【完結】冒険者になる!え?クマさんも一緒だよ?〜魔力が少ない少年の思考錯誤冒険記録〜

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』

文字の大きさ
上 下
11 / 46
本編

あぁークマさん!

しおりを挟む
 商業ギルドを出た後は、薬草を取りに森に向かった。

 周りに誰もいない事を確認して、クマさんを地面に下ろす。
 クマさんは森がお気に入り見たいで、下ろしてあげると、すぐに走り回り草の上でコロコロと転がったりして遊ぶ。
 控えめに言って・・・めちゃくちゃ可愛い。
 時々、可愛い花を見つけては、僕に無言で手渡してくる所が、悶える程に可愛い。
 僕のクマさんは、可愛い上に、強く、賢く、照れ屋さんだ。

 今日も一緒に、薬草取りをしながら、お喋りをしていると、急に目の前が陰り、バッと上を向く。
 
 足音も無く、気配なんてものも一切感じられなかった。
 一瞬敵かと心臓が凍り付きそうになったが・・・なんと、冒険者ギルドと食堂で見掛けた彼だった。

 上から見下ろされた僕は、しゃがみ込んだまま固まって黒い瞳を見つめる。
 その瞳が、視線がクマさんに移動する。

 (・・・クマさん、転がってぬいぐるみの振りをしてるんだね・・・多分今更だと思うんだ)

 すると、彼がクマさんに手を伸ばし、自分の目の高さまで持ち上げる。

 「あ、あの、そのぬいぐるみ僕のなんです。1人で薬草採取するの寂しいから連れて来てるだけで・・・」

 僕に視線を向ける事なく、クマさんを凝視している彼。

 (あぁ、絶対見られてたよね。僕とクマさんがお話しながら一緒に薬草採取してたの・・・)

 「・・・なぁ、これどうなってるの?」

 彼は、クマさんが動いて喋っているのが、不思議で仕方ないようで、僕に聞いてくるが・・・僕だってどうなっているのか知らない。

 「えっと、クマのぬいぐるみです」

 「まぁ、そう見えるな。だが、ぬいぐるみが何で動くんだよ」

 「そ、そう言われても・・・僕も良くわからなくて・・・」

 「お前のだろ?なんで分からないんだよ」

 (だって、本当にわからないんだもーん!急に動き出して僕だって驚いたんだよー!!)

 と、心の中で叫んでみるも怖くてそんなこと言えず、どうしたものかなと考えていると・・・。

 ぽこんっ

 (あぁ~!!クマさんが、彼の顔をパンチしてるよー!!でも、巨大化してないから威力は無い様で良かった・・・いや、良くない。クマさんが引き千切られないか心配だ)

 「あの、すみません。クマさん掴まれてるの嫌見たいで、離して貰えますか?」

 「・・・・・・」

 彼は、何も答えずポイッと僕の方にクマさんを投げた。
 
 僕は、慌ててキャッチする。切実に投げないで欲しいと思った。
 
 「なぁ、こいつ何で動けるの。」

 (またこの質問っ!僕も分からないって言ってるのに。納得するまで逃さない気か・・・)

 「本当に良く分からないんですが、今までは普通のぬいぐるみでした。僕が、狼に襲われそうになった時に、クマさんが急に動き出して僕を護ってくれたんです。原動力は、僕から溢れ出ている魔力だそうです。それ以外は本当に何にも分からないんです」

 彼は、顎に手を充てて何やら考えている様だったが、これ以上聞いても何も得られないと思ったのか、それ以上聞いてくることは無かった。

 この事が、他の人にバレてクマさんが誰かに連れて行かれちゃったりしたら嫌なので、誰にも言わないでとお願いして、彼とは別れた。

 ーークマさんの秘密がバレてしまった・・・
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...