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三章 精霊姫 側妃になる

婚約準備

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 月日は、瞬く間に過ぎ去り、第二王女のリリアーナが10歳になった。
 そして、この度、マグニート辺境伯の嫡男と婚約する運びとなった。

 顔合わせは、王宮の応接室ですることになっている・・・そう!私が嫁いで初めて水晶宮を出る!
 ヴァン様は、私を人目に触れさせたくないと、はじめは立ち会いを拒否されてしまった。
 でも!流石に我が子の婚約くらい見届けたい!!
 ということで、今回も夜着を新調し、おねだり作戦を決行し、見事、私も婚約式に立ち会うことが許された。

 リリーとロイ義兄様の息子であるエドワードとは、4歳差だから、もう14歳になるのね。
 リリーが16歳で成人してから結婚することになるから、その時エドワードは20歳か。少し待たせてしまうわね。

 ロイ義兄様は、16歳で結婚して、エドワードが今14歳だから・・・31歳かしらね。
 私が水晶宮に来てから、一度も顔を合わせていないから、13年は会ってないことになるのかしら。
 会えるのが楽しみだわ。

 もう準備も出来てると思うし、リリーの様子を見に行ってみようかしら。
 婚約式では、お互いの瞳の色の刺繍を入れることになっているから、リリーのドレスにはエメラルド色の刺繍が施されるのね。
 エドワードの方には、青み掛かった緑色の刺繍になるけれど、色味が似てるから、お揃いのような感じになりそうね。
 リリアーナの部屋をノックすると、使用人が顔を出し、部屋へと招き入れてくれる。

 リリーは、おかしなところがないか、鏡でチェック中みたいね。

 「あら? お母様?」

 「あなたの様子を見に寄ったのよ。少し、緊張しているようね」

 「だって・・・初めてお会いするんですもの。写真でどのような方かは存じてますけど・・・」

 「ふふっ。リリーったら、その写真を机の上に飾って良く眺めているわよね」

 「お母様っ! だって、だって・・・こんなに素敵なんですもの。美しい金髪に宝石の様に美しい瞳・・・整った顔立ちにこの微笑み!! まるで絵本の中の王子様見たい」
 
 興奮したように言うリリーの言葉を聞きながら、写真立てを手に取り、まじまじと見つめる。
 本当に、ロイ義兄様にそっくりだわ。
 私がロイ義兄様と会った時より少し若いけれど、良く似ている。

 リリーも私を小さくしたらこんな感じになりそうなくらいには似ている。
 髪色が同じだから、余計にそっくりになっちゃってるのよね。

 「お母様、変じゃないかしら? 今日の私は綺麗?」

 まだ10歳だと言うのに、おませさんなんだから。
 
 「とても可愛いわよ。リリーはお母様の娘なんですからね。可愛くないわけないでしょ?」

 そういうと、リリーは私を穴が開くほど見つめ・・・

 「そうよね。絶世の美女であるお母様に似ているんだもの! 私が可愛くないなんてことあるわけないわよね」

 「そ、そうね」

 いや、確かに、私がそう言ったんだけどね!
 でも、そこまで自信過剰になっちゃうのもだめかもしれないわ。

 「リリー・・・あのね。そう思うことは良いことなんだけど・・・人前ではそういう事は言わないように気をつけましょうね?」

 「もう、お母様ったら、子供扱いしすぎですわ。流石に、建前や謙遜と言う言葉は存じてます。いくつから勉強させられていると思っているのですか?」

 「そう、それなら良かったわ」

 確かにね。王族として小さい頃から勉強させられてたら、普通の10歳とは違うわよね。
 エドワードもリリーを気に入ってくれるといいのだけれど。

 「さて、お喋りはこの辺にして、そろそろ行きましょう」

 「え? お父様がまだよ?」

 「え? ヴァン様は、あちらで待っているのではなくて?」

 だって、王宮の応接室で婚約式を行うのに、わざわざ水晶宮に来て、また王宮に戻るなんて・・・

 「お母様・・・。お父様なしで、水晶宮を出るなんて許してくれると思います?」

 「・・・どうかしら・・・」

 娘にもそう思われているヴァン様って・・・
 確かに、人目に触れるのを嫌がっていたくらいだものね。
 それじゃ、お茶でも飲んで待ってようかと思っていると、ドアがノックされる。

 「王太子殿下がいらっしゃいました」

 ヴァン様、ナイスタイミングね。

 「ちょうど噂をすればね。さ、お母様、行きましょう」

 「えぇ」

 ◇ ◇ ◇

 はじめて水晶宮を出て、王宮の廊下を歩いているけれど・・・何かおかしい・・・

 「ヴァン様・・・王宮はいつもこんな感じなのですか?」

 「あー・・・いつもとは少し違うか」

 「・・・そうですよね。だって・・・ここまで誰ともすれ違いませんでしたよ!?」

 「この時間は、リアが通る場所は人払いをさせた」

 「ヴァン様・・・」

 そこまでする!?
 すれ違うくらい良くない!?
 だめなの!?

 「お母様、予想通りですわ。驚くこともありません」

 「リリー、あなた・・・」

 ヴァン様の行動は、リリーの中でも予想の範疇なのね。
 まぁ、これで私が婚約式に出るのを納得してくれると言うのなら、問題ないのかもしれないわね。
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