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第2章 王様ゲーム
◇
しおりを挟む「なんで、男同士でディープキスなんてしないといけないんだよ! 男と女でなかった時点で無効にしろよ!」
「んだ、樹ー? 王様に逆らうのかー?」
「うるさい、絶対無効!」
「残念でした、無効なんかしねえよー♪ んな事してたらつまんねえじゃん。オレらだって、キスした事あるよなっ?」
現在の「王様」の橋本は、隣りに居た佐藤に、呼びかける。すると佐藤もまた、思い出したように嫌そうな顔を浮かべる。
「あるある! 樹もゲームなんだから、ちゃんとやれよな?」
「そーだよ、1回だけはゲーム参加するって言ったんだからさ」
「いやだからって拒否ってたら、ゲーム、つまんねえじゃん!」
逆に猛抗議を受けて、ぐっと言葉に詰まる。
ていうか、こんな命令、出す奴がいけないんだ!
言おうとした瞬間、隣で黙ってた蓮が、ため息を付いた。
「……樹、しよっか。こいつら変えないだろうし」
今までずっと黙っていた蓮。
苦笑いとともに、オレに呼びかける。
その言葉に、目が点になった。
「お前、オレに、そんなこと出来るの?」
うそでしょ?
蓮をガン見していると、蓮はまたため息。
「――――……出来るよ、別に。 こいつら相手でも出来るし」
嫌そうに、橋本と佐藤を親指で指す蓮に、言葉が出ない。
「……なあ、おーさま。 樹、こんな嫌がってるし、相手変えちゃだめか?」
蓮がそんなことを言う。
オレは、隣の蓮をマジマジと見てしまう。
……ちょっと待って。
……相手、変えるって。
――――……相手かえるって……。
蓮、オレの目の前で、他の奴とキスすんの…?
咄嗟に浮かんだ、その気持ち。
――――……整理しきれなくて、ただ、蓮を見つめていると。
「オレとキスしたい奴、いるー?」
蓮がそう言った。周りがわっと湧く。
女子はキャーキャー言ってるし、男子は要らん要らんと騒いでる。
盛り上げるの、ほんと、上手……。
――――……こういうのが、蓮なんだと、思ってた。
直接話すまで、人に囲まれて、中心で騒いで、とにかく楽しそうな。
「女子選ぶのばどーかと思うから、男子選んでいいだろ?」
蓮に吟味され始めた男達は、「いやいやオレらは良いから」「樹にやってくれ」と辞退している。
しばらく、混沌とした大騒ぎが続いていたけれど。
王様の橋本が、首を振った。
「だめだって。そんな我が儘で変えてたら、このゲーム何も面白くないじゃんか」
「でも、ここまで嫌がられると、オレもやりにくいっつーか……」
ちら、と蓮に見られて。
オレは、む、と唇を噛んだ。
「……オレ、2度と、このゲームには参加しないから」
オレがそう言うと、苦笑いの周囲。
けれどその言葉を、渋々ながらも了解と判断した皆は、一気に盛り上がる。
ゲームに参加してなかった奴らまで、見物にきている始末。
「いいの、樹? 相手変えるまでごねてもいーよ?」
蓮が、オレを見つめて、そう言う。
「……もーいいよ」
……つか、蓮が他の奴とキスすることになっちゃうじゃんか。
………よく考えたら、普段軽いキスはしてるし。
耐えられなくは、ないんじゃないだろうか。うん。
人前って言うのが、嫌すぎるけど。
ああ、もう、本当に、参加するんじゃなかった……。
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