【完結】冒険者になる!え?クマさんも一緒だよ?〜魔力が少ない少年の思考錯誤冒険記録〜

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』

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本編

クマさんは強い

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 「クマさんすごーい!!強ーい!!・・・・・・どういうこと?」

 今モンスターと戦っているのは、僕のぬいぐるみのクマさんだ。
 もう一度言う、のクマさんだ! 

 事の始まりは・・・冒険者ギルドに登録したばかりの初心者冒険者の僕は、薬草採取の為に、森に来ていた。
 初級冒険者の薬草採取で来るのは、森の浅いところなので、モンスターなんて遭遇することは滅多にない。

 クマさんを片手に薬草を採取していると、カサッと草を踏む音が聞こえた。
 野うさぎでも居るのかなーと呑気に思っていると、今度はグルルルッと唸るような呻き声が聞こえ・・・

 現れたのは、腹を空かせて舌をだらんと口から垂らしている狼だった。
 
 (どうしてこんな所に、狼が・・・)

 咄嗟に、周りを見渡す。
 狼は群れで行動する種族なので、他にも狼がいたら逃げられない。

 不幸中の幸いとはこの事。
 逸れの狼だったようで、周りに他の狼の姿は見えない。

 少しずつ後退りながら、マジックバッグ に手を入れる。
 マジックバッグ に入れてある魔法陣を2枚取り出し、魔力を込める。

 取り出した魔法陣は【盾】と【煙幕】
 
 これは、逃げる為に有効な魔法陣で、僕が販売している魔法陣でもある。
 盾でシールドを張り、煙幕で目眩しをし、その隙に全力で逃げる。

 しかし、僕は決して運動が得意なわけでもない。と言うことは足も速くない・・・。
 足止めした狼は、あっという間に僕を目掛けて追ってきて、大きくジャンプして今にも僕に爪が届きそう・・・となったところで、僕のクマさんが巨大化して狼をパンチして吹き飛ばした。

 そして、冒頭へ戻る。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 クマさんに吹き飛ばされた狼に近付くと、打ち所が悪かった様で息絶えていた。
 取り敢えず、皮も肉も使えるのでマジックバッグ に入れる。

 そして、クマさんを振り返り・・・

 「クマさん大きくなれたの?」

 と、聞いてみた。

 (クマさんって喋れるのかな?というか何で巨大化してるのかな?なんで1人で動けるのかな・・・)

 『クマさんもびっくりだよ!坊ちゃんが食べられちゃうって思ったら、急に体が動いちゃった!』

 そう言いながら、シュルシュルと元のサイズに戻っていった。

 クマさん自分のこと『クマさん』って呼ぶのか。
 そして、僕は『坊ちゃん』・・・あれかな?使用人達が僕のこと『坊ちゃん』って呼んでたからかな?

 元の大きさに戻ったクマさんは、僕のところまでトテトテと歩いてきて、僕を見上げる。
 
 (可愛い。何これ。)

 ぬいぐるみが自分で動いてるし、今までのごっこ遊びじゃなくて、普通に動いてる。

 しゃがみ込み、クマさんと視線を合わせて話をする。

 「クマさん、僕今まで16年間ずーっと一緒に居たけど、クマさんいつから喋れたの?」

 クマさんは、短い手で、頭をポリポリと掻き

 『今喋れる様になったみたい。多分坊ちゃんが垂れ流している魔力を日々浴びていたことで、こうなったんじゃないかな』

 「んんん??僕魔力垂れ流してるの?魔力少ないのに?」

 良く分からず、思わず首を傾げてしまう。
 それに合わせて、クマさんも首を傾げてくるので、本当に可愛い!

 『坊ちゃんは、魔力を貯めて置ける器が小さいから使える魔力量が少ないだけ。それでも、体内で魔力は常に作られ続けるから、器に入り切らない魔力が漏れてるんだよ』

 「・・・どうして、僕が知らない僕の事をクマさんは知っているの!?」

 『だって、坊ちゃんのお母様が寝てる坊ちゃんにそうやって話し掛けてた』

 (って事は、小さい頃に昼寝をしている僕に向かってお母様は、独り言を呟いたけど、それを側で寝ていたクマさんが聞いていたと言う事かっ!)

 「・・・そう、お母様が言っていたんだね。えー、なんで僕に言ってくれないのかな。」

 『それは、知らないよ。そう言うことで、僕は坊ちゃんの漏れ出た魔力が原動力だから、今まで通り側に置いてね』

 「それは、勿論だよ!クマさんはいつでも一緒だよ!」

 なんて言ったって、家を出て冒険者になるのに連れて来る位だ。
 手放すなんて考えたこともない。

 そして、今は僕より頼りになる相棒だ!
 ぬいぐるみに護られるなんて、情けないけど・・・一緒に頑張ろう。
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