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二章 精霊姫 人間界に降りる
手当てする
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ソロ冒険者と見つめ合ってるわけにも行かないので、声を掛ける。
「セーフティーエリアでも会ったのですが、覚えていますか?怪我をされてるようですが」
私が声を掛けると、隣にいるロイ義兄様の気配がまた鋭くなり、魔力が揺らぎ始める。
えー、声掛ける位は許して欲しい。
「・・・あぁ、覚えている。これくらいの怪我は怪我とも言えない」
「確かにポーションを使う程ではないかも知れませんが、傷をそのまま放置していると化膿したりして悪化する場合もあり、死に至る場合もあります。それで、お節介かも知れませんが、手当てさせて頂けますか?傷に特化した塗り薬でして、今の傷程度であれば、明日の朝には綺麗になっていると思います。」
傷薬を掌に乗せて、彼に見えるようにする。
手に浄化魔法を掛け、蓋を開け指で薬を掬う。それを私の腕に塗って害がない事を証明する。
これで、毒でも入っていれば塗った部分が赤くなったりする。
それを見た彼は、私に近寄って・・・こようとしたが、ロイ義兄様が私の前に立ち、威圧する。
「ロイ義兄様、彼は薬を見ようとしただけです。これを彼に渡して貰えますか?」
私が彼に近寄ることを良しとしないので、ロイ義兄様に薬を渡すようにお願いする。
ロイ義兄様は、チラリと視線を寄越して手を出し、薬を受け取る。
静かに彼の方に歩いて行き、無言で薬を差し出すと、彼がそれを受け取り、私と同じ様に手に浄化魔法を掛けて、指で薬を掬い、腕に塗る。それで、害がないと判断したのか、「試させてもらう」と言った。
彼の言葉を聞き、ロイ義兄様が薬を受け取り、腕を出すように言う。
「・・・まさかと思うが、こいつが手当てするのか?」
流石にロイ義兄様が手当てをすると思わなかった様で、私を見て声を掛けてくる。
「えぇ・・・ロイ義兄様は手慣れているので、安心してください」
「いや・・・手慣れてるとかそういう問題じゃ・・・」
彼は、未だに魔力が揺らめているのを呆れた様に見えいる。
物凄いイヤイヤ感が・・・。
「大丈夫です。心配しないでください。」
「・・・分かった。じゃ、宜しく頼む」
「・・・あぁ、腕を出せ」
ロイ義兄様は、彼の傷口と自分の手に浄化魔法を掛けて薬を塗っていき、包帯を巻く。
頬の傷は、包帯が巻けないので、薬をたっぷり塗った状態で触らない様にお願いをする。
「これ・・・痛み止めの効果もあるのか?ピリッとした痛みが無くなった」
「ちゃんと痛み止めの効果も効いているみたいで良かったです。やっぱり擦り傷とはいえ、ピリッとした痛みはありますし、そう言った小さな痛みでも持続しているとイライラするものですし、気持ちの良い物ではないですからね。傷薬の中に痛み止めの効果も入れておいたのです」
「へぇ、考えてるんだな。確かに、大したことない怪我だが、痛みがないわけではないからな。助かった」
「そう言って貰えて良かったです。それで、えっとあなたも次のセーフティーエリアでテント張りますよね?」
「あぁ、俺はオズだ。その予定だな」
「それでは、また私達と同じ場所でテントを張る事になりますね。朝起きて傷の具合を見させて頂きたいのですが良いですか?」
「別にそれぐらいは構わない」
「良かった。では、明日の朝声を掛けさせて頂きますね。その時にもし今後も薬を使いたいと言う事であれば、お売りする事も出来ますので、言ってくださいね」
「あぁ、分かった」
私と彼が話してる間、ロイ義兄様は静かーに私の隣に佇んでいた。
あまりに会話をしていると魔力がパチパチと弾けてきそうなので、これでささっと会話を切り上げることにする。
「それでは、また会いましょう」
「じゃーな」
そういうと、ロイ義兄様は私の腰に手を当てて、歩く様に促してくる。
「あの薬、痛み止めの効果も入ってるんですね。掴みも上々みたいでしたし、今回は声を掛けて正解だったみたいですね。きっとオズとかいう冒険者、その傷薬買うと思いますよ」
「私もフォルスの言う様に、彼は買うと思いますわ。痛み止め効果が入っているって言うのは大きいと思いますわ」
「ふふっ、2人ともありがとう。明日の朝が楽しみね。ロイ義兄様も彼の手当てをしてくれてありがとうございました」
「リアの為を思えばあれ位お安い御用だよ」
・・・あれ位とは思ってない様な態度だったけれど。
魔力揺らめかせて威嚇していたよね・・・。
「それに・・・」と呟くと私の耳に口を寄せて小声で囁く。
「今夜たっぷりお礼をして貰えるからね」
うん、そう言う約束でしたね・・・。
今日も朝までコースですね。
そんなこともあり、順調にダンジョンを進めて行き、25階層下のセーフティーエリアに着いた。
昨日居た迷惑なパーティーは見掛けないけど、私達は進みが早かったからまだ着いていないだけかも知れない。
んー・・・でも、ハービーのエリアで撤退してそうな気がする。
ハービーが思ったよりも群れの数が多かったので、彼らでは対応出来ないのではないかなと思った。
今セーフティーエリアにいるのは、上級冒険者と思われるソロ冒険者が2人、そして中級冒険者のパーティーが1組といったところか。
これから人が増えることも考えると、彼らからは離れた場所にテントと結界を張った方が良さそうだ。
「セーフティーエリアでも会ったのですが、覚えていますか?怪我をされてるようですが」
私が声を掛けると、隣にいるロイ義兄様の気配がまた鋭くなり、魔力が揺らぎ始める。
えー、声掛ける位は許して欲しい。
「・・・あぁ、覚えている。これくらいの怪我は怪我とも言えない」
「確かにポーションを使う程ではないかも知れませんが、傷をそのまま放置していると化膿したりして悪化する場合もあり、死に至る場合もあります。それで、お節介かも知れませんが、手当てさせて頂けますか?傷に特化した塗り薬でして、今の傷程度であれば、明日の朝には綺麗になっていると思います。」
傷薬を掌に乗せて、彼に見えるようにする。
手に浄化魔法を掛け、蓋を開け指で薬を掬う。それを私の腕に塗って害がない事を証明する。
これで、毒でも入っていれば塗った部分が赤くなったりする。
それを見た彼は、私に近寄って・・・こようとしたが、ロイ義兄様が私の前に立ち、威圧する。
「ロイ義兄様、彼は薬を見ようとしただけです。これを彼に渡して貰えますか?」
私が彼に近寄ることを良しとしないので、ロイ義兄様に薬を渡すようにお願いする。
ロイ義兄様は、チラリと視線を寄越して手を出し、薬を受け取る。
静かに彼の方に歩いて行き、無言で薬を差し出すと、彼がそれを受け取り、私と同じ様に手に浄化魔法を掛けて、指で薬を掬い、腕に塗る。それで、害がないと判断したのか、「試させてもらう」と言った。
彼の言葉を聞き、ロイ義兄様が薬を受け取り、腕を出すように言う。
「・・・まさかと思うが、こいつが手当てするのか?」
流石にロイ義兄様が手当てをすると思わなかった様で、私を見て声を掛けてくる。
「えぇ・・・ロイ義兄様は手慣れているので、安心してください」
「いや・・・手慣れてるとかそういう問題じゃ・・・」
彼は、未だに魔力が揺らめているのを呆れた様に見えいる。
物凄いイヤイヤ感が・・・。
「大丈夫です。心配しないでください。」
「・・・分かった。じゃ、宜しく頼む」
「・・・あぁ、腕を出せ」
ロイ義兄様は、彼の傷口と自分の手に浄化魔法を掛けて薬を塗っていき、包帯を巻く。
頬の傷は、包帯が巻けないので、薬をたっぷり塗った状態で触らない様にお願いをする。
「これ・・・痛み止めの効果もあるのか?ピリッとした痛みが無くなった」
「ちゃんと痛み止めの効果も効いているみたいで良かったです。やっぱり擦り傷とはいえ、ピリッとした痛みはありますし、そう言った小さな痛みでも持続しているとイライラするものですし、気持ちの良い物ではないですからね。傷薬の中に痛み止めの効果も入れておいたのです」
「へぇ、考えてるんだな。確かに、大したことない怪我だが、痛みがないわけではないからな。助かった」
「そう言って貰えて良かったです。それで、えっとあなたも次のセーフティーエリアでテント張りますよね?」
「あぁ、俺はオズだ。その予定だな」
「それでは、また私達と同じ場所でテントを張る事になりますね。朝起きて傷の具合を見させて頂きたいのですが良いですか?」
「別にそれぐらいは構わない」
「良かった。では、明日の朝声を掛けさせて頂きますね。その時にもし今後も薬を使いたいと言う事であれば、お売りする事も出来ますので、言ってくださいね」
「あぁ、分かった」
私と彼が話してる間、ロイ義兄様は静かーに私の隣に佇んでいた。
あまりに会話をしていると魔力がパチパチと弾けてきそうなので、これでささっと会話を切り上げることにする。
「それでは、また会いましょう」
「じゃーな」
そういうと、ロイ義兄様は私の腰に手を当てて、歩く様に促してくる。
「あの薬、痛み止めの効果も入ってるんですね。掴みも上々みたいでしたし、今回は声を掛けて正解だったみたいですね。きっとオズとかいう冒険者、その傷薬買うと思いますよ」
「私もフォルスの言う様に、彼は買うと思いますわ。痛み止め効果が入っているって言うのは大きいと思いますわ」
「ふふっ、2人ともありがとう。明日の朝が楽しみね。ロイ義兄様も彼の手当てをしてくれてありがとうございました」
「リアの為を思えばあれ位お安い御用だよ」
・・・あれ位とは思ってない様な態度だったけれど。
魔力揺らめかせて威嚇していたよね・・・。
「それに・・・」と呟くと私の耳に口を寄せて小声で囁く。
「今夜たっぷりお礼をして貰えるからね」
うん、そう言う約束でしたね・・・。
今日も朝までコースですね。
そんなこともあり、順調にダンジョンを進めて行き、25階層下のセーフティーエリアに着いた。
昨日居た迷惑なパーティーは見掛けないけど、私達は進みが早かったからまだ着いていないだけかも知れない。
んー・・・でも、ハービーのエリアで撤退してそうな気がする。
ハービーが思ったよりも群れの数が多かったので、彼らでは対応出来ないのではないかなと思った。
今セーフティーエリアにいるのは、上級冒険者と思われるソロ冒険者が2人、そして中級冒険者のパーティーが1組といったところか。
これから人が増えることも考えると、彼らからは離れた場所にテントと結界を張った方が良さそうだ。
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