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第2章 王様ゲーム

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 座ってメニューを見て、樹はケーキにくぎ付けになる。

「ケーキ、うまそー……」
「すぐ飲み会だけどな」

 樹の言葉に、苦笑いしてそう突っ込んだ。

「でもこのチョコケーキ、すごいうまそーなんだけど」
「樹、ほんと、チョコ好きだな」
「うん」

 嬉しそうに笑って、頷いてる。

「でもいいや、我慢する。あんまゆっくり食べてる時間もないし。蓮、また今度来よ?」
「いーよ」

 結局、樹はカフェオレ、オレはブラックを頼んで。
 しばらく触れていなかったスマホを見ると、未読のメッセージが数件。

「……山田から、来れるなら来いって連絡来てる」
「あ、カラオケ?」
「ああ」

 樹は、水をこくん、と飲んで、苦笑い。

「時間ないから無理だね」
「…また今度って入れとく」

「蓮、カラオケ好き?」
「――――…中高ん時は良く行ったかな」

「そーなんだ。蓮、ほんとうまそう」
「採点機とは相性いいけどな」

「……それってうまいってことだよね?」

 クスクス笑う樹。

「なんか蓮ってほんと何でもできる気がする」
「……そおか?」

 何でもってことはないけど。
 まあ広く浅く、要領は良いのかもしれない。


「掃除とか洗濯もさ、最初苦手とかやりたくないとか言ってたけどさ」
「ん?」
「手際が悪い訳でもないし、全然できてるしさ」
「――――…」

「オレが料理できないっていうのとは、レベルが違った」
「なことねえよ、やっぱり得意ではないと思ってるし」

「でも一人暮らしでも平気そう」
「――――……」

 ……同居の意味がなかった、とか、そういう意味か?
 それはちょっと、なんと答えたらいいのやら……。


 そこに注文したものが届く。

 カフェオレを一口飲んで。これ美味しい、と微笑む樹。

 蓮は、さっきの樹の言葉が気になって、何となく何も言わず、コーヒーを飲んでいた。

 すると、カフェオレの表面をじっと見ながら。

「……オレはラッキーだったけど」
 と、樹が言った。

「――――ん…?」

 ラッキー?

 樹の次の言葉を待っていると、ふ、と笑って、オレを見上げる。


「蓮はきっと一人暮らしできたと思うけど……オレは、蓮が一緒に住んでくれて、ラッキーだったなーと思って」
「――――……」

「あ、ラッキーって言い方悪い?」

 樹は、ちょっとバツが悪そうに笑って。

「――――……料理が美味しいのもだけど……なんか色んな意味でさ」

 ふ、と微笑む樹を見ていたら。


「……オレもそう思ってるって言ってるだろ」


 かろうじて、そう答えはしたけれど。


 なんだか、衝動的に。
 どうしても――――……。

 その唇に触れたくなってしまって。


 外でそんな事できる訳も無く。
 ……本当は、キス自体、樹にして良い物なのかも、分からないのに。


 でも触れたくて。

 心底、困ってしまった。






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