49 / 58
16歳〜
---サイラス視点⑤---
しおりを挟む
婚約者が死んだ。
私の最愛の婚約者が死んだ・・・。
もう彼女の笑顔を見ることも出来ない。
話すことも抱き締めることも・・・。
何故私は、彼女と同じ年に産まれなかったのだろう。
同じ年であれば、一緒にお茶会に参加し、彼女の側を離れることなど無かったのに。
たった1年の差で、こんな悲劇に見舞われるなんて・・・。
騎士が言うには、ラルフ様がフェリシアの亡骸を邸に連れて帰ったと。
フェリシアの亡骸を見たラルフ様は、静かに崩れ落ちたと・・・。
彼女が死んだなんて、とても信じられない気持ちで、せめて最後に一目合わせて欲しいと手紙を出すが、否と返事が来るだけだった。
悲しみにくれているラルフ様に何度も手紙を送るのは憚られたが、どうしてもフェリシアに会いたかった。
この目で見なければ、フェリシアが死んだなんて信じられないんだ。
それでも、良い返事を貰うことが出来ず、しまいには父上からフェリシアとの婚約解消の打診をされた。
何を言っているんだろうと思った。
私がフェリシアと婚約解消などするわけないのに。
フェリシアが死んだと騎士が知らせに来てから数日経つが、ラルフ様は彼女の死亡手続きをしていない。
それならば、フェリシアは死んでいないのと同じことだ。
私は婚約解消など認めない。
居ても立っても居られなくなり、押しかけるようにオルガイン公爵邸へ向かった。
先触れもなく、急に訪ねたにも関わらずラルフ様は会ってくれたが、フェリシアとの対面は出来なかった。
「サイラス・・・フェリシアには会わせられない。私が見つけた時でも相当の衝撃を受けた。君が見たら・・・」
「それでも!フェリシアに会わせてください!彼女が死んだなんて信じられないんです!認められない!」
「・・・っ。すまない、サイラス・・・。もう帰りなさい。フェリシアの事は忘れて前に進みなさい」
そう言うと、ラルフ様は私に背を向けて歩いて行ってしまう。
「フェリシアに会わせてください!せめて一目見てお別れを言わせて欲しい!」
声を張り上げて懇願するが、ラルフ様が足を止めてくれることはなかった・・・。
認めない。フェリシアが死んだなんて私は認めないよ。
いつ帰ってきても良い様に、安全な箱庭を作らなければ。
誰も侵入できない様に、高い塀を作らなければ。
彼女の心を癒せるように、美しい庭園を作ろう。
彼女が退屈することがない様に、大きな書庫を作って、読めきれない程の本で埋めよう。
彼女が刺繍を楽しめる様に、刺繍専用の部屋を作り、店にいるかの様に品揃えを良くしよう。
邸から出なくても楽しめる空間を作ってみせるよ。
フェリシア・・・早く私の元へ戻っておいで。
私の最愛の婚約者が死んだ・・・。
もう彼女の笑顔を見ることも出来ない。
話すことも抱き締めることも・・・。
何故私は、彼女と同じ年に産まれなかったのだろう。
同じ年であれば、一緒にお茶会に参加し、彼女の側を離れることなど無かったのに。
たった1年の差で、こんな悲劇に見舞われるなんて・・・。
騎士が言うには、ラルフ様がフェリシアの亡骸を邸に連れて帰ったと。
フェリシアの亡骸を見たラルフ様は、静かに崩れ落ちたと・・・。
彼女が死んだなんて、とても信じられない気持ちで、せめて最後に一目合わせて欲しいと手紙を出すが、否と返事が来るだけだった。
悲しみにくれているラルフ様に何度も手紙を送るのは憚られたが、どうしてもフェリシアに会いたかった。
この目で見なければ、フェリシアが死んだなんて信じられないんだ。
それでも、良い返事を貰うことが出来ず、しまいには父上からフェリシアとの婚約解消の打診をされた。
何を言っているんだろうと思った。
私がフェリシアと婚約解消などするわけないのに。
フェリシアが死んだと騎士が知らせに来てから数日経つが、ラルフ様は彼女の死亡手続きをしていない。
それならば、フェリシアは死んでいないのと同じことだ。
私は婚約解消など認めない。
居ても立っても居られなくなり、押しかけるようにオルガイン公爵邸へ向かった。
先触れもなく、急に訪ねたにも関わらずラルフ様は会ってくれたが、フェリシアとの対面は出来なかった。
「サイラス・・・フェリシアには会わせられない。私が見つけた時でも相当の衝撃を受けた。君が見たら・・・」
「それでも!フェリシアに会わせてください!彼女が死んだなんて信じられないんです!認められない!」
「・・・っ。すまない、サイラス・・・。もう帰りなさい。フェリシアの事は忘れて前に進みなさい」
そう言うと、ラルフ様は私に背を向けて歩いて行ってしまう。
「フェリシアに会わせてください!せめて一目見てお別れを言わせて欲しい!」
声を張り上げて懇願するが、ラルフ様が足を止めてくれることはなかった・・・。
認めない。フェリシアが死んだなんて私は認めないよ。
いつ帰ってきても良い様に、安全な箱庭を作らなければ。
誰も侵入できない様に、高い塀を作らなければ。
彼女の心を癒せるように、美しい庭園を作ろう。
彼女が退屈することがない様に、大きな書庫を作って、読めきれない程の本で埋めよう。
彼女が刺繍を楽しめる様に、刺繍専用の部屋を作り、店にいるかの様に品揃えを良くしよう。
邸から出なくても楽しめる空間を作ってみせるよ。
フェリシア・・・早く私の元へ戻っておいで。
27
お気に入りに追加
653
あなたにおすすめの小説
転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。
転生はデフォです。
でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。
リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。
しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。
この話は第一部ということでそこまでは完結しています。
第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。
そして…
リウ君のかっこいい活躍を見てください。
悪役令嬢の居場所。
葉叶
恋愛
私だけの居場所。
他の誰かの代わりとかじゃなく
私だけの場所
私はそんな居場所が欲しい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。
※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。
※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。
※完結しました!番外編執筆中です。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる