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三章 精霊姫 側妃になる
婚約式、そして・・・再会
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応接室に着くと、既にロイ義兄様達が待っていた。
久しぶりに会うロイ義兄様は、大人の色気が出て、格好良さが増していた。
思わず駆け寄りそうになるが、一歩踏み出そうとしたところで、私の腰を抱いているヴァン様の腕に力が入り、身動きが取れなくなる。
そろりとヴァン様の顔色を伺うと、目を鋭く光らせていた・・・
元々、私がロイ義兄様の話題を出すことを嫌がっていたから、今回会うのもとても嫌だった見たい。
デビュタントで、ロイ義兄様がヴァン様を牽制したのが良くなかったのよね。
ヴァン様が私とロイ義兄様の関係を疑ってしまうのは、そのせいだと思う。
あとは・・・雰囲気で感じ取っているのかもしれないわね。
まぁ、疑われるような関係だったので、なんとも言えないけれど・・・
今回の主役の1人であるエドワードは、濃紺色のジャケットに青み掛かった緑の刺繍が、良く似合っていた。
「今日は、良く来てくれた。あまり畏まらず、さぁ、かけてくれ」
ヴァン様の言葉に、席につくと、お茶を出す前に婚約式を始める。
婚約式とは何をするのか?
王族の場合は、一般的な婚約式とは違い、魔法の誓約がなされる。
王族との婚姻は、神聖なもので、婚約する場合、相手は不貞行為が犯せないようにするのだ。
例え、リリー以外に好きな人ができたとしても、関係を結ぶことは出来ない。
体が反応しないので、夜の営みは、生涯リリーとだけとなる。
その反面、リリー側は、エドワードでなくても良いと言うのだから、なんとも王族に甘い誓約だ・・・
でも、それでも良いと、王族と縁を繋ぎたいと思う貴族もいるのだから、まぁいいのかな?
エドワードは、この制約に納得しているのかな?
出来れば、形だけでなく、ちゃんとリリーを愛してくれるようになって欲しいけれど・・・
だから、聞かずにはいられない。
「エドワード、あなたは、この誓約の意味を分かっているのかしら?」
「はい、承知しております」
「そう・・・生涯、リリーだけになるのよ?」
「勿論でございます。側妃様、こんなに可愛らしい王女様と婚約出来るのに、不満に思う者がおりましょうか?」
エドワードの言葉に、隣に座っているリリーが頬を染めて、「まぁ」と声を漏らす。
・・・本心かしら? それとも建前? 難しいわね・・・
「王女様は、側妃様のような素敵な女性へと成長するでしょう。今から、その成長が楽しみなのです」
「そう、そう思ってくれてるなら嬉しいわ。リリーを幸せにしてあげてね」
「はい。この命に変えても」
そう言いながら、微笑むエドワードに、リリーの方は完全に恋に落ちていた。
魔法師立ち会いにより、滞りなく、婚約式は進んだ。
せっかくなので、リリーとエドワードには、庭園でお茶をするようにと送り出し、大人四人が応接室に残りお茶をすることになった。
久しぶりにロイ義兄様に会ったから、気軽に話したいところだけれど・・・ヴァン様の手前無理よね。
「リア、元気そうだね」
ロイ義兄様が、そういうとヴァン様が「ん〃ん〃っ」と、注意を促すように声を漏らす。
「失礼しました。側妃様でしたね」
「ロイ義兄様・・・。ヴァン様!家族なのですから、呼び方くらい良いではありませんか?ロイ義兄様に、側妃様なんて呼ばれると・・・悲しいですわ・・・」
流石に、ロイ義兄様にまで側妃様呼びはやりすぎだと思うの。
一応、義理とはいえ兄弟なのだから・・・
「はぁ・・・わかった。呼び方はそのままで構わない。そんな顔をするな」
そう言いながら、私の額に口付けを落とすヴァン様の影からロイ義兄様の方を伺うと、見たくないとばかりに視線を落としていた。
あー・・・居た堪れない。
この状況はあまり良くない。どうしたものか・・・
ヴァン様を無碍にしたくない。けれど、ロイ義兄様の悲しい顔も見たくない。
少しだけでも、ロイ義兄様と二人で話す時間を作れないかな・・・
この十数年、一度も会って無かったんだもの・・・少しくらい・・・
「あの、ヴァン様? 少しの時間で良いので、ロイ義兄様と家族水入らずで、少しお話ししてきてもいいですか?」
「・・・二人きりで話がしたいと?」
「二人きりとは言っても、庭園を散歩しながら、少し話が出来ればと。決して、密室で二人になるようなことにはなりませんわ」
そう、ただの兄妹として、歩きながら少し話したいだけ。
手を触れ合うこともしない。
そんなことをすれば、きっとすぐに使用人達からヴァン様に伝わってしまう。
「・・・わかった。だめだと言いたいところだが、流石に今まで水晶宮に閉じ込めて家族とも会わせて無かったからな。行ってくるといい」
「ヴァン様・・・ありがとうございます」
「私は、執務室に戻るが、夫人はどうされるか?」
「私も先に失礼させていただきます」
「お義姉様、少しだけロイ義兄様をお借り致します」
「十数年ぶりの再会ですよ。気兼ねなくお話しください」
「お義姉様・・・ありがとうございます」
本当に二人には申し訳ないと思うけど・・・次にロイ義兄様に会えるのは、きっとリリーの結婚式の時だわ。
次に会えるのは6年後ね。それも言葉少なに交わすだけ・・・
やっぱり、少し寂しいわね。でも、これは私が選んだ道だもの。この短い逢瀬を大事にしましょう。
「エスコートは、やめておきましょう」
「そうね」
ロイ義兄様は、ヴァン様に遠慮して、触れ合わないように、エスコートを辞退した。
久しぶりに会うロイ義兄様は、大人の色気が出て、格好良さが増していた。
思わず駆け寄りそうになるが、一歩踏み出そうとしたところで、私の腰を抱いているヴァン様の腕に力が入り、身動きが取れなくなる。
そろりとヴァン様の顔色を伺うと、目を鋭く光らせていた・・・
元々、私がロイ義兄様の話題を出すことを嫌がっていたから、今回会うのもとても嫌だった見たい。
デビュタントで、ロイ義兄様がヴァン様を牽制したのが良くなかったのよね。
ヴァン様が私とロイ義兄様の関係を疑ってしまうのは、そのせいだと思う。
あとは・・・雰囲気で感じ取っているのかもしれないわね。
まぁ、疑われるような関係だったので、なんとも言えないけれど・・・
今回の主役の1人であるエドワードは、濃紺色のジャケットに青み掛かった緑の刺繍が、良く似合っていた。
「今日は、良く来てくれた。あまり畏まらず、さぁ、かけてくれ」
ヴァン様の言葉に、席につくと、お茶を出す前に婚約式を始める。
婚約式とは何をするのか?
王族の場合は、一般的な婚約式とは違い、魔法の誓約がなされる。
王族との婚姻は、神聖なもので、婚約する場合、相手は不貞行為が犯せないようにするのだ。
例え、リリー以外に好きな人ができたとしても、関係を結ぶことは出来ない。
体が反応しないので、夜の営みは、生涯リリーとだけとなる。
その反面、リリー側は、エドワードでなくても良いと言うのだから、なんとも王族に甘い誓約だ・・・
でも、それでも良いと、王族と縁を繋ぎたいと思う貴族もいるのだから、まぁいいのかな?
エドワードは、この制約に納得しているのかな?
出来れば、形だけでなく、ちゃんとリリーを愛してくれるようになって欲しいけれど・・・
だから、聞かずにはいられない。
「エドワード、あなたは、この誓約の意味を分かっているのかしら?」
「はい、承知しております」
「そう・・・生涯、リリーだけになるのよ?」
「勿論でございます。側妃様、こんなに可愛らしい王女様と婚約出来るのに、不満に思う者がおりましょうか?」
エドワードの言葉に、隣に座っているリリーが頬を染めて、「まぁ」と声を漏らす。
・・・本心かしら? それとも建前? 難しいわね・・・
「王女様は、側妃様のような素敵な女性へと成長するでしょう。今から、その成長が楽しみなのです」
「そう、そう思ってくれてるなら嬉しいわ。リリーを幸せにしてあげてね」
「はい。この命に変えても」
そう言いながら、微笑むエドワードに、リリーの方は完全に恋に落ちていた。
魔法師立ち会いにより、滞りなく、婚約式は進んだ。
せっかくなので、リリーとエドワードには、庭園でお茶をするようにと送り出し、大人四人が応接室に残りお茶をすることになった。
久しぶりにロイ義兄様に会ったから、気軽に話したいところだけれど・・・ヴァン様の手前無理よね。
「リア、元気そうだね」
ロイ義兄様が、そういうとヴァン様が「ん〃ん〃っ」と、注意を促すように声を漏らす。
「失礼しました。側妃様でしたね」
「ロイ義兄様・・・。ヴァン様!家族なのですから、呼び方くらい良いではありませんか?ロイ義兄様に、側妃様なんて呼ばれると・・・悲しいですわ・・・」
流石に、ロイ義兄様にまで側妃様呼びはやりすぎだと思うの。
一応、義理とはいえ兄弟なのだから・・・
「はぁ・・・わかった。呼び方はそのままで構わない。そんな顔をするな」
そう言いながら、私の額に口付けを落とすヴァン様の影からロイ義兄様の方を伺うと、見たくないとばかりに視線を落としていた。
あー・・・居た堪れない。
この状況はあまり良くない。どうしたものか・・・
ヴァン様を無碍にしたくない。けれど、ロイ義兄様の悲しい顔も見たくない。
少しだけでも、ロイ義兄様と二人で話す時間を作れないかな・・・
この十数年、一度も会って無かったんだもの・・・少しくらい・・・
「あの、ヴァン様? 少しの時間で良いので、ロイ義兄様と家族水入らずで、少しお話ししてきてもいいですか?」
「・・・二人きりで話がしたいと?」
「二人きりとは言っても、庭園を散歩しながら、少し話が出来ればと。決して、密室で二人になるようなことにはなりませんわ」
そう、ただの兄妹として、歩きながら少し話したいだけ。
手を触れ合うこともしない。
そんなことをすれば、きっとすぐに使用人達からヴァン様に伝わってしまう。
「・・・わかった。だめだと言いたいところだが、流石に今まで水晶宮に閉じ込めて家族とも会わせて無かったからな。行ってくるといい」
「ヴァン様・・・ありがとうございます」
「私は、執務室に戻るが、夫人はどうされるか?」
「私も先に失礼させていただきます」
「お義姉様、少しだけロイ義兄様をお借り致します」
「十数年ぶりの再会ですよ。気兼ねなくお話しください」
「お義姉様・・・ありがとうございます」
本当に二人には申し訳ないと思うけど・・・次にロイ義兄様に会えるのは、きっとリリーの結婚式の時だわ。
次に会えるのは6年後ね。それも言葉少なに交わすだけ・・・
やっぱり、少し寂しいわね。でも、これは私が選んだ道だもの。この短い逢瀬を大事にしましょう。
「エスコートは、やめておきましょう」
「そうね」
ロイ義兄様は、ヴァン様に遠慮して、触れ合わないように、エスコートを辞退した。
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