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第2章 王様ゲーム
◇
しおりを挟む座ってメニューを見て、樹はケーキにくぎ付けになる。
「ケーキ、うまそー……」
「すぐ飲み会だけどな」
樹の言葉に、苦笑いしてそう突っ込んだ。
「でもこのチョコケーキ、すごいうまそーなんだけど」
「樹、ほんと、チョコ好きだな」
「うん」
嬉しそうに笑って、頷いてる。
「でもいいや、我慢する。あんまゆっくり食べてる時間もないし。蓮、また今度来よ?」
「いーよ」
結局、樹はカフェオレ、オレはブラックを頼んで。
しばらく触れていなかったスマホを見ると、未読のメッセージが数件。
「……山田から、来れるなら来いって連絡来てる」
「あ、カラオケ?」
「ああ」
樹は、水をこくん、と飲んで、苦笑い。
「時間ないから無理だね」
「…また今度って入れとく」
「蓮、カラオケ好き?」
「――――…中高ん時は良く行ったかな」
「そーなんだ。蓮、ほんとうまそう」
「採点機とは相性いいけどな」
「……それってうまいってことだよね?」
クスクス笑う樹。
「なんか蓮ってほんと何でもできる気がする」
「……そおか?」
何でもってことはないけど。
まあ広く浅く、要領は良いのかもしれない。
「掃除とか洗濯もさ、最初苦手とかやりたくないとか言ってたけどさ」
「ん?」
「手際が悪い訳でもないし、全然できてるしさ」
「――――…」
「オレが料理できないっていうのとは、レベルが違った」
「なことねえよ、やっぱり得意ではないと思ってるし」
「でも一人暮らしでも平気そう」
「――――……」
……同居の意味がなかった、とか、そういう意味か?
それはちょっと、なんと答えたらいいのやら……。
そこに注文したものが届く。
カフェオレを一口飲んで。これ美味しい、と微笑む樹。
蓮は、さっきの樹の言葉が気になって、何となく何も言わず、コーヒーを飲んでいた。
すると、カフェオレの表面をじっと見ながら。
「……オレはラッキーだったけど」
と、樹が言った。
「――――ん…?」
ラッキー?
樹の次の言葉を待っていると、ふ、と笑って、オレを見上げる。
「蓮はきっと一人暮らしできたと思うけど……オレは、蓮が一緒に住んでくれて、ラッキーだったなーと思って」
「――――……」
「あ、ラッキーって言い方悪い?」
樹は、ちょっとバツが悪そうに笑って。
「――――……料理が美味しいのもだけど……なんか色んな意味でさ」
ふ、と微笑む樹を見ていたら。
「……オレもそう思ってるって言ってるだろ」
かろうじて、そう答えはしたけれど。
なんだか、衝動的に。
どうしても――――……。
その唇に触れたくなってしまって。
外でそんな事できる訳も無く。
……本当は、キス自体、樹にして良い物なのかも、分からないのに。
でも触れたくて。
心底、困ってしまった。
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