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二章 精霊姫 人間界に降りる

ソロ冒険者再び

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 森を歩いていると、誰かが戦闘している音が聞こえた。
 耳を澄ませて、気配を辿り、戦闘がどうなっているのか把握する。
 
 ソロ冒険者・・・セーフティーエリアで会った彼だ。
 私達までとはいかずとも、そこそこの数のハービーを相手にしている様だ。
 戦力的には問題無さそうだけど、数の多さで少し手こずっている感じはあるが、手助けをする程でもないが・・・怪我はしているかも知れないな。
 冒険者は、各自回復薬を持ち歩き自分で傷の手当てをしたりするものだけど、近くに居るし回復魔法を掛けて上げても良いかな。もしくは、塗り薬をつけて包帯で巻いてあげるだけでも菌が入らずに悪化もしない。しかも、私お手製の傷薬なだけあって、かすり傷なら1日もすれば、綺麗に治る。

 薬を塗ってあげて、様子を見て貰って、気に入ったのならば、次のセーフティーエリアで彼に薬を売るのも良いかも!
 うん、試して貰って売る!良い案だわ。

 こうやって口コミで、冒険者たちの間で話題に上がって、人気商品になったりする事もあるし、これからダンジョン内で怪我してそうな人を見かけたら、手当してあげて商品を試して貰うのが良いかな。
 セーフティーエリアで出店・・・う~ん、店っぽい用意は何もしてないから、ただ手渡しするだけになっちゃって、ちょっと味気無いかな。

 次回に向けて、少しお洒落な屋台みたいな出店を準備してマジックバッグに収納しておいて、ダンジョン内や森の中とかで出張出店を開くのも良いかも。
 冒険者たちなら興味津々で商品を見てくれそう。
 それに、私のお店は信用度も高いから安心して買って貰える。
 冒険者達にとってはどのお店で商品を買うかも見極めが大事になってくる。回復薬を買っておいたのに、使ってみたら効果が薄く、少ししか回復しなかったと言うこともないわけでは無い。
 そう言うのに、騙されないように、先輩冒険者から教えて貰ったり、自分で見聞きして判断しなければならない。

 そこで、商業ギルドからもお墨付きを貰って居て、辺境伯家が後見人をしている私のお店は信用度が高い。
 
 ダンジョンとかだと、好まれるのは・・・回復薬や傷薬。そして、やっぱり食料品かな。
 まさか、ダンジョン内で温かい食事が買えるなんて誰も思わないだろう。
 
 今朝、非常識な冒険者の男性に朝食を売ってくれと言われた時は、マナー違反だし何言ってるんだ?と怒りしか湧かなかったけど・・・。
 商売として提供するのは良いかも知れない。
 今朝の彼らは、商売をしているわけでもない私達普通の冒険者パーティーに食糧を売るように言ったので、あり得ないと拒絶したけれど。
 次のセーフティーエリアで彼らに会ったら、文句言われそうだけど、そんなの知ったことではない。

 私のマジックバッグ は、容量無制限な上に時間停止機能も付いているので、沢山食糧のストックがある。
 スープやパン、お肉はオークを狩ったから沢山あるし、果物も果実水もたーっぷりある。
 なので、それらを次のセーフティーエリアで売ったとしても何ら問題はない。それに、次のセーフティーエリアについたとしても、そんなに多くの冒険者は居ないと思う。
 次のセーフティーエリアは25階層の下にある為、中級~上級冒険者しか来られない。

 足を止め、ソロ冒険者の戦闘に耳を澄ませ、つらつらと考えているとロイ義兄様に声を掛けられる。

 「・・・リア?」
  
 ロイ義兄様は、私の顔を覗き込みながら、髪をするっと指に絡ませ、するすると梳いていく。

 「あの・・・あちらで誰かが戦闘中の様です」

 「・・・そうだね。少し距離があるからこちらには影響しないだろう」

 うーん、こちらに敵が流れてくるか心配しているわけでも、攻撃が流れて当たってしまうかもとか心配しているわけではないのだけれど。

 でも、これ言ったらロイ義兄様ご機嫌斜めになりそう。
 昨日セーフティーエリアで彼と話しただけで、朝まで寝かせて貰えない程だったもの・・・。
 そうすると、今夜も朝まで離して貰えないパターンになりそうだ・・・。

 それでも・・・っ。

 「敵と戦闘中なのは、ソロ冒険者の様ですね。ちょっと敵が多そうなので怪我とかしていないかなと思いまして」

 「リアは優しいね。でも、冒険者は怪我をするのは当たり前だし、自分でどうにかするよ」

 「あの、最近私傷薬を作ったんです。お店で売ろうかなと思ってまして。それで、丁度良いので彼に試して頂いて気に入ったら購入を勧めて見ようかなと思っているんです。彼・・・恐らく上級冒険者だと思うので、彼から傷薬の話が広まって売上に繋がるかななんて思ったりしたのですが・・・」

 「・・・・・・」

 ロイ義兄様は、冒険者は自分で怪我の手当てはするものだし、回復薬も持っているんだから、私が関わる必要はないと思っているんだと思うけれど、私が傷薬を売りたいと話した事で、どうしたものかと考えているようだった。

 本当は嫌だが、商売となれば話は別だが・・・しかし!と言ったところかな。

 「・・・はぁ。分かったよ。その代わり私がその傷薬を彼に塗ろう。リアは手を出さないで」

 「いえ、ロイ義兄様にそんなことさせるわけには」

 「リアが奴に触る方が私には耐えられないな。彼の首を落とされたくなければ、言うこと聞いてくれるよね?」

 ・・・あれ?ロイ義兄様ってヤンデレ属性あったっけ?
 そんなこと言われたら、断るわけにもいかないけど・・・辺境伯の嫡男が冒険者の手当てをするなんて・・・。

 「・・・ロイ義兄様包帯の巻き方とか分かりますか?」

 「それなら、野営訓練の時にやり方を学ぶし、実戦で手当てをしてきてるから問題ない」

 なるほど。騎士としてそういった事は一通り学ぶのね。
 それなら任せても大丈夫そうだ。

 「分かりました。それでは、お願いしても良いですか?」

 「あぁ、任せて。その代わり今夜は分かっているよね?」

 ロイ義兄様の妖艶な微笑みに、静かに頷く事しか出来なかった。
 
 
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