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第2章 王様ゲーム

「悪夢の罰ゲーム」*樹

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 悪夢だ。

 もう、こんなの。悪夢だとしか、言いようがない。



◇ ◇ ◇ ◇


 大学のクラスメート達はノリのいい奴が多くて、集まりが好きな奴が多いクラスだった。

 結構ちょくちょく誘われて、何回か断ってたので、今日は参加する事にしたら、蓮も参加になった。

 浪人して20才を超えてる奴もいるし、酒は各自、自己判断。
 蓮とオレは、ノンアルコールで過ごしていた。


 盛り上がった連中が始めた「王様ゲーム」。
 クジで、王様とそれ以外の番号を決める。王様になった奴が、番号を適当に言って、何をしろという命令を出す。

 普段なら絶対に参加しない、このくだらないゲームに、何故だかすっかり勝手に参加させられる事になっていて。

 抗議したら、1回だけ、なんてそんな言葉に乗せられた。
 
 1回だけなら、まあ、その番号に当たらなければいい訳で。

 じゃあ、1回だけ、なんて言って、オレも蓮も、そのゲームに参加した。


 挙げ句。王様になった奴は。


「3番が5番にディープキス」

 なんて、ふざけた命令を出した。


 3番が蓮で、5番がオレ。
 つまり、 蓮がオレに、ディープキス。

 誰が王様になるかが、重要な所……。 
 むちゃくちゃを言うやつが王様になってしまった場合、今回のように最悪な事態が起こる。

 こんなに人数が居るのに、何で、こんなのに、蓮と一緒に当たるんだろ。
 変な運命に、めまいがする。


 ……そして。

 やっぱりゲームだから。
 嫌だとか言ってると興ざめしてしまう事は、否めない。


 でも。興ざめされようが、なんだろうが。


「ぜったい嫌だ。命令変えろよ」

 オレはそう言って、王様になったクラスメートを険しい顔で見つめた。


◇ ◇ ◇ ◇



 ある日、突然、蓮にキスされて。すごく驚きはしたけれど。
 何も言わない蓮に、オレも、何も言わなかった。

 それからずっと。ふとした拍子にキスされる。

 例えば好きだからとか、そんな言葉も全く無くて。
 ただ、繰り返されるキス。

 何で、キスなんかしたいんだろう。
 何で、オレに、キスするんだろう。
 何でオレは、黙ってキスされてるんだろう。

 ……たくさん疑問はあるのだけれど、それを話した事はない。

 別に嫌じゃない。

 すごくしたいとも思わないけど、しばらくキスされないと、あれ?と思う。
 もうやめたのかな?なんて思って。でもやっぱり聞かずに時を過ごして。

 またキスされると、ああ、まだ続くんだ、とか思って。
 何となくホッとしたような気持ちになったり。

 意味とか理屈とか、そういうの、全然訳が分からない行為で。


「――――…」

 キス、といっても。
 最初はほんとに触れあうだけだった。
 そして、そのキスが触れている時間が、本当に少しだけ長くなった位で。

 触れてるだけの、優しいキス。

 こんなのおかしいのかなと思いながらも、核心に触れる事もなく。
 キスを続けてきた。




 だから。

 王様ゲームなんかで、人前で、
 それ以上のキスをさせられる事なんて、絶対嫌だった。

 こんなの、蓮以外と当たったなら、まだマシだったのに。



 蓮とだけは、やだ。



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