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二章 精霊姫 人間界に降りる

リッドラン辺境伯領へ

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 現在馬車の中。

 リッドラン辺境伯から、すぐ返信が届き、是非ともお話が聞きたいとの事だったので、準備が整い次第 すぐ向かう事になった。

 因みに、手紙は魔道具を使ってやり取りしている。

 この魔道具は、高値である為、貴族と平民一部の裕福層(商家)しか使う事は出来ない。
 民たちが、手紙をやり取りする場合、領内で手紙を扱う部署に纏められて、そこから配送される為、届くのに日数が掛かる。

 お義父様からの手紙は、魔道具ですぐ届き、返事も即日届いたが、色々な準備が整うのに、一月程掛かり、リッドラン辺境伯領へ向かったのは、手紙をやり取りしてから、1ヶ月半経ってからだった。

 リッドラン辺境伯領に設置する為の物などを準備している間に、お義姉様の妊娠が発覚した。
 新婚早々の妊娠に、マグニート家はお祝い一色に染まった。

 ロイ義兄様は、心からホッとして、顔を緩ませ、お義姉様に「ありがとう」とお礼を言っていた。

 あの時の、私とロイ義兄様の計画が実を結んだ。
 一度試しただけで、その後、お義姉様とロイ義兄様は、閨を共にしていなかったので、ロイ義兄様も半信半疑だったのだろう。

 心の底から喜んでいるのが分かる。
 初夜で、一度閨を共にしただけ。2回目は、閨を共にする事無く、私の提案で種付けしただけ。
 3人は子供が欲しいと言っていたので、後2回アレを行う事になる。

 この事実を知っているのは、私とロイ義兄様だけ。
 ロイ義兄様は、お義姉様と子供達を大事にし、理想的な家族を築くだろう。
 ただ、その中で、お義姉様の不満が少しずつ膨らんで行くのが予想出来る。
 こんなに、大切にされているのに、可愛い子供達がいるのに、満たされない。
 何故、夫は私を抱いてくれないのだろう?
 真面目で、誠実で、家族想い。私だけが我慢すれば、良いだけ。

 そんな風にこの先思う事もあると思う。
 でも、こればかりは、ロイ義兄様に強要は出来ない。
 
 貴族の婚姻なんて、政略結婚で、冷え切った関係になる事が多く、仮面夫婦が多い。
 ロイ義兄様の様に、恋愛結婚でも無いのに、気を配り、優しいのも珍しい。
 側から見れば、お義姉様は、周りから羨まれる状況で、ロイ義兄様は理想的な夫と言えよう。
 ただ、一点を除けば。

 そのただ一点を我慢出来れば、幸せでいられる。
 
 ◇◇◇

 今回は、お義姉様の実家のリッドラン辺境伯領へ行くという事で、ロイ義兄様とお義姉様と私の3人と侍従で行く予定だったが、お義姉様が妊娠した事で、急遽お義姉様は留守となり、私とロイ義兄様と専属執事と私の侍女の4人で行く事になった。

 外には、護衛が馬に乗って馬車を囲って走ってる。流石に、マグニート辺境伯の家紋が入った馬車を襲う愚か者は居ないと信じたい。

 ロイ義兄様が、ソファーに座り、お茶を一口飲んで一言。

 「まさか、こんなに寛いで移動出来るなんて思わなかったな。」

 「この日の為に、馬車を新調致しました。ロイ義兄様に気に入って貰えて良かったです。リッドラン辺境伯家にも売り込もうかなと思ってます。」

 「それは、良いね。欲しがると思うよ。」

 良し!掴み上々。
 後は、来る前に、備蓄用に大きな倉庫を3つ建てて、時間停止機能付きの保存ケースも大量に作って、備蓄出来る体制は整えてきた。
 これと全く同じものを作って貰って、マジックバッグに入れて、持ってきたので、リッドラン辺境伯家の敷地内に着いたら、さっさと倉庫3つ置かせて貰おう。

 やっぱり辺境伯領というだけあって、王都からは遠い。
 災害などあった場合の、支援は直ぐには届かない。自領で備蓄などをしっかりしておかなければならない。
 今までは、備蓄するにしても、腐ってしまうので、大量に備蓄する事は出来なかった。
 そこで、私が時間停止機能付きの保存ケースを作る事で、大量に備蓄が出来る様になった。

 特にリッドラン辺境伯領は、北に位置し、冬は寒く雪が降る為、備蓄は日頃から大切になってくる。
 んー、ビニールハウスとか作る事を相談してみようかな。
 後、レモンを植える場所作って貰って、育てるのも良いかも。養蜂も準備して、蜂蜜収穫し、レモンも収穫出来れば、蜂蜜レモンが作れる。
 マグニート辺境伯領の果物を、リッドラン辺境伯に売って、リッドラン辺境伯領のレモンを、マグニート辺境伯が買えば丁度良い感じかな。
 後、寒さに強い野菜とか勧めよう。

 鳥籠の設置については、既に領主同士で話し合いが済み、建てて良いとの事。
 因みに、リッドラン辺境伯領からの帰りは、馬車を使わず、鳥籠の中から転移してマグニート辺境伯領へ帰る事になっている。

 因みに、この鳥籠に入れるのは、精霊姫の加護を持っている人に限られる。
 今のところ、マグニート家の4人と執事長と侍女長だけだ。
 鳥籠にスイーツや新鮮な果物を持っていくのは、執事長と侍女長の役目になっている。

 今回、リッドラン辺境伯家の人達に加護を与えると、私の正体がバレちゃうので、加護付きのバングルを用意した。そのバングルをつけてる人しか鳥籠には入れないと説明する予定だ。

 因みに、護衛達に加護は与えていないので、帰る時に一時的にバングルを着けさせて、鳥籠から転移する予定になっている。
 帰宅したら、バングルは回収する。

 リッドラン辺境伯家に渡すバングルは、誰かに貸されると困るので、一度着けると取り外し不可になっている。

 お互いに国境を守る家なので、信頼出来る使用人しか使って居ない。
 なので、リッドラン辺境伯領の執事長と侍女長がどんな人かは知らないが、そこはリッドラン辺境伯の人を見る目を信じたいと思う。

 因みに、鳥籠内に、転送ボックスを作ったので、ボックスに手紙を入れると、当主の執務室に手紙が転送される様になった。

 鳥籠は、精霊達と私が過ごす為に作られるものなので、内装は、精霊姫である私の好みにするのは、当然として、外装は、リッドラン辺境伯家に合う感じにするのと、夫人の好みも確認しよう。

 今のところ、提案用のデザインは準備してある。

 鳥籠の周りは、ピンクと紫のビオラで囲んで、アプローチは、レンガの3色使いにしようかなと思っている。
 夫人はピンクの髪で、辺境伯爵は、菫色。夫人はふわふわとしていて可愛いものが好きだとか。
 剣術などは出来ず、どちらかといえば、深窓の令嬢で、庭園でお茶をするのが好きだとか。
 雪が降り積るリッドラン辺境伯では、花を楽しめる時期が限られる。さて、どうしたものか。

 鳥籠周辺とアプローチだけ結界張って、温度調整しようと思ってたけど、結界の範囲広げて、冬でも庭園の一部で、ティータイムが楽しめる様にしても良いかもしれない。
 庭園全部にしないのは、結界に出入り出来る人間が制限されちゃうので、庭園で友人を呼んでお茶会が出来なくなってしまう為。あくまでも、夫人一人か夫婦で楽しむ程度の範囲しか結界を張らない。
 
 鳥籠の上は、精霊の粉を練り込んだガラスでリボンの飾りをつけよう。
 陽の光を浴びて、キラキラ光って、美しいと思う。

 鳥籠の中は、空間魔法を使い、広い空間にして、お手製の腐葉土で土を耕して、中央に大きな精霊樹を植えて、精霊達の止まり木になる様にし、その周りに、幾つかテーブルを配置し、果物やデザートなどを置いて貰う。

 精霊樹は、中央にピーチ、周りにオレンジ、アップル、ライチ、ユズ、レモンを植えて、収穫時期に沢山収穫して、精霊達用に保管しておこう。
 因みに、鳥籠内で収穫したものは、鳥籠の外には出せない仕様になっている。だって、精霊達の為に植えてるからね!
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