」と辞退している。

 しばらく、混沌とした大騒ぎが続いていたけれど。
 王様の橋本が、首を振った。

「だめだって。そんな我が儘で変えてたら、このゲーム何も面白くないじゃんか」
「でも、ここまで嫌がられると、オレもやりにくいっつーか……」

 ちら、と蓮に見られて。
 オレは、む、と唇を噛んだ。


「……オレ、2度と、このゲームには参加しないから」


 オレがそう言うと、苦笑いの周囲。
 けれどその言葉を、渋々ながらも了解と判断した皆は、一気に盛り上がる。

 ゲームに参加してなかった奴らまで、見物にきている始末。


「いいの、樹? 相手変えるまでごねてもいーよ?」

 蓮が、オレを見つめて、そう言う。

「……もーいいよ」

 ……つか、蓮が他の奴とキスすることになっちゃうじゃんか。

 ………よく考えたら、普段軽いキスはしてるし。


 耐えられなくは、ないんじゃないだろうか。うん。 

 人前って言うのが、嫌すぎるけど。



 ああ、もう、本当に、参加するんじゃなかった……。





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