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16歳〜
隣国へ
しおりを挟む私のダミー人形を丁寧に包み、邸に連れて帰ってきたお父様。
血の気を失い、青白い顔をしていたが、執務室で待っていた私の顔を見た瞬間、駆け寄り抱き締める。
「はぁ、良かった。さっきここで話していたのは夢なのではと思ってしまったよ」
「お父様・・・ダミー人形、酷い状態でしたよね」
「あぁ、そうだな。流石にあれをみた時は、思わず取り乱しそうになったな。あそこまでシアに似せてあるとは・・・」
お父様は、私と話した後に、すぐ王宮に戻り、魔獣の森へ派遣された騎士に同行した。
そして、私のダミー人形の惨状を見て、本当に私が死んでいるかのように錯覚し、言葉を失って膝をついたと言っていた。
知っていてこの衝撃。知らないければ、その心情は計り知れない。
やっぱりお父様に相談したのは正解だったと思う。
その時のお父様の様子に、周りの騎士達も掛ける言葉も無く、沈黙したと聞いた。
これで、その場にいた人達には私が死んだと思わせることは出来た。
「私の髪も血も使って、今日身につけていたもの全てをつけてますからね」
「そうだな・・・特に髪の効果は大きいな。シアのあの美しい黒髪が血に塗れ散らばる様はなんとも言葉に出来ないな」
髪を切って、ダミー人形につけさせたのは正解だったみたい。
私を魔獣の森に捨てた犯人達は、影人形(小鳥)が後をつけて、アジトを特定したこともあり、すぐに捉えることが出来たと聞いた。
他に誘拐に関わった人間については、これから取り調べを行い、明らかにしていくとのこと。
これでストーリーから抜け出したと思いたいところ・・・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私を死んだことにするなら、人目に付かない方が良いので、早めに隣国へ行った方が良いだろうということになり、翌日には、隣国へ行くことが決まり、すぐに同行するメンバーが決められた。
侍女2人と、護衛5人、影2人をつけることになった。
侍女と護衛は、平民に扮して馬車で移動しするが、私は馬車に乗って移動すると誰かの目に触れると困るため、影移動して、隣国の手前で合流することになった。
部屋で誰にも気付かれず数日過ごしていたある日、部屋の外から大きな声が響いてきた。
「フェリシアに会わせてください!せめて一目見てお別れを言わせて欲しい!」
サイラス様が邸に来ているのね・・・。
お父様もあのダミー人形を見て、相当の衝撃を受けていたから、サイラス様にも酷だろうと思って、見せることをしていないのかな。
後から生きていると分かるのだから、今無駄に傷付く必要はないという判断なのかもしれない。
・・・それとも、今お別れをさせて吹っ切れさせた方が良かったりするのだろうか。
私には何が正解か分からないわ・・・。
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