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16歳〜

---サイラス視点⑤---

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 婚約者が死んだ。

 私の最愛の婚約者が死んだ・・・。

 もう彼女の笑顔を見ることも出来ない。
 
 話すことも抱き締めることも・・・。

 何故私は、彼女と同じ年に産まれなかったのだろう。
 
 同じ年であれば、一緒にお茶会に参加し、彼女の側を離れることなど無かったのに。
 
 たった1年の差で、こんな悲劇に見舞われるなんて・・・。

 騎士が言うには、ラルフ様がフェリシアの亡骸を邸に連れて帰ったと。
 フェリシアの亡骸を見たラルフ様は、静かに崩れ落ちたと・・・。

 彼女が死んだなんて、とても信じられない気持ちで、せめて最後に一目合わせて欲しいと手紙を出すが、否と返事が来るだけだった。

 悲しみにくれているラルフ様に何度も手紙を送るのは憚られたが、どうしてもフェリシアに会いたかった。
 この目で見なければ、フェリシアが死んだなんて信じられないんだ。

 それでも、良い返事を貰うことが出来ず、しまいには父上からフェリシアとの婚約解消の打診をされた。

 何を言っているんだろうと思った。
 私がフェリシアと婚約解消などするわけないのに。

 フェリシアが死んだと騎士が知らせに来てから数日経つが、ラルフ様は彼女の死亡手続きをしていない。

 それならば、フェリシアは死んでいないのと同じことだ。
 私は婚約解消など認めない。

 居ても立っても居られなくなり、押しかけるようにオルガイン公爵邸へ向かった。

 先触れもなく、急に訪ねたにも関わらずラルフ様は会ってくれたが、フェリシアとの対面は出来なかった。

 「サイラス・・・フェリシアには会わせられない。私が見つけた時でも相当の衝撃を受けた。君が見たら・・・」

 「それでも!フェリシアに会わせてください!彼女が死んだなんて信じられないんです!認められない!」

 「・・・っ。すまない、サイラス・・・。もう帰りなさい。フェリシアの事は忘れて前に進みなさい」

 そう言うと、ラルフ様は私に背を向けて歩いて行ってしまう。

 「フェリシアに会わせてください!せめて一目見てお別れを言わせて欲しい!」
 
 声を張り上げて懇願するが、ラルフ様が足を止めてくれることはなかった・・・。

 認めない。フェリシアが死んだなんて私は認めないよ。

 いつ帰ってきても良い様に、安全な箱庭を作らなければ。

 誰も侵入できない様に、高い塀を作らなければ。
 彼女の心を癒せるように、美しい庭園を作ろう。
 彼女が退屈することがない様に、大きな書庫を作って、読めきれない程の本で埋めよう。
 彼女が刺繍を楽しめる様に、刺繍専用の部屋を作り、店にいるかの様に品揃えを良くしよう。
 邸から出なくても楽しめる空間を作ってみせるよ。
 
 フェリシア・・・早く私の元へ戻っておいで。
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