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四章 結実
---奏視点11---
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合否結果発表の日、すぐに確認をすると『合格』の文字がすぐ飛び込んでくる。
受かるだろうと予想をしていたが、この文字を見た途端に安堵する。
なんだかんだ、少し心配だったのは否めないよな。
きっと今頃茉莉絵も確認が済んでいるはずと思い、すぐにメッセージを送った。
大丈夫。きっと受かってるはずだ。俺は、そう信じてる。
すると、すぐに受かったと返事が来て、ホッとした。
これで、一緒の高校に通えるな。お互いに努力が報われたことに力が抜け、ソファーに寝そべる。
「受験が終わったからってだらけすぎじゃない?」
「この一年頑張ったんだからいいだろ」
「まぁ、それもそうね。お疲れ様でした。合格おめでとう」
「母さんも色々サポートしてくれて、ありがとな」
「母親ですからね。当然よ」
夏期講習と冬季講習に通わせてくれた親には感謝だ。受講料結構高かったからな……
これからは少しずつ親孝行もしていかないとな。
◆ ◆ ◆
「え? 付き合って記念すべき初デートなのに、獅子丸も連れて行くの?」
「茉莉絵が、獅子丸とクッキーを連れてドッグカフェに行きたいって言ってたからさ」
「そう、茉莉絵ちゃんがそれでいいならいいけど。二人じゃなくていいのかなって思ったから」
「俺もちょっと思ったけど、なんとなくそうした理由も想像ができるんだよな」
多分だけど、獅子丸とクッキーが縁で仲良くなれたからとか思ってそうな気がするんだよな。
俺たち考え方が似てるから、なんとなく想像つくんだよな。
「なーに?」
「んー……やめとく」
「もったいぶっちゃって。でも、そういうことなら獅子丸もオシャレしましょうねー」
「え?」
そういうと、獅子丸を抱っこして家を出て行ってしまった。
まさか、獅子丸に服でも着せるつもりなんじゃ……
ゴテゴテした格好にならないといいけどなと思っていると、獅子丸が新しい首輪をつけて帰ってきた。
ボルドーの首輪が黒い毛と良く合っていて、一気にオシャレな子犬になった。
「少し心配だったけど、良いな。獅子丸、似合ってるぞー」
わちゃわちゃと体を撫でてやると、やめろよーと言わんばかりに体を捩らせていた。
俺はシンプルな服が多いから、黒いコートの袖口のところがチェック柄になっているものを買って貰っていた。
母さんが言うには、「良いアクセントになってオシャレに見えるわよ」とのことだった。
オシャレには疎いけど、茉莉絵の隣に立っても恥ずかしくないようにしないとな。
デート当日は、だいぶ冷え込んでいたが、昼頃になると日も高くなってきて、寒さが少し和らいでくる。
今日はいつもの公園とは反対方向の店にいくため、茉莉絵の家まで迎えに行く。
玄関先にある花壇に悪さをしたら大変だとすぐに獅子丸を抱き上げて、インターフォンを鳴らす。
すると、茉莉絵のすぐ後ろにお母さんと思われる人が立っていた。
いつもお世話になっていますと挨拶をしただけで彼女に連れ出されたため、本当に一瞬のことだったが、言葉を交わすことになるとは思っていなかったから驚いた。
流石に、彼女の親と会うのは緊張するな。
茉莉絵はデートだからか、寒いのにスカートを履いていて心配になったけど、似合ってるし可愛い。
女の子は大変だなと思いつつ炬燵席で良かったと思った。これなら茉莉絵も脚が寒くなさそうだよな。
フレンチトーストが配膳されると、店員さんが写真を撮りましょうかと声を掛けてくれた。
撮りたそうにこちらを見た彼女に同意するように、店員さんにスマホを渡し写真を撮って貰った。
返してもらったスマホの画面を見れば、獅子丸とクッキーが仲良くもこもこのハウスで寄り添っていて、満面の笑みを浮かべた茉莉絵が写っていた。
控えめにいって最高の写真だな。待ち受けにするか。いや、流石にそれは……まぁ……するか。
別に彼女と愛犬たちを待ち受けにするくらい……まぁ……だいぶ恥ずかしいからロック画面にはやめてホーム画面にしておこう。
初デートの記念になったなと、店員さんにお礼を言う。
店を後にして、隣の公園に行くと多くの犬たちが元気に走り回って遊んでいて、ドッグランに来たのかと思ったほどだった。
いつも遊んでる公園の何倍もの広さがあり、遊具もない広々とした空間なだけあって、サッカーボールを蹴ったり、キャッチボールしたりしている親子もいた。
ふと、今日は、獅子丸たちを連れていたため、手を繋いでなかったなと思った。
今なら両手が空いてるし……一応デートだし、いいよな?
そう思い、そっと手を握ると驚いたようにこちらを振り返る。
すると、「うん……奏くん。大好きだよ」と彼女が言った。
不意打ちのように言われ、思わず照れて吃ってしまった。
素直に言葉にしてくれたのに、俺も返さないのは男らしくないよな。
と思いつつも照れてしまい、「いや、まぁ……俺も好きだけど」となんとも格好つかない言い方になってしまった。
だけど、茉莉絵はそれでも嬉しそうに微笑んだので、俺たちはこれでいいのかもしれないと思った。
大変だった受験勉強も茉莉絵がいたから頑張れた。
ありがとうな。大人になっても一緒にいられるように、俺頑張るから、これからもよろしくな。
end.
受かるだろうと予想をしていたが、この文字を見た途端に安堵する。
なんだかんだ、少し心配だったのは否めないよな。
きっと今頃茉莉絵も確認が済んでいるはずと思い、すぐにメッセージを送った。
大丈夫。きっと受かってるはずだ。俺は、そう信じてる。
すると、すぐに受かったと返事が来て、ホッとした。
これで、一緒の高校に通えるな。お互いに努力が報われたことに力が抜け、ソファーに寝そべる。
「受験が終わったからってだらけすぎじゃない?」
「この一年頑張ったんだからいいだろ」
「まぁ、それもそうね。お疲れ様でした。合格おめでとう」
「母さんも色々サポートしてくれて、ありがとな」
「母親ですからね。当然よ」
夏期講習と冬季講習に通わせてくれた親には感謝だ。受講料結構高かったからな……
これからは少しずつ親孝行もしていかないとな。
◆ ◆ ◆
「え? 付き合って記念すべき初デートなのに、獅子丸も連れて行くの?」
「茉莉絵が、獅子丸とクッキーを連れてドッグカフェに行きたいって言ってたからさ」
「そう、茉莉絵ちゃんがそれでいいならいいけど。二人じゃなくていいのかなって思ったから」
「俺もちょっと思ったけど、なんとなくそうした理由も想像ができるんだよな」
多分だけど、獅子丸とクッキーが縁で仲良くなれたからとか思ってそうな気がするんだよな。
俺たち考え方が似てるから、なんとなく想像つくんだよな。
「なーに?」
「んー……やめとく」
「もったいぶっちゃって。でも、そういうことなら獅子丸もオシャレしましょうねー」
「え?」
そういうと、獅子丸を抱っこして家を出て行ってしまった。
まさか、獅子丸に服でも着せるつもりなんじゃ……
ゴテゴテした格好にならないといいけどなと思っていると、獅子丸が新しい首輪をつけて帰ってきた。
ボルドーの首輪が黒い毛と良く合っていて、一気にオシャレな子犬になった。
「少し心配だったけど、良いな。獅子丸、似合ってるぞー」
わちゃわちゃと体を撫でてやると、やめろよーと言わんばかりに体を捩らせていた。
俺はシンプルな服が多いから、黒いコートの袖口のところがチェック柄になっているものを買って貰っていた。
母さんが言うには、「良いアクセントになってオシャレに見えるわよ」とのことだった。
オシャレには疎いけど、茉莉絵の隣に立っても恥ずかしくないようにしないとな。
デート当日は、だいぶ冷え込んでいたが、昼頃になると日も高くなってきて、寒さが少し和らいでくる。
今日はいつもの公園とは反対方向の店にいくため、茉莉絵の家まで迎えに行く。
玄関先にある花壇に悪さをしたら大変だとすぐに獅子丸を抱き上げて、インターフォンを鳴らす。
すると、茉莉絵のすぐ後ろにお母さんと思われる人が立っていた。
いつもお世話になっていますと挨拶をしただけで彼女に連れ出されたため、本当に一瞬のことだったが、言葉を交わすことになるとは思っていなかったから驚いた。
流石に、彼女の親と会うのは緊張するな。
茉莉絵はデートだからか、寒いのにスカートを履いていて心配になったけど、似合ってるし可愛い。
女の子は大変だなと思いつつ炬燵席で良かったと思った。これなら茉莉絵も脚が寒くなさそうだよな。
フレンチトーストが配膳されると、店員さんが写真を撮りましょうかと声を掛けてくれた。
撮りたそうにこちらを見た彼女に同意するように、店員さんにスマホを渡し写真を撮って貰った。
返してもらったスマホの画面を見れば、獅子丸とクッキーが仲良くもこもこのハウスで寄り添っていて、満面の笑みを浮かべた茉莉絵が写っていた。
控えめにいって最高の写真だな。待ち受けにするか。いや、流石にそれは……まぁ……するか。
別に彼女と愛犬たちを待ち受けにするくらい……まぁ……だいぶ恥ずかしいからロック画面にはやめてホーム画面にしておこう。
初デートの記念になったなと、店員さんにお礼を言う。
店を後にして、隣の公園に行くと多くの犬たちが元気に走り回って遊んでいて、ドッグランに来たのかと思ったほどだった。
いつも遊んでる公園の何倍もの広さがあり、遊具もない広々とした空間なだけあって、サッカーボールを蹴ったり、キャッチボールしたりしている親子もいた。
ふと、今日は、獅子丸たちを連れていたため、手を繋いでなかったなと思った。
今なら両手が空いてるし……一応デートだし、いいよな?
そう思い、そっと手を握ると驚いたようにこちらを振り返る。
すると、「うん……奏くん。大好きだよ」と彼女が言った。
不意打ちのように言われ、思わず照れて吃ってしまった。
素直に言葉にしてくれたのに、俺も返さないのは男らしくないよな。
と思いつつも照れてしまい、「いや、まぁ……俺も好きだけど」となんとも格好つかない言い方になってしまった。
だけど、茉莉絵はそれでも嬉しそうに微笑んだので、俺たちはこれでいいのかもしれないと思った。
大変だった受験勉強も茉莉絵がいたから頑張れた。
ありがとうな。大人になっても一緒にいられるように、俺頑張るから、これからもよろしくな。
end.
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