上 下
16 / 106
二章 精霊姫 人間界に降りる

辺境伯の家族と精霊姫の顔合わせ ※辺境伯視点

しおりを挟む
 マッサージを受けて、そのまま1時間ほど眠り、スッキリ。

 食事の前に、着替えないとね。
 ドレスにヒールは、窮屈だから嫌だな。

 来る時に着てた感じでも大丈夫かな?
 ワンピースにブーツ。
 流石にブーツは、ダメかな。

 ワンピースに、ヒールを履こう。
 ワンピースでも、膝より下まで長さがあるから、許容範囲じゃない?

 クローゼットには、ドレスが沢山入ってるけど、一人で着れる感じではないし、コルセットなんてしてたら、苦しくて食事も喉を通りそうもない。
 これは、仕方ない事。うん。

 出来るだけ上品なワンピースを選んで...。

 ◇◇◇   

 [辺境伯視点] 


 家族が全員席に着いてから、スティーリアを呼びに行かせた。

 「お父様、一つ席が用意されてますが、お客様がいらっしゃるのですか?」

 ミリアは、「お客様がいらっしゃるなんて聞いていなかったけど・・・」と言いながら、小首を傾げる。

 「実は、今日皆に紹介したい人がいる。遠縁の者で、魔法に長けた子だ。彼女を支援するにあたって、養子に迎える事になった。仲良くして欲しい」

 「・・・養子?ただ金銭的支援をするだけでは無く、養子に迎えるのですか?」

 むむむっと、眉間に皺が寄っていく...貴族の令嬢として、それはダメだ。
 これは、良からぬ勘ぐりをしているな。

 「我が家の養子に入れる事で、他から強引な勧誘など受けられない様にする為でもある。ミリアが変な勘違いをするといけないので、はっきり言っておくが、私の実の子では無い。それだけは、勘違いしない様に」

 「まぁ、私は別にそんなことは・・・でも、お姉様が出来るのですね。もういらっしゃるのですよね?」

 「あぁ、今呼びに行かせてるので、そろそろ来る頃だろう」

 コンコンコンッ

 「スティーリア様をお連れしました」

 「噂をすればだ。入れ」

 風がふわりを舞い、彼女の白髪がサラリと流れる。
 ドレスではない服は、白を基調として、淡い緑色の糸で、繊細な刺繍が施されており、美しい。
 チラリと、息子に目を向けると・・・はぁ、そうなるだろう。彼女を見る瞳に熱が篭っている。
 娘は・・・瞳をキラキラと輝かせて、頬は紅潮しており、今にも抱きつきそうだ。

 妻は・・・一瞬惚けた後、此方を見て、一つ頷いた。恐らく精霊姫様だと気付いたのだろう。

 「皆、スティーリアだ。今日から、我が家の一員となる。宜しく頼む」
 
 「スティーリアと申します。礼儀作法など至らぬ点が多々あると思いますが、仲良くしてい頂けたら嬉しいです」

 ふわりと微笑まれ、挨拶したスティーリア。

 妻から挨拶をと思ったところで・・・

 ロイドがサッと前に出て、スティーリアの手を取り、手の甲に口付けを送った。
 
 「私は、辺境伯家嫡男、ロイドと申します。家族として歓迎します。スティーリア・・・いや、リアと呼んでも?」

 余りの事に、スティーリアが驚いているではないか。
 思わず、心の中でため息をついた。

 「・・・えぇ、リアで大丈夫です。えっと、ロイ義兄様とお呼びしても宜しいですか?」
 
 「リアに義兄様と呼ばれるのも良いね」

 「お兄様ばかり狡いです。私は、ミリアリアと申します。ミリアと呼んでください。リアお姉様の妹になりますわ」

 「まぁ、可愛い妹が出来て嬉しい。これから宜しくね」

 「私もこんな素敵なお姉様ができて嬉しいです!一緒にドレス選んだり、お茶会したりしましょう。今から楽しみです」

 「こらこら、お前たち、少し落ち着きなさい。スティーリア、此方が私の妻で、マリアベルだ」

 「マリアベルと申します。今日から家族として歓迎します。分からないことなどあったら、気軽に声を掛けてね。可愛い娘が2人になって嬉しいわ。刺繍などは私でも教えてあげられるので、良かったら、ミリアと一緒にやりましょう」

 「お義母様。ありがとうございます。3人で刺繍出来るの楽しみです」

 「さぁ、食事にしよう」

 ◇◇◇

 食事が終わり・・・

 「ロイド、ついてきなさい」

 「・・・はい」

 はぁ。何を言われるか分かってると言うところか。
 全く。

 「ロイド、先程のはなんだ。妹に向ける挨拶には見えなかったが」

 「申し訳ありません。はじめて精霊姫様にお会いして、気持ちが高揚してしまいました」

 「それだけには見えなかった。スティーリアを見つめる瞳に熱が篭っている様に見えた」

 「っ・・・それは・・・」

 俯き、手を握りしめている。自分でも困惑していると言うとこか。

 「想うのは自由だ。だが、それを表に出すな。貴族らしく仮面を被れ。瞳に熱を込めるな。婚約者に気付かれるぞ。今まで通り、良好な関係を築け」

 「はい。分かっています。アリスティナとの関係を壊すつもりはありません。愛している訳ではないですが、今までの婚約期間で築いた情はありますし、貴族の婚約がどう言うものかも理解しています。これからリアとの接し方に気を付けます」

 「はぁ。分かってるなら良い。下がりなさい」

 パタン

 扉が閉まり、コンコンコンッ

 「マリアです」
 
 息子と入れ替わりで、妻が入ってくる。
 精霊姫様の事と、ロイドの事が気になると言ったところか。

 「入れ」

 「・・・ロイド、どうでしたか?」
 
 まずは、ロイドの事か。

 「はぁー。所謂一目惚れだ。ただ、自分が貴族であり、次期当主という自覚もある。様子見だが、問題無いだろう」

 「そうですか。それなら良かったです。婚約者を蔑ろにする様になったら、どうしたら良いのかと・・・」

 「ロイドも愚か者ではない。婚約者の扱いも心得ている」

 「それでは、スティーリアの事ですが・・・精霊姫様ですか?」

 「あぁ、そうだ。本日、鳥籠にいらっしゃった。まだ誕生したばかりで、此方の世界の事は何も分からないと言う事だ。家庭教師を手配して、学ぶ事になっている」

 「では、刺繍とマナーレッスンは私に任せて頂けますか?ミリアも一緒に刺繍やお茶会をしながら、学ぶのが良いと思います」

 「あぁ、任せた。後は、ドレスなどの手配も頼めるか?そういうのは、女性同士で選ぶのが良いだろう?」

 「そうですわね。ミリアも交えて、選びたいと思います。社交は如何します?」

 「社交は、本人が望まなければ、しなくて良い。貴族として、縛るつもりは無いから、スティーリアの好きな様にさせて欲しい」

 「分かりましたわ。それでは、私は先に休みますね。あなたも、余り遅くならない様に休んで下さいね」

 「分かった。お休み」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました

Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。 実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。 何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・ 何故か神獣に転生していた! 始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。 更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。 人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m なるべく返信できるように努力します。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

処理中です...